高校演劇で「耳が聞こえない人」を描くには?聴覚障害の当事者に取材する方法と失礼にならない聞き方

耳の病気

演劇で、ろう者・難聴者・中途失聴者など「きこえない・きこえにくい人」を描こうとするとき、資料だけで脚本を作るより、当事者の経験や考え方に触れることには大きな意味があります。一方で、聴覚障害のある人の暮らし方やコミュニケーション方法、障害に対する捉え方は一人ひとり異なるため、一人の体験をそのまま「耳が聞こえない人全体の姿」として描かないことがとても重要です。

特に高校生が演劇制作のために取材相手を探す場合、SNSなどで知らない個人へ直接「会ってください」と呼びかけるより、学校の顧問や先生を通じて、地域の聴覚障害者団体、聴覚障害者情報提供施設、ろう学校・特別支援学校、手話関係団体などへ正式に相談する方法が安全で、相手側にとっても安心です。

全日本ろうあ連盟は全国47都道府県に加盟団体を持つ、ろう者の全国的な当事者団体です。各地域の加盟団体も公開されているため、地元で当事者の話を聞く機会を探す際の入口になります。[参照:全日本ろうあ連盟] [参照:全日本ろうあ連盟 加盟団体一覧]

  1. まず知っておきたいのは「聴覚障害者」と一括りにはできないこと
  2. 「聞こえない=不幸」という物語にしない
  3. 当事者に話を聞くなら個人募集より地域の団体へ相談する
  4. 聴覚障害者情報提供施設も相談先になる
  5. ろう学校・聴覚特別支援学校へ相談する方法もある
  6. 対面だけでなくメールや文書回答でも十分価値がある
  7. 「どうやって聞けばいいですか?」を本人に確認してよい
  8. 取材依頼では「なぜこの作品を作りたいのか」を説明する
  9. 質問は「障害で一番つらかったこと」から始めない
  10. 取材で聞きやすい質問例
  11. 一人だけでなく複数の当事者の話を聞くと作品が深くなる
  12. 手話を使う役なら「手話を少し覚えればOK」ではない
  13. 日本手話と日本語対応手話を同じものと考えない
  14. 「読唇術ですべて分かる」という描写には注意
  15. 補聴器を付ければ普通に聞こえるという描写にも注意
  16. 音がないことより「情報が届かないこと」を考える
  17. 当事者の経験をそのまま脚本に使うときは許可を取る
  18. 録音・録画は必ず許可を取る
  19. 取材への謝礼や交通費も学校と相談する
  20. 高校生だけで知らない大人と直接会わない
  21. SNSで募集する場合も学校の公式ルートを使う
  22. 当事者へ依頼するときの文面例
  23. 取材前に自分たちでも基本的なことを調べておく
  24. 当事者監修を作品完成後にもお願いできると理想的
  25. 演じる俳優だけでなく舞台そのものの情報保障も考える
  26. 「当事者を演じてもよいのか」と悩んだときの考え方
  27. 「Nothing about us, without us」という考え方
  28. まとめ:当事者の話を聞くなら学校を通して地域の聴覚障害者団体へ相談する

まず知っておきたいのは「聴覚障害者」と一括りにはできないこと

「耳が聞こえない人」という言葉から、手話を使う人をイメージすることがあります。しかし実際には、聴覚障害のある人のコミュニケーション方法はさまざまです。

日本手話を主な言語として生活するろう者もいれば、音声日本語を中心に使う難聴者や中途失聴者もいます。補聴器や人工内耳を使う人、筆談を使う人、口形を読み取る人、文字起こしアプリを利用する人などもいます。また複数の方法を場面によって使い分ける人もいます。

全日本ろうあ連盟も、きこえない・きこえにくい人にとって手話や筆談など視覚的なコミュニケーション手段が重要であることを説明しています。[参照:全日本ろうあ連盟 手話マーク・筆談マークについて]

「聞こえない=不幸」という物語にしない

聴覚障害を題材にした作品で陥りやすいのが、「聞こえないことそのものを悲劇として描く」構成です。しかし、当事者すべてが自分の人生を不幸だと捉えているわけではありません。

