それまで普通に過ごしていたのに、突然みぞおちや胃のあたりに「ナイフで刺されたような痛み」が出ると、強い不安を感じるものです。数十分で痛みが消え、その後は何ともなくなるケースもありますが、痛みが治まったことだけで原因を判断することはできません。
みぞおち周辺には胃だけでなく、十二指腸、胆のう、胆管、膵臓などがあり、腹部以外の病気が痛みとして現れる場合もあります。「胃の場所が痛い=胃の病気」とは限らないため、突然の強い痛みでは痛みの場所・持続時間・食事との関係・吐き気などをまとめて考えることが重要です。
特に顔色が変わるほどの激痛や、動くと響くような強い腹痛は、たとえ一度治まっていても軽視せず、再発時の対応や受診の目安を知っておきましょう。
みぞおち付近の突然の激痛で考えられる原因
みぞおち周辺の痛みには、胃炎、胃・十二指腸潰瘍など消化管の病気が関係することがあります。ただし、症状だけから病名を一つに絞ることはできません。
胆石による胆道系の痛み、膵臓の病気などでも上腹部に強い痛みが出ることがあります。痛む場所が少し右寄りなのか左寄りなのか、背中まで痛むのか、食事後に起こったのかなどによっても医師が考える原因は変わります。
| 考えられる原因の例 | みられることがある症状 |
|---|---|
| 胃炎・胃十二指腸潰瘍など | みぞおちの痛み、吐き気など |
| 胆石・胆のうや胆管の病気 | 上腹部、とくに右上腹部からみぞおちの強い痛み、吐き気など |
| 膵炎など | 強い上腹部痛、背中へ広がる痛み、吐き気・嘔吐など |
| 腸管の病気 | 腹痛、腹部膨満、嘔吐、便の変化など |
| 心臓など腹部以外の病気 | みぞおち周辺の不快感・痛みとして感じる場合もある |
「数十分で治った」という経過も診断上の情報にはなりますが、それだけで安全な原因だったとは断定できません。一時的に症状が軽くなる病気もあるためです。
痛み止めで治ったから原因が軽いとは限らない
鎮痛薬を飲んだあとに痛みが消えると、「薬が効いたから大丈夫」と考えたくなります。しかし、鎮痛薬によって症状が軽くなったことと、原因となる病気がなくなったことは別です。
また、市販の鎮痛薬の種類によっては胃粘膜へ負担をかけるものがあります。特にNSAIDsと呼ばれる種類の鎮痛薬は、胃・十二指腸潰瘍など消化管障害と関係することが知られています。腹痛に対して自己判断で鎮痛薬を繰り返し使用するより、原因不明の強い痛みが再発する場合は医療機関へ相談することが大切です。
受診する場合は、飲んだ薬の商品名や成分、服用した時刻も伝えましょう。「薬を飲んで約30分後に痛みが消えた」という経過も診察時の参考になります。
魚を食べていなくてもアニサキスだけを除外すればよいわけではない
急激な胃痛からアニサキスを連想する人もいます。厚生労働省によると、胃アニサキス症ではアニサキス幼虫が寄生した生鮮魚介類を食べた後、数時間から十数時間後にみぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐などが生じることがあります。厚生労働省 アニサキスによる食中毒を予防しましょう[参照]
したがって、生鮮魚介類を食べていないという情報はアニサキスを考えるうえでは重要です。しかし、突然の上腹部痛にはほかにもさまざまな原因があります。
「アニサキスではなさそうだから問題ない」という判断にはならず、強い腹痛では別の消化器疾患などを考える必要があります。
遊園地で起きたことやアトラクションとの関係は?
長時間歩いたこと、普段と違う食事、食事間隔、水分不足、疲労、緊張などが体調へ影響することはあります。しかし、テーマパークにいたという状況だけから強い腹痛の原因を「疲れ」「ストレス」「食べ過ぎ」と断定することはできません。
また、アトラクションに並んでいる最中に痛くなったとしても、アトラクションが原因だったとは限りません。診察では「どこにいたか」以上に、何時に何を食べたか、飲酒の有無、痛みが始まった時刻、痛みの場所、姿勢や動作との関係、吐き気・発熱・下痢などの有無が重要になります。
例えば朝からほとんど食べていなかった場合と、脂肪分の多い食事のあとに強い右上腹部痛が出た場合では、医師が確認するポイントも変わります。できる範囲で当日の経過を思い出しておくと役立ちます。
一度だけでも「青ざめるほどの激痛」なら受診を検討
現在は完全に痛みがなく、食事や水分も普通に取れているとしても、突然の非常に強い腹痛が初めて起きた場合は、一度医療機関へ相談する選択肢があります。特に原因が分からず、顔色が変わるほどの痛みだった場合は、再発するまで放置するより内科・消化器内科などで経過を伝えるとよいでしょう。
受診時には「胃が痛かった」だけでなく、「突然始まった」「刺されるような痛みだった」「動くと痛かった」「何分程度続いた」「鎮痛薬を飲んだ」「その後は再発していない」と具体的に伝えます。
女性の場合は、痛みの位置によっては妊娠の可能性や月経との関係など婦人科領域の情報が重要になることもあります。腹痛では年齢、既往歴、服薬、妊娠可能性なども診断の手掛かりになります。
次に激痛が出たとき救急受診を考える症状
突然の強い腹痛が再び起こり、治まらない場合は「前回も治ったから今回も待とう」と考えないことが重要です。特に腹部が非常に痛く、動けないほどであれば早急な医療評価が必要になる場合があります。
次のような症状を伴う場合には、夜間・休日でも救急医療への相談を検討し、状態が深刻な場合は119番を利用してください。
- 突然の非常に強い腹痛が続く
- お腹が硬く感じる、触れると激しく痛む
- 吐血、コーヒーかすのような嘔吐がある
- 黒いタール状の便や血便が出る
- 何度も嘔吐して水分を取れない
- 意識が遠のく、冷や汗が強い、ぐったりする
- 胸の痛み・圧迫感、息苦しさを伴う
- 高熱や黄疸などを伴う
- 妊娠の可能性があり、強い腹痛や出血がある
緊急性を自分で判断できない場合には、利用できる地域では救急安心センター事業「#7119」などへ相談する方法もあります。消防庁では#7119について、急な病気やけがの際に救急車を呼ぶべきか、今すぐ病院へ行くべきか迷った場合の相談窓口として案内しています。総務省消防庁 救急安心センター事業(#7119)[参照]
まとめ:突然の胃周辺の激痛は「治ったから大丈夫」とは限らない
みぞおち・胃のあたりに突然刺されるような激痛が起こる原因には、胃炎や胃・十二指腸潰瘍だけでなく、胆石、膵臓の病気、腸管の病気などさまざまな可能性があります。痛む位置だけから胃が原因とは断定できません。
数十分で痛みが消えて現在は元気でも、青ざめるほどの強い痛みが突然起きたのであれば、原因不明のまま繰り返し鎮痛薬で対処するのではなく、内科・消化器内科などへの相談を検討するのが安心です。
そして同程度の激痛が再発して続く場合や、吐血・黒色便、繰り返す嘔吐、意識が遠のく、胸痛・息苦しさなどを伴う場合には早急な医療評価が必要です。「似た経験をした人の病名」だけで自分の原因を決めず、症状の経過を医師へ伝えて判断してもらうことが大切です。


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