双極性障害の寛解期に眠気が強いときは?ワイパックス・睡眠時間・減薬を考えるポイント

うつ病

双極性障害の治療が進み気分が安定してくると、次に気になりやすいのが「睡眠時間が長い」「薬を飲むと眠い」「いつまで薬を続けるのか」といった問題です。特にワイパックス(一般名:ロラゼパム)のような抗不安薬を服用している場合、病気の回復過程による睡眠なのか、薬による眠気なのかを本人だけで判断するのは簡単ではありません。

また、双極性障害では症状が落ち着いた「寛解」と治療終了は同じ意味ではありません。再発予防を目的とした維持療法が重要になるため、調子が良い時期ほど自己判断で薬を減らしたり中止したりせず、睡眠・活動量・副作用を主治医と確認しながら治療を調整することが大切です。

双極性障害の寛解期でも睡眠時間が長くなることはある

成人の睡眠時間には個人差があり、「何時間以上なら必ず異常」という数字だけで判断することはできません。双極性障害の場合は、単純な睡眠時間だけではなく、以前との変化、日中の眠気、生活への支障、気分の変化、服用している薬などをまとめて評価する必要があります。

例えば10~11時間眠っていても、起床後には頭がはっきりしており、決めた時間に仕事へ行けていて、日中に強い眠気がなく、生活リズムも安定しているケースがあります。一方、同じ10~11時間でも「起きようとしても起きられない」「日中も眠り続ける」「仕事や家事ができなくなった」という場合では意味が異なります。

睡眠時間だけで良し悪しを決めず、睡眠によって日常生活にどの程度影響が出ているかを見ることが重要です。また、以前より急に睡眠時間が増えた場合や、気分の落ち込み、意欲低下などを伴う場合には、抑うつ症状との関係も含めて主治医に相談したほうがよいでしょう。

ワイパックス(ロラゼパム)で眠気が出ることはある

ワイパックスはロラゼパムを有効成分とするベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。脳の興奮を抑えて不安や緊張を和らげる作用がありますが、その作用に伴って眠気や注意力・集中力などの低下が生じることがあります。PMDAでもワイパックスの医薬品情報および患者向け医薬品ガイドが公開されています。[参照]

そのため、長時間睡眠や二度寝、日中の眠気がある場合には、服用時刻や服用量、ほかの薬との組み合わせなどを主治医に伝える価値があります。「眠気があるから薬が悪い」と決めつけるのではなく、薬による影響と病状そのものによる影響の両方を検討します。

診察では「よく寝ています」だけではなく、「23時に寝て7時に一度起き、再び寝て10時に起きる」「午後にも1時間ほど眠くなる」といった形で具体的に伝えると状況を判断してもらいやすくなります。1~2週間程度、就寝・起床時刻、二度寝、昼寝、薬を飲んだ時刻、気分を簡単に記録しておく方法も有用です。

眠気を減らしたい場合に考えられる治療の調整

眠気が生活上の負担になっている場合には、薬の必要性、用量、服用する時間、併用薬などを主治医が再評価することがあります。ただし、どの方法が適しているかは診断、症状、現在使用しているほかの薬、過去の躁状態・抑うつ状態などによって異なります。

「眠気が少ない抗不安薬へ変更すれば解決する」と単純に考えることもできません。抗不安薬にはそれぞれ作用、副作用、適応があり、双極性障害では気分の安定性との兼ね合いも考える必要があります。そのため、具体的な薬剤への変更は主治医が患者ごとの状態を確認したうえで判断します。

ワイパックスを自己判断で急に減量・中止することは避けてください。PMDAの患者向け医薬品ガイドでも、体調が良くなったからと自己判断で使用を中止したり量を加減したりせず、指示どおり使用することが重要とされています。[参照]