全日本ろうあ連盟も、手話を使う聴覚障害者について、生活上の不便があっても「決して不幸な日々を送っているわけではない」とする考え方を示しています。また、ろう者には手話言語やろう文化を通じたアイデンティティを持つ人もいます。[参照:全日本ろうあ連盟 人工内耳に対する見解]

演劇にするなら「耳が聞こえなくてかわいそう」という一本線の話より、情報が届かない場面、周囲とのコミュニケーション、家族や友人との関係、本人の考え方などを描くほうが、人物として奥行きが出やすくなります。

当事者に話を聞くなら個人募集より地域の団体へ相談する

高校生が取材相手を探す場合には、インターネット上で知らない人と直接会う約束をするより、学校を通じた正式な依頼がおすすめです。

まず顧問の先生へ企画内容を伝え、「聴覚障害のある方に取材したいので、学校名義で地域団体へ問い合わせたい」と相談します。そのうえで都道府県の聴覚障害者協会・ろうあ協会などへ連絡すると、講演活動や交流活動をしている当事者を紹介してもらえる可能性があります。

全日本ろうあ連盟の加盟団体一覧には、北海道から沖縄まで各都道府県の聴覚障害者団体が掲載されています。住所、電話、FAXなども確認できるため、所在地に合わせて問い合わせ先を探せます。[参照:全日本ろうあ連盟 加盟団体一覧]

聴覚障害者情報提供施設も相談先になる

地域によっては「聴覚障害者情報提供施設」「聴覚障害者情報センター」などの施設があります。こうした施設では、手話通訳、字幕・要約筆記、情報提供、相談、交流事業などが行われています。

地域の聴覚障害者団体と同じ施設内に事務局が置かれていることもあり、学校の学習・文化活動として当事者との交流を希望していることを相談できる場合があります。

問い合わせる際には突然「誰か紹介してください」とだけ伝えるのではなく、学校名、演劇部であること、大会作品の調査であること、取材の目的、希望する方法、所要時間、顧問の連絡先などを整理して伝えると相手側も判断しやすくなります。

ろう学校・聴覚特別支援学校へ相談する方法もある

地域のろう学校や聴覚障害特別支援学校へ、学校同士の教育活動として相談する方法も考えられます。ただし在校生へ直接取材を申し込むのではなく、自校の先生から学校へ正式に問い合わせる形が基本です。

学校によっては交流学習や文化活動を行っていることがあります。ただし、演劇部の取材依頼を受けられるかどうかは各校の判断になります。

相手が同年代だから話しやすい可能性はありますが、障害について話すことを本人が望んでいるとは限りません。「高校生なら頼みやすい」と考えず、本人の同意を最優先にします。

対面だけでなくメールや文書回答でも十分価値がある

当事者取材というと直接会ってインタビューするイメージがありますが、必ずしも対面である必要はありません。

メール、チャット、オンライン会議、質問票への文書回答などのほうが、コミュニケーションしやすい人もいます。特に日本語の文章でのやり取りを希望する人なら、文面でじっくり回答できるメリットがあります。

逆に日本手話を第一言語とする人の場合、日本語の長文による質問より手話での対話のほうが自然なケースもあります。その場合は手話通訳など情報保障について団体と相談します。

「どうやって聞けばいいですか?」を本人に確認してよい

聴覚障害者へインタビューするときに、「大きな声で話せばいいのか」「筆談すればいいのか」と聞こえる側だけで決める必要はありません。

最初に「どの方法が一番話しやすいですか」と本人へ確認するのが最も確実です。

例えば「手話通訳を介したほうがよい」「口元が見えるように話してほしい」「スマホの文字入力がいい」「普通に音声で大丈夫」など、人によって希望は異なります。

取材依頼では「なぜこの作品を作りたいのか」を説明する

当事者からすると、突然「耳が聞こえない経験を教えてください」と頼まれても、何に使われるのか分からなければ不安になります。

依頼するときには「高校演劇の大会作品を制作しており、聴覚障害のある人物を想像だけで描かず、実際の経験や考え方を学びたい」と目的を具体的に説明するとよいでしょう。

作品のあらすじがある程度決まっているなら、それも伝えます。完成した脚本を公開するのか、大会だけで上演するのか、映像として公開する可能性があるのかも説明すると、相手が協力するか判断しやすくなります。

