薬剤師不在の夜間に病棟薬を使うのは違法?医師・看護師の薬剤取り揃え、調剤、与薬の法的な境界を解説

病院、検査

病院では、深夜や休日に薬剤師が院内にいない時間帯でも、入院患者の状態変化に応じて新たな抗菌薬、解熱薬、鎮静薬などが必要になることがあります。医師が電子カルテで処方・指示を出した後、病棟や救急外来の定数配置薬を看護師が取り出して患者へ投与する運用を採用している医療機関も珍しくありません。

この問題を法律上整理するときは、「処方する」「調剤する」「薬を取り揃える」「患者に与薬・投与する」という行為を分けて考える必要があります。薬剤師法19条は原則として薬剤師以外による調剤を禁止していますが、保健師助産師看護師法37条は、医師の指示がある場合の看護師による医薬品の授与などを認めています。また、厚生労働省の医薬品安全使用マニュアル自体が、薬剤師不在時の緊急的な医薬品供給を想定し、「薬剤師不在時の医薬品払い出しへの医師の関与など」を院内手順として定める例を示しています。[参照:厚生労働省 医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル]

したがって、「夜間に薬剤師がいない病院で看護師が薬を触ったら直ちに違法」「医師本人が薬庫まで取りに行かなければ必ず違法」というほど単純ではありません。一方で、看護師が独立して処方内容を判断し、薬剤を計量・混合して調剤することまで自由に認められているわけでもありません。個々の行為が調剤なのか、医師の指示に基づく与薬準備・診療の補助なのか、さらに院内の医薬品管理体制がどうなっているのかを確認する必要があります。

  1. まず押さえたい薬剤師法19条の原則
  2. 医師が自ら調剤できるのはどのような場合?
  3. 「医師が薬を取ってくれば適法」という理解だけでは不十分
  4. 看護師は医師の指示があれば患者への与薬ができる
  5. 薬剤師不在時に看護師が病棟配置薬を取ることは直ちに違法なのか
  6. 一方で「看護師が処方に合わせて自由に調剤」は別問題
  7. 軟膏・水剤・散剤などの計量・混合はより慎重に考える
  8. 注射薬の溶解・混注は内服薬のピッキングと同じ議論ではない
  9. 救急外来にあらかじめ置かれた薬を看護師が使用する運用はどう考える?
  10. 「薬剤師当直あり」でも薬剤師が毎回ベッドサイドまで薬を届ける必要はない
  11. 200床の病院なら薬剤師当直が法律で必須?
  12. 薬剤師不在時こそ「院内手順」が重要になる
  13. 具体例:深夜に新規の内服解熱薬を処方した場合
  14. 具体例:深夜に新規抗菌薬が必要になった場合
  15. 頓用指示がある場合と新規処方では意味が違う
  16. 「オーダーして後は全部看護師に任せる」は内容次第
  17. 監査・立入検査では何を見られる?
  18. 実際に薬剤師不在の夜間業務が医療事故につながった例はある
  19. 薬剤師法19条違反には罰則もある
  20. 離島診療所の特例通知からも分かる「取り揃え」と「責任」の考え方
  21. 勤務医が自院の運用を確認するときのポイント
  22. 法的により安全な夜間運用とは
  23. まとめ:薬剤師不在時は「医師だけが薬を取れば合法」と単純には整理できない

まず押さえたい薬剤師法19条の原則

薬剤師法19条は、「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない」と定めています。つまり、処方箋に基づいて薬剤を調製する「調剤」は原則として薬剤師の業務です。[参照:厚生労働省 薬剤師法 第19条]

ただし同条には例外があり、一定の場合には医師または歯科医師が自己の処方箋により自ら調剤することが認められています。したがって、医師には薬剤師とは別の法的根拠に基づいて自ら調剤できる場面があります。

注意したいのは、「医師の指示があれば誰でも調剤できる」という条文ではないことです。薬剤師法19条の医師に関する例外は、あくまで一定の場合に医師自身が自己の処方に基づいて調剤するときの規定です。

医師が自ら調剤できるのはどのような場合?

