同じようにストレスを受けても、怒りを強く表に出す人もいれば、何も言わずに我慢する人もいます。その違いを見ると「性格の問題なのか」「ストレスが強い人ほど爆発するのか」と考えたくなりますが、実際には一つの要因だけでは説明できません。
ストレスへの反応には、もともとの気質や考え方だけでなく、過去の経験、家庭や職場などの環境、感情を表現する習慣、睡眠や疲労、そのとき抱えている負担、周囲から得られる支援などが関係します。
また「ヒステリック」という言葉は日常的には激しく怒ったり感情的になったりする様子を指して使われますが、医学的な診断名として相手を判断する言葉ではありません。「怒る人は性格が悪い」「我慢できる人はストレスに強い」と単純に分けないことが、ストレス反応を理解するうえで大切です。
ストレスへの反応は人によって違う
ストレスを受けたときに現れる反応には個人差があります。厚生労働省の「こころの耳」でも、ストレスによって心理面、身体面、行動面にさまざまな反応が現れることが紹介されています。厚生労働省「こころの耳」[参照]
例えばイライラして口調が強くなる人がいる一方、気分が落ち込む人、黙り込む人、眠れなくなる人、食欲が変化する人、頭痛や胃の不調として現れる人もいます。外から見える反応だけでは、その人が抱えているストレスの大きさまでは判断できません。
そのため、感情を強く表す人と我慢する人の違いを「ストレス量の違い」だけで説明するのは難しいと考えられます。同程度の出来事でも、その人がどう受け止め、どのような方法で対処するかによって表れ方が変わります。
性格や気質は関係するが、それだけで決まるわけではない
性格や気質はストレス反応に関係する要素の一つです。感情を表現しやすい人、慎重に考えてから発言する人、対立を避けようとする人など、普段の行動傾向によってストレス時の反応にも違いが生じることがあります。
ただし「短気な性格だから怒る」「おとなしい性格だから我慢する」と固定的に考えるのは適切ではありません。普段は穏やかな人でも、睡眠不足や仕事・家庭の問題が重なれば感情を抑えにくくなることがあります。反対に、普段は感情表現が豊かな人でも状況によっては黙って耐えることがあります。
性格は一つの材料ではありますが、その時点の心身の余裕や置かれている状況との組み合わせで反応が変化すると考えるほうが現実的です。
ストレスの「度合い」だけでなく積み重なりも重要
大きなストレスが一度起こった場合だけでなく、小さなストレスが長期間積み重なった結果、ある出来事をきっかけに感情が一気に表へ出ることがあります。そのため、最後に起きた出来事だけを見ると「そんな小さなことでなぜ怒るのか」と感じるケースがあります。
例えば仕事の忙しさ、睡眠不足、家事、経済的な不安、人間関係の問題が何週間も続いているところへ、予定変更などの小さな出来事が加われば、それが最後のきっかけになることがあります。この場合、表面的には予定変更に怒っていても、背景には複数の負担が存在します。
感情が爆発した瞬間の出来事と、そこまで蓄積していたストレスは分けて考える必要があります。ストレスの大きさだけでなく、期間、回復する時間があるか、複数の問題が重なっていないかも重要です。
「我慢する人=ストレスに強い」とは限らない
感情を表に出さず我慢できる人を見ると、ストレス耐性が高いように感じることがあります。しかし、表情や言葉に出ていないだけで、本人の中では大きな負担になっている可能性があります。
例えば職場で嫌なことがあっても何も言わない人が、帰宅後に強い疲労を感じたり、眠れなくなったり、休日に何もする気が起きなくなったりすることがあります。感情を抑えられていることと、ストレスの影響を受けていないことは同じではありません。
我慢が必要な場面はありますが、長期間すべてを抱え込むことが必ずしも健康的な対処法とは限りません。誰かへ相談する、負担を調整する、休息するなど、ストレスを減らす方法も必要になります。
感情を強く表す人にもさまざまな背景がある