質問は「障害で一番つらかったこと」から始めない

インタビューでは、つい「耳が聞こえなくて一番困ったことは何ですか」「いじめられましたか」といった質問から入りたくなります。しかし、最初からつらい体験だけを求めると、相手を「作品の悲劇を作るための材料」として扱うことになりかねません。

まず日常生活やコミュニケーションについて幅広く聞き、本人が話したい範囲で経験を教えてもらうほうがよいでしょう。

つらい経験について質問する場合も、「答えたくない質問は飛ばしてください」と事前に伝えることが重要です。

取材で聞きやすい質問例

具体的には、日常の中でどのような場面が作品作りの参考になるかを尋ねると、固定観念に偏りにくくなります。

テーマ 質問例
コミュニケーション 普段はどんな方法で会話することが多いですか?
学校生活 授業や学校行事で困ったこと、逆にうれしかった工夫はありますか?
友人関係 聞こえる友人と話すとき、どんな工夫をしていますか?
情報 災害放送や駅のアナウンスなどで困った経験はありますか?
文化 手話やろう文化について、聞こえる人に知ってほしいことはありますか?
誤解 聞こえる人からよくされる誤解はありますか?
表現 ドラマや映画で聴覚障害者を見たとき、不自然だと感じる表現はありますか?
作品への希望 高校生が演劇で描くなら、どんなことに気をつけてほしいですか?

こうした質問でも、全員に同じ答えがあるわけではありません。回答はあくまで「その人の経験」として受け止めます。

一人だけでなく複数の当事者の話を聞くと作品が深くなる

可能であれば一人だけではなく、複数の立場の人へ話を聞くとよいでしょう。

例えば、生まれつき聞こえない人、中途失聴した人、補聴器を使う難聴者、日本手話を第一言語とする人では経験がかなり異なる可能性があります。

一人へ取材した内容だけで「聴覚障害者はこう思っている」と書くのではなく、「この人物はこういう環境で育ち、こう考えている」という一人の登場人物として作ると、ステレオタイプを避けやすくなります。

手話を使う役なら「手話を少し覚えればOK」ではない

登場人物が日常的に手話を使う設定の場合、セリフだけ日本語から手話へ置き換えれば自然な演技になるとは限りません。

日本手話には日本語とは異なる言語としての特徴があります。また手話では手の形だけでなく、顔の表情や視線、身体の動きなども重要です。

可能であれば、手話を使う場面について当事者や手話指導者から監修・指導を受けるほうが作品の質は高くなります。

日本手話と日本語対応手話を同じものと考えない

演劇制作で手話を扱う場合には、「手話」と呼ばれるものにも違いがあることを知っておくと役立ちます。

日本手話は独自の文法体系を持つ自然言語です。一方、日本語の語順などに対応させながら手話単語を用いる表現もあります。

登場人物がどのような環境で育ち、普段誰とどの言語でコミュニケーションしている人物なのかによって、表現方法も変わります。その設定まで考えるとキャラクターに説得力が出てきます。

「読唇術ですべて分かる」という描写には注意

映像作品などでは、耳の聞こえない人物が相手の口を見るだけで会話をほぼ完全に理解する描写があります。しかし口形だけでは区別しにくい音も多く、誰でも会話内容を完全に読み取れるわけではありません。

本人の聴力、発話経験、話者、会話の文脈、照明、マスクの有無などによって理解しやすさは変わります。

演劇で読話を登場させる場合も、「魔法のように何でも分かる能力」として扱わないほうが自然です。

補聴器を付ければ普通に聞こえるという描写にも注意

補聴器は音を聞き取りやすくする重要な機器ですが、装着すれば聞こえる人と全く同じ聞こえ方になるとは限りません。

騒がしい場所、複数人が同時に話している場所、遠くからの声などは聞き取りづらいことがあります。また聴力や機器の種類によって効果は異なります。

人工内耳についても効果には個人差があります。全日本ろうあ連盟も、人工内耳の効果には大きな個人差があることや、手話言語を使用するコミュニティが存在することを説明しています。[参照:全日本ろうあ連盟]