薬剤師法19条は、医師法22条に掲げられた場面などについて医師自身による調剤を例外的に認めています。医師法22条には、病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合、診断または治療方法がまだ決定していない場合、治療上必要な応急措置として薬剤を投与する場合などが規定されています。[参照:厚生労働省 医師法 第22条]

例えば深夜、入院患者が急に発熱し、診察した当直医が新たな抗菌薬や解熱薬を直ちに使用する必要があると判断したケースでは、「短時間ごとの病状変化への対応」「治療上必要な応急措置」などに該当し得ます。ただし、具体的な事例がどの号に該当するかは患者の状態や処方目的によって異なるため、夜間処方ならすべて自動的に例外になるわけではありません。

また厚生労働省は、医師が自己の処方により自ら調剤する場合でも安全性確保が必要であり、処方を記載した診療録を処方箋に相当するものとして取り扱えるとの行政解釈を示しています。[参照:厚生労働省 処方せんに関する薬剤師法施行上の疑義について]

「医師が薬を取ってくれば適法」という理解だけでは不十分

薬剤師不在時について、「医師本人が薬剤部や病棟薬品棚から薬を取ってくれば合法で、看護師が取れば違法」と単純化して説明されることがあります。しかし、実際の医療法制はそこまで二者択一ではありません。

医師が薬剤師法19条の例外要件を満たして自己の処方に基づき自ら調剤するのであれば、その医師自身による調剤には法的根拠があります。この意味では、医師が調剤過程に直接関与することには重要な意味があります。

一方で、病棟の定数配置薬を看護師が指示内容に従って取り出し、そのまま患者への投与準備をする行為がすべて当然に「薬剤師法上の調剤」に該当する、とも一律にはいえません。看護師には別途、医師の指示に基づいて医薬品を授与し診療を補助する法的権限があるからです。実務上重要なのは、「誰が棚まで歩いたか」だけでなく、その人が何を判断し、どこまで薬剤を選択・調製し、誰の責任と確認の下で患者へ投与したかです。

看護師は医師の指示があれば患者への与薬ができる

保健師助産師看護師法37条では、看護師・准看護師等は主治医または歯科医師の指示がある場合には、診療の補助として医薬品の授与などを行うことができます。[参照:厚生労働省 保健師助産師看護師法 第37条]

したがって、医師が患者Aに「セフトリアキソン○gを○時に投与」など具体的な指示を出し、その指示に基づいて看護師が投与を実施すること自体は、看護師による診療の補助として通常行われている業務です。静脈注射についても厚生労働省は、医師または歯科医師の指示の下で看護職員が行う静脈注射は診療の補助の範囲として取り扱うことが可能としています。[参照:厚生労働省 医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について]

ここで問題になるのは患者へ投与する行為そのものより、投与前に行う「薬剤の取り出し・選択・計量・混合・分包」などのどこまでが与薬準備で、どこから薬剤師法上の調剤となるのかという境界です。

薬剤師不在時に看護師が病棟配置薬を取ることは直ちに違法なのか

厚生労働省の「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル」は、病棟への医薬品供給について、調剤薬は緊急時などやむを得ない場合を除いて処方箋によりその都度薬剤部門から供給することが望ましいとしています。一方、病棟には必要最小限の定数配置薬を置くこと自体が想定されています。

さらに同マニュアルの「緊急時の供給方法」の具体例として、明確に「薬剤師不在時の医薬品払い出しへの医師の関与など」が挙げられています。つまり国の医療安全行政も、夜間・休日に薬剤師が不在となり、緊急に医薬品を取り扱わなければならない状況そのものを想定しています。[参照:厚生労働省 医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル 第4章]

したがって、医師の明確な患者別指示のもと、院内手順に従い、適切に管理された定数配置薬を看護師が使用準備して直ちに患者へ投与する運用を見て、「看護師が薬棚から取った」という事実だけで薬剤師法19条違反と断定するのは適切ではありません。ただし、病院側には薬剤師不在時の手順、確認者、払い出し記録、補充方法などを明確にしておくことが求められます。

