朝起きたときに突然、片耳だけ音が聞こえにくい、耳にふたをされたように詰まっている――このような症状には、耳垢や外耳炎など比較的身近な原因から、中耳・内耳の病気まで複数の可能性があります。特に注意したいのは、いったん聞こえが戻ったとしても、急に生じた片耳の聞こえにくさを自己判断で放置しないことです。
聞こえ方だけでは原因を正確に判別できません。耳の中の診察に加えて聴力検査などを行うことで、外耳の問題なのか、中耳なのか、それとも音を感じる内耳側の問題なのかを判断できます。この記事では、朝に片耳が聞こえにくくなる場合に考えられる原因、症状が戻った場合にも受診したほうがよい理由、受診までに注意したいことを解説します。
朝起きたら片耳が急に聞こえにくい場合に考えられる原因
耳が聞こえにくくなる原因は、大きく分けると外耳や中耳で音が伝わりにくくなる伝音難聴と、内耳などで音を感じ取る機能に問題が生じる感音難聴があります。本人が感じる「耳が詰まった感じ」だけでは、このどちらなのかを判断できません。
たとえば耳垢が外耳道をふさいでいる、外耳炎による腫れがある、中耳に液体がたまっているといった状態でも聞こえにくくなります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、外耳炎では腫れが強くなると聞こえが悪くなることがあると説明しています。
一方、外から見ただけでは分からない内耳の病気でも「詰まっている」「こもって聞こえる」という感覚が生じる場合があります。したがって、以前に外耳炎になった経験があるからといって、今回も同じ原因だとは限りません。
突然の片耳の難聴では突発性難聴などの確認が重要
急に片耳が聞こえにくくなったときに除外しておきたい病気の一つが突発性難聴です。厚生労働省は、突発性難聴について突然左右どちらか一方の耳が聞こえにくくなることが特徴で、朝起きて初めて異変に気づくケースもあると説明しています。
「完全に聞こえなくなる」ことだけが突発性難聴ではありません。程度によっては、耳が詰まっている感じ、低い音が聞こえにくい、左右で聞こえ方が違うといった比較的軽い違和感として感じる場合があります。耳鳴りやめまい、吐き気などを伴うこともあります。
ただし、聞こえ方が良くなったり悪くなったりする症状がすべて突発性難聴というわけではありません。厚生労働省の解説では、典型的な突発性難聴では聴力の改善・悪化を繰り返すような症状の波はないとされています。反復する場合には、急性低音障害型感音難聴、メニエール病、中耳の問題など、別の疾患を含めて診断する必要があります。
急な難聴については早期の診断・治療が重要です。厚生労働省は突発性難聴では早めに治療を開始することが重要としており、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も急になった難聴や変化のある難聴では早めの耳鼻咽喉科受診を勧めています。詳しくは厚生労働省の突発性難聴についての解説[参照]、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の耳の病気に関する解説[参照]でも確認できます。
夕方に聞こえが戻っても安心とは限らない
朝は聞こえにくかったものの、数時間後には普通に戻った場合、「治ったから大丈夫」と考えたくなります。しかし、一時的に症状が改善したという事実だけでは原因が解決したとは判断できません。
特に「昨日の朝に片耳が聞こえにくくなり夕方に改善したが、翌朝また同じ耳が聞こえにくくなった」というような反復がある場合は、症状がない時間帯があったとしても耳鼻咽喉科で相談する価値があります。受診時に症状が軽くなっていても、いつ発症したか、何時間続いたか、何回起きたかという経過が診断の手掛かりになります。
また「詰まった感じはするものの会話は普通に聞こえる」という場合にも注意が必要です。特定の周波数だけ聴力が低下しているケースでは、日常会話がある程度聞き取れるため、自分では難聴だと気づきにくいことがあります。
外耳炎を繰り返している場合でも自己判断しない
普段から外耳炎になりやすい人の場合、耳の聞こえが悪くなると「また外耳炎だろう」「耳だれが固まっているのだろう」と考えてしまいがちです。確かに外耳炎による腫れや分泌物によって外耳道が狭くなれば、聞こえが悪くなる可能性はあります。
しかし、今回は強いかゆみや耳だれ、耳を触った際の痛みといった普段の外耳炎とは異なる状態であるなら、別の原因も考える必要があります。過去の病歴は重要な情報ですが、過去と似た症状=同じ病気とは限りません。
耳鼻咽喉科では外耳道や鼓膜を観察したうえで、必要に応じて純音聴力検査などを行います。これにより、単純に音が耳の奥まで届きにくくなっているのか、内耳側の聴力そのものが低下しているのかを判断する材料が得られます。
受診までにやってはいけないこと・記録しておきたいこと
耳が詰まっているように感じても、耳かきや綿棒を奥まで入れて無理に掃除するのは避けたほうが安全です。外耳道を傷つけて炎症を悪化させたり、耳垢をさらに奥へ押し込んだりする可能性があります。特に耳だれや外耳炎を繰り返している場合は、自分で耳の奥を処置しないほうがよいでしょう。
受診前には、症状について簡単に記録しておくと役立ちます。たとえば「午前7時に起床したとき右耳が詰まっていた」「午後5時ごろには正常に感じた」「翌朝また同じ症状が出た」というように時間経過を残します。
さらに、耳鳴り、めまい、吐き気、耳痛、耳だれ、発熱の有無、直前に大きな音を聞かなかったか、最近風邪をひいていなかったかなども伝えられるようにしておくと診察がスムーズです。イヤホンを左右交互に使ったり、片耳ずつ指でふさいだりした際に左右差を感じた場合も、その内容を医師に伝えましょう。
こんな症状を伴う場合はより迅速な対応を
片耳の急な聞こえにくさそのものが早めに耳鼻咽喉科へ相談したい症状ですが、強いめまいや急激な聴力低下を伴う場合は特に放置しないことが大切です。
また、難聴に加えてろれつが回らない、顔や手足の感覚がおかしい、手足に力が入らない、飲み込みにくい、激しい頭痛などの神経症状が突然現れた場合には、耳だけの病気ではない可能性も考える必要があります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、難聴やめまい以外の脳神経症状を伴う場合には脳梗塞など他の疾患を考える必要があるとしています。このような場合は通常の受診を待たず、救急医療を含めた迅速な対応が必要です。
反対に、症状が軽くなったから数週間様子を見る、という判断もおすすめできません。特に急性感音難聴では治療開始時期が重要になるため、原因が分からない急な片耳の聞こえにくさは早期に評価してもらうのが安全です。
まとめ:朝の片耳の聞こえにくさは「戻ったから大丈夫」と判断しない
朝起きたときに片耳だけ急に聞こえにくくなる原因には、耳垢、外耳炎、中耳の異常、急性低音障害型感音難聴、メニエール病、突発性難聴など複数の可能性があります。症状だけで原因を特定することは困難です。
特に重要なのは、突然生じた片耳の聞こえにくさや耳閉感は、一度自然に改善しても、再び起こったのであれば早めに耳鼻咽喉科で診察と聴力検査を受けることです。外耳炎を繰り返している人でも、いつもの症状と違う場合は過去の外耳炎だけを原因と決めつけないようにしましょう。
耳の病気の中には治療を始める時期がその後の聴力に影響するものがあります。「もう少し様子を見よう」と長期間待つより、急な聞こえの変化があった時点で専門医に確認してもらうことが、聴力を守るうえで大切です。


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