音がないことより「情報が届かないこと」を考える

聞こえる側から聴覚障害を想像すると「音が聞こえない世界」というところに注目しやすくなります。しかし生活上の問題として大きいのは、必要な情報が音声だけで提供されることです。

例えば駅で突然流れる運転見合わせのアナウンス、学校で先生が黒板を向きながら話す場面、複数人が同時に会話する場面、名前を後ろから呼ばれる場面などがあります。

全日本ろうあ連盟は、情報アクセスとコミュニケーションの保障を長年重要な課題として取り組んでいます。[参照:全日本ろうあ連盟 情報・コミュニケーションに関する提言]

当事者の経験をそのまま脚本に使うときは許可を取る

取材相手が話した具体的なエピソードを脚本へ使う場合には、「この話を作品に使ってもよいですか」と確認しましょう。

特に学校名、職場、家族関係、いじめ、医療、恋愛など本人を特定できる内容は慎重に扱う必要があります。

本人が許可しても、他の人を特定できる情報が含まれている場合には、設定を変更したり複数の体験を組み合わせたりして匿名性を高める方法があります。

録音・録画は必ず許可を取る

取材内容を忘れないようスマートフォンで録音や動画撮影をしたくなることがありますが、必ず事前に本人の許可を取ります。

「部員だけで確認します」「大会後に削除します」など、何のために保存するかも説明します。許可されなければメモだけにします。

手話でのインタビューは映像記録が便利ですが、顔そのものが映るため個人情報として特に慎重な管理が必要です。

取材への謝礼や交通費も学校と相談する

当事者が時間を使って話をしてくれる場合、それは作品制作への協力です。「障害について話してもらうのだから無料で当然」と考えるべきではありません。

学校活動の場合、予算上謝礼を用意できないケースもあります。その場合は依頼時に「学校の部活動のため謝礼をお支払いできないのですが、それでも可能でしょうか」と最初に伝えます。

講師として正式に依頼する場合には謝礼や交通費が必要になることもあるため、顧問や学校の事務担当者を通じて相談します。

高校生だけで知らない大人と直接会わない

SNSやQ&Aサイトなどで協力者を募集すると、善意の人から連絡をもらえる可能性がある一方、相手が本当に名乗っている人物なのか確認できない問題があります。

高校生の場合、知らない人と個人的に連絡を取り、二人きりで会う方法は避けたほうが安全です。対面取材を行うなら学校の顧問や保護者など大人を通し、学校・公共施設・団体の事務所など正式な場所で実施します。

「当事者に直接話を聞きたい」という目的と、「ネットで見つけた知らない人と直接会うこと」は別です。学校と団体を通すことで、取材者側と協力者側の双方が安心できます。

SNSで募集する場合も学校の公式ルートを使う

どうしてもSNSを利用する必要がある場合は、個人アカウントのDMだけでやり取りするより、学校や演劇部の公式アカウントを利用し、顧問が内容を確認できる状態にするほうが安全です。

募集文には個人の電話番号や自宅住所などを書かず、「応募後の連絡は学校を通して行う」形にします。

また「聴覚障害者募集」だけでは目的が不明瞭なので、取材目的、利用範囲、時間、方法などを明記します。

当事者へ依頼するときの文面例

団体などへ問い合わせる場合は、次のような要素を含めると丁寧です。

「〇〇高校演劇部で、聴覚障害をテーマの一つとする作品を制作しています。想像だけで当事者を描くことを避けるため、きこえない・きこえにくい方の日常生活やコミュニケーションについて学びたいと考えています。30~60分程度のインタビュー、または文書での回答にご協力いただける方がいらっしゃるかご相談したく、ご連絡しました。取材内容を脚本へ使用する場合は事前に確認し、個人が特定される内容は本人の了承なく使用しません。高校生の活動のため、顧問同席のもとで実施いたします。」