一方で「看護師が処方に合わせて自由に調剤」は別問題

看護師による与薬が認められているからといって、薬剤師の代わりとして自由に調剤業務一式を行えるわけではありません。

厚生労働省は2019年の「調剤業務のあり方について」で、薬剤師以外の者が処方箋に記載されたPTP包装等の薬を取り揃えることが許容される条件として、調剤に最終責任を持つ薬剤師の指示があり、その薬剤師の目が現実に届く場所で行われ、最終確認を薬剤師自身が行うことなどを示しています。[参照:厚生労働省 調剤業務のあり方について]

この通知は主として薬局の調剤業務の整理ですが、「薬剤師以外によるピッキングなら何でも自由」という意味ではない点は重要です。薬剤師が不在で、その監督も最終確認もない状況を、この通知だけを根拠として正当化することはできません。

軟膏・水剤・散剤などの計量・混合はより慎重に考える

薬剤を棚から取り出す行為と、薬剤そのものを計量・混合して患者別に作り替える行為では法的な意味が異なります。

厚生労働省は、薬剤師以外の者が軟膏剤、水剤、散剤などを直接計量・混合する行為について、薬剤師による途中確認があったとしても薬剤師法19条違反に該当すると明確に通知しています。[参照:厚生労働省 調剤業務のあり方について]

そのため、「未開封の抗菌薬を病棟定数棚から取り出して医師指示どおり患者へ使用する」という場面と、「複数の処方薬を患者ごとに計量・混合・分包して完成品を作る」という場面を同列には扱えません。

注射薬の溶解・混注は内服薬のピッキングと同じ議論ではない

抗菌薬では、バイアルから薬剤を溶解して点滴バッグへ混注するなどの操作が必要になることがあります。この行為には「調剤」と「診療の補助としての注射準備・実施」の両面が関係するため、PTP包装された内服薬の取り揃えと同じ基準だけで判断するのは危険です。

看護師による静脈注射そのものは、医師の指示の下で診療の補助として実施可能とされています。一方、薬剤の種類、調製方法、無菌性、危険性によっては薬剤師による調製が強く求められるものもあります。

したがって夜間抗菌薬の運用については、「看護師だから混注してよい」「薬剤師がいないから一切できない」という一般論ではなく、院内の薬剤業務手順書、注射薬調製基準、感染管理、安全管理基準と照合する必要があります。

救急外来にあらかじめ置かれた薬を看護師が使用する運用はどう考える?

大規模病院の救急外来やICUでは、救急薬、蘇生薬、頻用薬などがあらかじめ定数配置され、医師が患者別に指示を出した後、看護師がその薬を準備・投与する運用が行われています。

この場合、日中に薬剤部が適正な薬剤を供給し、定数管理や期限管理を行い、救急外来側では医師の具体的指示に基づいて使用し、使用後に補充・記録するという仕組みであれば、「患者ごとに薬剤師が救急外来まで薬を運んで看護師へ手渡さなければならない」というルールにはなっていません。

厚生労働省の安全使用マニュアルでも病棟・各部門への定数配置薬を前提とした管理方法が示され、救急部門・集中治療室についても医薬品の保管管理、準備、使用、使用後の確認と管理を手順化する考え方が示されています。[参照:厚生労働省 医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル]

「薬剤師当直あり」でも薬剤師が毎回ベッドサイドまで薬を届ける必要はない

薬剤師が24時間院内にいる病院でも、すべての薬剤について「処方が出る→薬剤師が1剤ずつ救急外来へ持っていく→看護師へ手渡す」という運用である必要はありません。

薬剤師の役割には、処方監査、疑義照会、調剤、注射薬の払い出し、定数薬の補充・管理、医薬品情報提供などがあります。薬剤部ですでに適切な医薬品供給・管理体制が整備されていれば、救急部門に配置された薬を看護師が医師の指示に沿って準備し患者へ投与することもあります。

したがって、救急外来で薬剤師が薬を直接看護師へ渡している姿を見ないことだけから、「薬剤師が調剤に関与していない」と判断することもできません。

200床の病院なら薬剤師当直が法律で必須?