寛解したらすぐ減薬できるわけではない

双極性障害では、躁状態や抑うつ状態が治まった後にも再発を防ぐための「維持療法」が重要になります。日本うつ病学会の双極性障害治療ガイドラインでも、双極性障害は気分エピソードの再発を繰り返す可能性があるため、再発予防を目的とした維持療法が重要であるとされています。[参照]

つまり、「寛解して○か月経過すれば一律に減薬できる」という明確な期限を設定するのは難しいということです。双極I型かII型か、過去の躁・軽躁・抑うつエピソードの回数や重症度、再発歴、現在の薬、生活環境などによって治療方針は変わります。

例えば気分が数か月安定している人でも、過去に薬を減らした際に再発している場合と、初回エピソードから長期間安定している場合では、医師が考えるリスクは同じではありません。「4か月安定したから減薬」というように期間だけで決めず、再発リスクと薬の副作用のバランスから判断することが重要です。

活動量を増やすときは睡眠を削るより生活リズムを整える

双極性障害では、睡眠と生活リズムの安定も重要です。日本うつ病学会のガイドラインでは、薬物療法だけでなく心理教育などの心理社会的治療についても述べられており、再発の初期徴候を把握することの重要性が示されています。

活動時間を増やしたいときも、いきなり睡眠時間を大幅に短くするより、「毎日の起床時刻をできるだけ一定にする」「午前中に活動する」「昼寝をする場合は生活リズムへの影響を観察する」といった形で段階的に調整するほうが状況を把握しやすくなります。

例えば週10時間程度働いている状態から活動量を増やす場合、仕事と睡眠を同時に大きく変更するより、主治医と相談しながら勤務時間を少し増やし、その後の睡眠や気分を記録する方法があります。睡眠時間の減少とともに「眠くないのに活動できる」「考えが次々浮かぶ」「普段より話し続ける」「買い物が増える」といった変化が現れた場合は、単なる回復ではなく軽躁・躁状態の初期徴候である可能性もあるため注意が必要です。

診察時に伝えておくとよいポイント

眠気や減薬について相談するときは、主観的な「調子は良い」という情報に加えて、具体的な生活状況を伝えると治療方針を検討しやすくなります。

  • 夜の就寝時刻と朝の起床時刻
  • 二度寝や昼寝をする時間
  • 1日の合計睡眠時間
  • ワイパックスを飲む時刻と量
  • 服用後に眠くなるまでのおおよその時間
  • 仕事・家事など現在の活動量
  • ここ数週間の気分や意欲の変化
  • 過去に薬を減らしたときの症状
  • 今後どの程度まで活動量を増やしたいか

特に「眠気を減らして活動量を増やしたい」という希望は治療上重要な情報です。薬を減らしたいという伝え方だけではなく、「気分は安定しているが、午前中の二度寝を減らして活動時間を増やしたい。そのため薬の影響を確認したい」と伝えると目的が明確になります。

逆に、急に睡眠時間が短くなったのに疲れを感じない、気分が異常に高揚する、活動性が急激に高まる、強い抑うつや希死念慮が現れるなど大きな変化があれば、次回予約日を待たず医療機関へ相談することが大切です。

まとめ:睡眠時間・眠気・減薬はセットで主治医と評価する

双極性障害の寛解期に睡眠時間が長い場合、「回復のためだから問題ない」「薬のせいだから減らせばよい」のどちらか一方に決めつけることはできません。睡眠時間、日中の眠気、生活への支障、服薬内容、気分の状態を総合して判断する必要があります。

ワイパックス(ロラゼパム)は眠気などが生じる可能性のある薬であるため、日中の活動に影響しているなら主治医に相談する十分な理由になります。ただし、自己判断による減量・中止は避け、用量や服用方法を含めた調整は医師・薬剤師と相談して行うことが重要です。

また、双極性障害では寛解後も再発予防を目的とした維持療法が重要です。減薬を検討できる時期は「寛解して何か月」という期間だけでは決まらないため、安定期間と再発歴、副作用、生活状況を主治医と定期的に確認しながら次のステップを考えていくのが安全です。

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