実際には学校名、担当教員、連絡先、希望時期なども加えます。

「当事者を紹介してください」と強く要求するのではなく、「このような相談は可能でしょうか」と問い合わせる形にするとよいでしょう。

取材前に自分たちでも基本的なことを調べておく

当事者取材は、基本知識をすべて一から教えてもらうための時間ではありません。

事前に、ろう者・難聴者・中途失聴者の違い、補聴器、人工内耳、手話、筆談、字幕、情報保障などについて公的資料や当事者団体の資料を読んでおきます。

そのうえで「資料ではこう書かれていましたが、実際の生活ではどう感じますか」という質問をすると、当事者にしか聞けない内容へ時間を使えます。

当事者監修を作品完成後にもお願いできると理想的

取材を一度して終わりではなく、可能なら脚本の完成後に協力者へ確認してもらうと、不自然な描写を減らせます。

例えば「この場面で聞こえない人物が後ろから呼ばれて振り向くのは不自然ではないか」「この手話表現は自然か」「先生の対応として現実的か」などを確認できます。

ただし監修には時間と労力がかかるため、最初の依頼時にお願いできるか確認し、必要なら謝礼について学校と相談します。

演じる俳優だけでなく舞台そのものの情報保障も考える

聴覚障害を題材にした演劇なら、内容だけでなく「もし実際に聞こえない観客が見に来たら、この作品を楽しめるか」という視点も作品づくりにつながります。

字幕、台本の提供、手話通訳などは大会のルールや設備によって実現できない場合もありますが、少なくとも検討すること自体には意味があります。

聞こえない人物を舞台上に登場させながら、実際の聞こえない観客には内容が伝わらないという矛盾に気づくことで、「情報保障」というテーマへの理解も深くなります。

「当事者を演じてもよいのか」と悩んだときの考え方

高校演劇では配役の人数も限られるため、聴覚障害のない部員が聴覚障害のある登場人物を演じることも考えられます。

その場合に重要なのは、障害の特徴を誇張した物まねにしないことです。聞き間違いを笑いにする、発音を誇張する、手話を適当に真似するなどの演出は、当事者を傷つける可能性があります。

「聞こえない人らしく演技する」より、その登場人物の性格、目的、人間関係を作り、その人が必要とするコミュニケーション方法を自然に物語へ組み込むほうが人物として説得力が生まれます。

「Nothing about us, without us」という考え方

障害に関する政策や表現では、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という考え方が重視されています。

全日本ろうあ連盟も、人工内耳など聴覚障害者に関わる議論について「Nothing about us, without us.」の原則を掲げ、当事者を含めた議論の必要性を示しています。[参照:全日本ろうあ連盟]

演劇でも同じように、聞こえる側だけで「きっとこういう気持ちだろう」と決めつけず、制作途中で当事者の声を取り入れることが作品の説得力につながります。

まとめ:当事者の話を聞くなら学校を通して地域の聴覚障害者団体へ相談する

高校演劇で聴覚障害のある人物を描くために当事者の話を聞くことは、ステレオタイプを避け、人物を深く理解するうえで有意義な取り組みです。ただし、ろう者、難聴者、中途失聴者などの経験は一人ひとり異なるため、一人の経験を「聴覚障害者全体の経験」として扱わないことが重要です。

協力者を探す場合には、SNS上で高校生個人が知らない人と直接会うより、顧問の先生を通して地域のろうあ協会・聴覚障害者協会、聴覚障害者情報提供施設などへ正式に問い合わせる方法がおすすめです。全日本ろうあ連盟には全国47都道府県の加盟団体一覧が掲載されているため、地元の相談先を探す入口として利用できます。[参照:全日本ろうあ連盟 加盟団体一覧]

取材では、障害による苦労だけを求めず、学校生活、友人関係、コミュニケーション方法、楽しかったこと、聞こえる人に誤解されやすいことなど幅広く聞くとよいでしょう。答えたくない質問には答えなくてよいことを伝え、録音・録画や実体験の脚本利用には必ず本人の許可を取ります。

また、聞こえない・きこえにくい人が必ず手話を使うわけではなく、補聴器、人工内耳、音声、筆談、文字起こしなどコミュニケーション方法もさまざまです。「聞こえない=かわいそう」「補聴器を付ければ普通に聞こえる」といった単純な描写を避け、その人物自身の性格や生活を描くことが大切です。

作品完成後にも可能であれば当事者へ脚本や手話表現を確認してもらうと、さらに自然な作品になります。当事者を題材として借りるのではなく、一緒に作品の精度を高めてもらう相手として敬意をもって関わることが、聴覚障害をテーマにした演劇を作るうえで最も重要な姿勢です。

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