怒鳴る、泣く、強い口調になるなどの反応についても、「我慢が足りない」とだけ考えることはできません。疲労や睡眠不足で感情を調整する余裕がなくなっている場合や、不安や悲しみが怒りという形で表れている場合もあります。
また、育ってきた環境によって感情表現の習慣が異なることもあります。問題があればその場で強く主張することが普通だった環境と、感情を表に出さず耐えることが求められた環境では、大人になってからの対処方法にも違いが出る可能性があります。
ただし、背景にストレスがあることと、暴言や暴力によって他人を傷つけることが許されることは別問題です。理由を理解することと行動を容認することは分けて考える必要があります。
ストレスへの対処方法「コーピング」にも個人差がある
ストレスへ対処するための行動や考え方は「コーピング」と呼ばれます。同じ問題でも、人に相談する人、原因を解決しようとする人、趣味で気分転換する人、いったん距離を置く人など対処方法はさまざまです。
例えば仕事量が多すぎる場合に「上司へ相談して調整する」という方法を取れる人なら負担を減らせるかもしれません。一方、何も言わず残業を続ければストレスが蓄積する可能性があります。逆に、その場で怒りをぶつけるだけでは根本的な仕事量は変わらないこともあります。
大切なのは「怒らないこと」や「ひたすら我慢すること」ではなく、自分や周囲を傷つけず、問題や感情を適切に処理できる方法を増やすことです。
怒るか我慢するかの二択にしないことが大切
ストレスを感じたときの対応は、「爆発する」か「我慢する」かの二択ではありません。例えば「今日は余裕がないので後で話したい」「その言い方をされるとつらい」「仕事量を調整してほしい」と、感情や要望を落ち着いて言葉にする方法もあります。
怒りが強くなった瞬間には、その場から短時間離れる、返事を少し遅らせる、呼吸を整えるなど、反応するまでの時間を作ることも役立ちます。一方で我慢しやすい人は、限界になる前に困っていることを小さく伝える習慣を作ることが有効です。
つまり目指したいのは「何があっても我慢できる人」ではなく、自分の状態に気付き、必要な休息・相談・問題解決・感情表現を選べる状態です。
ストレス反応が続く場合は心身の状態にも目を向ける
以前なら気にならなかったことで頻繁に激怒するようになった、逆に何を言われても黙って抱え込むようになったなど、本人にとって明らかな変化が続いている場合は、性格だけの問題と決めつけないほうがよいでしょう。
眠れない、食欲が大きく変化した、気分の落ち込みや強い不安が続く、仕事や学校へ行けない、集中できない、日常生活へ支障が出ているといった状態が続くなら、心療内科・精神科などの医療機関や地域の相談窓口へ相談する選択肢があります。厚生労働省の「こころの耳」では、働く人や家族向けの相談窓口なども案内されています。こころの耳・相談窓口[参照]
また、自分や他人を傷つけそうなほど感情を制御できない場合は、単なるストレス発散の問題として扱わず、安全を確保して周囲や専門機関へ助けを求めることが重要です。
まとめ:性格とストレス量の両方が関係するが、それだけでは決まらない
ストレスが溜まったときに感情を強く表す人と我慢する人の違いは、性格だけ、あるいはストレスの度合いだけで決まるものではありません。気質、考え方、これまでの経験、感情表現の習慣、環境、睡眠や疲労、ストレスの蓄積、周囲の支援、対処方法など多くの要素が関係します。
怒りを表に出すからストレスに弱い、我慢できるからストレスに強い、と単純に判断することはできません。外へ出る反応が違うだけで、どちらも強い負担を抱えている場合があります。
重要なのは、怒りを爆発させることでも限界まで我慢することでもなく、自分のストレスに早めに気付き、休息する、問題から距離を取る、相手へ適切に伝える、相談するといった複数の対処方法を持つことです。以前と違う強い感情変化や日常生活への支障が続いている場合は、性格の問題と片付けず専門家へ相談することも検討しましょう。


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