病院については医療法18条および医療法施行規則6条の6により、原則として専属の薬剤師を置くことが求められています。[参照:厚生労働省 医療法施行規則 第6条の6]

しかし、病院に専属薬剤師を置く義務があることと、すべての一般病院に薬剤師を24時間常駐させる義務があることは同じではありません。病床数が200床だからという理由だけで、全国一律に薬剤師当直を置かなければならないという一般規定にはなっていません。

実際、厚生労働省の医療法立入検査関係資料でも、夜間救急体制について、日中に稼働するすべての職種を夜間も同じように配置することまで求めるものではないとされています。[参照:厚生労働省 医療法第25条第1項に基づく立入検査要綱]

薬剤師不在時こそ「院内手順」が重要になる

薬剤師の夜勤がない病院では、夜間に必要になる薬を想定して、あらかじめ院内で運用を決めておく必要があります。

例えば、次のような事項です。

  • 夜間に使用可能な定数配置薬の品目
  • 薬剤保管庫の管理責任者とアクセス権限
  • 医師が新規処方した際の払い出し手順
  • 医師本人が薬剤確認を行うべき場面
  • 看護師が準備できる範囲
  • ダブルチェックの方法
  • 使用薬剤・数量の記録
  • 翌朝の薬剤部への報告と補充
  • 麻薬、向精神薬、毒薬・劇薬、ハイリスク薬の別ルール
  • 疑義が生じた場合のオンコール薬剤師への連絡方法

厚生労働省が「薬剤師不在時の医薬品払い出しへの医師の関与など」を手順書の項目として挙げているのも、個々のスタッフのその場判断ではなく、病院として安全な仕組みを構築することが重要だからです。

具体例:深夜に新規の内服解熱薬を処方した場合

例えば深夜2時、入院患者に発熱があり、診察した医師がアセトアミノフェン錠を新規に指示したとします。病棟には薬剤部が管理・補充している未開封の定数配置薬があります。

医師の患者別指示が電子カルテに明確に記録され、院内の夜間手順に基づいて看護師が指定された薬剤・規格・錠数を確認し、その患者へ直ちに投与する運用であれば、「薬剤師がその場で手渡していない」という一点だけで直ちに違法と評価することは困難です。

ただし、看護師が処方の内容を自分で変更したり、別規格から換算する判断を独自に行ったり、複数患者分を自由に分包したりするのであれば、別の法的・安全管理上の問題が生じます。

具体例:深夜に新規抗菌薬が必要になった場合

例えば肺炎患者が悪化し、当直医が診察して直ちに抗菌薬の開始が必要と判断した場合を考えます。これは病状の変化への即応や応急的な治療という性格が強いケースです。

薬剤師当直がいない病院であれば、院内手順に従い、あらかじめ病棟等に安全に配置された薬剤を使用する運用が考えられます。ここで重要なのは、医師が薬剤名・用量・経路・投与時刻などを明確に指示し、アレルギー、腎機能、重複投与などを確認することです。

注射薬の調製については、その製剤の特性や院内基準によって看護師が行える範囲が異なり得るため、個別の病院手順を確認する必要があります。特に高リスク薬では一般的な抗菌薬と同じ運用をそのまま当てはめないほうが安全です。

頓用指示がある場合と新規処方では意味が違う

すでに医師から「38.5℃以上でアセトアミノフェン○mg」など条件付きの頓用指示が出ており、患者用として調剤済みの薬剤が病棟にある場合は、看護師は条件を確認して既存指示に基づき投与できます。

これに対して、頓用指示のない新しい薬剤が突然必要となった場合は、新たな医師の診察・判断・処方または具体的な指示が必要です。看護師が「いつもこの場合はこの抗菌薬だから」と独自判断で使用することはできません。

つまり夜間問題の本質は薬剤師の在否だけではなく、処方権を持つ医師による新規判断が明確に存在するかという点にもあります。

「オーダーして後は全部看護師に任せる」は内容次第

医師がオーダーした後、看護師が患者確認、薬剤確認、投与準備、実際の投与、投与後観察を行うこと自体は通常のチーム医療の範囲に含まれます。

一方、「あとは全部任せる」の中に、薬剤選択、処方内容の補完、用量換算、散剤の秤量、複数薬剤の患者別調剤など、本来医師や薬剤師が行うべき判断・調剤が含まれているのであれば問題です。

したがって法的評価では、「医師がオーダーしたか」だけではなく、その後に看護師が具体的に何をしているのかを工程ごとに確認する必要があります。

監査・立入検査では何を見られる?

病院には医療法25条に基づく立入検査があり、人員配置、医療安全管理、医薬品の安全管理などが確認されます。医薬品については、医薬品安全管理責任者、業務手順書、職員研修、医薬品の安全使用に必要な情報収集などの体制も重要になります。

そのため、夜間に薬剤師がいないこと自体だけではなく、「その時間帯に新規薬が必要になった場合、誰がどの手順で薬を出し、誰が確認し、どこへ記録するのか」という管理体制が問われます。

事故が起こってから「実際には看護師ごとにやり方が違った」「手順書には薬剤師が行うと書いてあるのに毎晩看護師だけで行っていた」と判明すれば、医療安全管理上の問題としてより重大になります。

実際に薬剤師不在の夜間業務が医療事故につながった例はある

厚生労働省が公開する医療安全関係資料には、夜間・休日に薬剤師が不在で、看護師がやむを得ず薬剤関係業務を実施している中で発生したインシデントが取り上げられています。

その分析では、薬剤師不在時に病棟で対応せざるを得ない場合について、病院管理者が夜間・休日の安全管理体制を見直す必要性や、休日の処方変更が翌営業日に確実に病棟・薬局へ伝達される仕組みの重要性が指摘されています。[参照:厚生労働省 重要事例情報-分析集]

これは「看護師が薬を扱ったため直ちに刑事処罰された」という資料ではなく、薬剤師不在時の現実的な運用そのものを前提として、事故防止の体制整備を求めている点が重要です。

薬剤師法19条違反には罰則もある

薬剤師法19条は単なる努力義務ではありません。違反した場合には薬剤師法上の罰則規定があります。そのため、「病院では昔からやっているから問題ない」と慣行だけで判断するのは危険です。

一方で、公開されている全国統一の行政資料から、「一般病院で夜間、医師の具体的指示に基づいて看護師が定数配置薬を取り出した」という条件だけで刑事処罰や病院への処分が行われた事例を一般化することもできません。

厚生労働省が明確に違反行為として示している代表例は、薬剤師以外の者による軟膏・水剤・散剤等の直接の計量・混合などです。個別施設の夜間運用が薬剤師法違反に該当するかは、実際の工程を確認しなければ判断できません。

離島診療所の特例通知からも分かる「取り揃え」と「責任」の考え方

通常の病院と同一条件ではありませんが、参考になるのが厚生労働省の「離島等の診療所における医師及び薬剤師不在時の医薬品提供の考え方」です。

この通知では、やむを得ず医師・薬剤師が不在となる診療所において、医師または薬剤師が看護師・准看護師へ、PTP包装等のままの医薬品の必要量を取り揃えるよう伝え、映像・音声で取り揃え状況や処方内容との一致を確認したうえで患者へ渡すことを一定条件下で認めています。[参照:厚生労働省 離島等の診療所における医師及び薬剤師不在時の医薬品提供の考え方]

これは離島等に限定された特別な整理なので、一般病院へそのまま適用できる通知ではありません。しかし、法令上の問題が単純に「看護師が棚から薬を取ったかどうか」だけで決まるものではなく、医師・薬剤師の指示、確認、責任、包装状態、管理体制、手順書などを組み合わせて考えていることは参考になります。

勤務医が自院の運用を確認するときのポイント

自分の勤務先で「これは法的に大丈夫なのか」と疑問を感じた場合、最も確実なのは薬剤部長、医薬品安全管理責任者、医療安全管理部門、病院管理者などに院内規程を確認することです。

具体的には次の点を質問すると整理しやすくなります。

  • 薬剤師不在時間帯は何時から何時までか
  • 夜間新規処方の薬剤はどこから払い出すのか
  • 病棟定数薬と薬剤部保管薬の区別
  • 薬剤部への入室権限を誰が持つか
  • 医師が直接確認・払い出しする必要がある薬剤
  • 看護師が行える準備作業の範囲
  • 注射薬の溶解・混注に関する院内基準
  • 麻薬・向精神薬等の時間外管理
  • 使用後の記録・補充・翌朝監査の仕組み
  • オンコール薬剤師への問い合わせ基準

病院ごとの手順書が厚生労働省の安全管理指針と整合しているかを確認すれば、「昔からこうしている」という慣行だけに依存せず運用を評価できます。

法的により安全な夜間運用とは

薬剤師当直を配置できない病院では、緊急薬をすべて使えなくすることも現実的ではありません。必要な患者へ必要な治療を遅らせないことも医療安全だからです。

そのため現実的には、夜間に使用する可能性の高い薬剤を必要最小限の定数薬として適切に管理し、医師の明確な患者別指示、看護師による確認、ダブルチェック、使用記録、翌朝の薬剤師による確認・補充などを組み合わせる方式が考えられます。

さらにハイリスク薬についてはオンコール薬剤師への連絡や医師自身の確認を必須にするなど、薬剤の危険度に応じて手順を分けることが望ましいでしょう。

まとめ:薬剤師不在時は「医師だけが薬を取れば合法」と単純には整理できない

薬剤師法19条により、調剤は原則として薬剤師が行う業務です。ただし一定の場合には、医師が自己の処方に基づいて自ら調剤できる例外があります。深夜の急変患者などでは、医師法22条に定める病状変化への即応や応急措置に該当し得るケースがあります。[参照:厚生労働省 薬剤師法]

一方、看護師には保健師助産師看護師法37条に基づき、医師の指示の下で医薬品を授与し、診療を補助する権限があります。そのため、医師が患者別の具体的な指示を出し、適切に管理された病棟・救急外来の定数配置薬を看護師が準備して患者へ投与する行為を、「看護師が薬を取った」という一点だけで直ちに無資格調剤と断定することはできません。[参照:厚生労働省 保健師助産師看護師法]

ただし、看護師が独立して薬剤を選択したり、処方内容を変更したり、薬剤師の代わりとして患者ごとの計量・混合・分包などを行ったりすることまで当然に認められるわけではありません。厚生労働省は、薬剤師以外による軟膏・水剤・散剤等の直接計量・混合について薬剤師法19条違反となることを明確にしています。[参照:厚生労働省 調剤業務のあり方について]

したがって、夜間薬剤師不在の病院で重要なのは、「医師が全部取りに行くか、看護師が取りに行くか」という一点ではなく、処方・調剤・取り揃え・与薬の各工程を分け、医師の関与、看護師の業務範囲、定数配置薬の管理、確認体制、記録、翌朝の薬剤師確認までを院内手順として明確にすることです。

厚生労働省自身も、医薬品安全使用の手順書で「薬剤師不在時の医薬品払い出しへの医師の関与など」を緊急時の供給方法として例示しています。したがって、薬剤師当直のない病院で夜間治療を行うこと自体が直ちに違法ということではありませんが、個々の病院の運用が適法・適切かは具体的工程によって変わります。実際の勤務先について判断する場合は、院内の医薬品安全管理責任者・薬剤部・医療安全部門に手順書を確認し、必要であれば病院の顧問弁護士や所管の保健所・都道府県薬務主管課へ正式に照会するのが確実です。

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