インフルエンザの熱を一晩で下げる方法はある?厚着・冷房・冷たい水の正しい考え方と重症化を防ぐための対処法

インフルエンザ

インフルエンザで高熱が出ると、「今夜のうちに何とか熱を下げたい」「汗を大量にかけば早く治るのでは」「絶対に重症化させたくない」と不安になることがあります。しかし、インフルエンザの発熱を一晩で確実に終わらせる方法はありません。

厚生労働省によると、インフルエンザでは多くの場合、自然経過の中で4~5日間ほど発熱などの症状がみられ、その後軽快していきます。また、抗インフルエンザウイルス薬を発症から48時間以内の適切な時期に開始すると、発熱期間が通常1~2日短縮されるとされています。[参照:厚生労働省 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A]

重要なのは「厚着して無理に熱を上げること」ではなく、休養、水分補給、快適な室温、必要に応じた医療機関への相談です。冷たい水を飲むこと自体は通常問題ありませんが、一度に大量に飲む必要はなく、少量ずつこまめに補給するほうが安全で実践的です。

インフルエンザの熱を一晩で確実に下げる方法はない

インフルエンザによる発熱は、身体がウイルス感染に反応して起こしている症状です。「汗を大量にかけばウイルスが出ていく」「体温をもっと上げればウイルスを殺せる」という方法で病気を一晩で終わらせることはできません。

発熱の高さは時間によって変化するため、夜に39℃あった熱が朝には37℃台になることはあります。しかし、それだけでインフルエンザが治ったとは判断できません。一度下がった熱が再び上がることもあります。

厚生労働省は、インフルエンザの多くが4~5日程度の発熱等を経て自然軽快すると説明しています。したがって、「明日の朝までに平熱にする」ことだけを目標に身体へ負担をかけるより、脱水を防ぎながら十分に休むことを優先しましょう。[参照:厚生労働省 インフルエンザQ&A]

厚着して汗をかけばインフルエンザは早く治る?

寒気がある間に布団を掛けたり上着を着たりして、本人が快適に感じる程度に温かくするのは構いません。しかし、発熱を高くする目的で上着を何枚も着込み、室温まで高くして大量の汗をかこうとする必要はありません。

発熱中はもともと水分を失いやすくなっています。そこへ厚着や高い室温を組み合わせて大量に発汗すると、脱水を悪化させる可能性があります。体温が上がりきって暑く感じ、汗をかいている段階では、余分な衣類や布団を減らして本人が楽に感じられる状態へ調整します。

「寒気がするから適度に温める」と「治療のため無理に汗を出す」は別です。汗の量を治療効果の目安にする必要はありません。

冷房をつけずに寝たほうがいい?

冷房を必ず切る必要はありません。特に夏場や室温が高い環境では、冷房を使わずに厚着をすると、インフルエンザとは別に暑さや脱水による負担まで加わる可能性があります。

大切なのは、「身体を冷やせばインフルエンザが治る」「反対に部屋を暑くすれば治る」と考えるのではなく、本人が寒すぎず暑すぎず眠れる室温にすることです。冷房を使う場合も、冷風を身体へ直接強く当て続ける必要はありません。

発熱中に強い悪寒があるときは衣類や掛け物で調節し、悪寒がなくなって身体が熱く感じるようになったら過剰な厚着をやめる、というように体感に合わせて調整するとよいでしょう。

冷たい水を飲んでも大丈夫?

常温でない冷たい水を飲んだからインフルエンザが悪化する、という考え方をする必要はありません。冷たい水のほうが飲みやすいのであれば、それを水分補給に利用して構いません。

発熱時に重要なのは水の温度より、脱水にならないよう水分を摂取できていることです。NHSも発熱時には十分な水分を摂取し、尿が薄い黄色から透明に近い状態になる程度を一つの目安としています。[参照:NHS Fever in adults]

ただし、喉が痛くて冷水がしみる人や、冷たい飲み物で胃が不快になる人は、常温や少し温かい飲み物でも問題ありません。「冷たいほうが熱が下がる」という理由で無理に冷水を選ぶ必要はありません。

水を「大量に一気飲み」する必要はない

発熱中は水分補給が大切ですが、「大量に飲めば飲むほどよい」というものではありません。一度に何リットルもの水を無理に飲むのは避けましょう。

短時間に過剰な水だけを摂取すると、まれではありますが血液中のナトリウム濃度が低下するなど、別の問題につながることがあります。また、吐き気がある状態で大量に飲めば嘔吐してしまうこともあります。

発熱時はコップ1杯を無理に一気飲みするより、一口~数口を何度も飲むイメージで補給するほうが続けやすいでしょう。嘔吐や下痢、強い発汗がある場合などには、水だけでなく経口補水液などが適することもあります。

一晩で熱を下げたいなら抗インフルエンザ薬を早めに相談する

インフルエンザに対して医療上検討される治療の一つが、オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、バロキサビルなどの抗インフルエンザウイルス薬です。ただし、どの薬を使用するか、そもそも薬が必要かは年齢、症状、基礎疾患などを踏まえて医師が判断します。

厚生労働省によると、抗インフルエンザウイルス薬を発症から48時間以内に開始すると、発熱期間を通常1~2日短縮できます。一方、発症から48時間以上経過した場合には十分な効果が期待できないことがあります。[参照:厚生労働省 インフルエンザ 検査・治療方法]

したがって、発熱したばかりでインフルエンザが疑われ、「重症化をできるだけ避けたい」という場合は、汗を出す民間療法を試すより、医療機関へ相談する必要性を早めに判断するほうが重要です。

抗インフルエンザ薬を飲めば必ず翌朝平熱になるわけではない

抗インフルエンザ薬には治療効果がありますが、「飲めば数時間以内に必ず熱が下がる」という薬ではありません。

厚生労働省が示しているのは、適切な時期に開始することによって発熱期間が通常1~2日短縮されるという効果です。翌朝まだ38~39℃の熱があるからといって、それだけで薬が効いていないとは判断できません。

処方された場合は、自己判断で回数を増やしたり、途中でやめたりせず、指示された用法・用量・期間を守ることが重要です。

「重症化させたくない」なら熱の数字だけを追わない

重症化を心配すると、「39.5℃より38℃のほうが安全」「解熱剤で平熱になればもう大丈夫」と考えやすいのですが、体温だけで重症度を判断することはできません。

38℃台でも息苦しさや意識障害があれば緊急性がありますし、39℃以上でも会話ができ、水分が摂れ、呼吸状態が安定している場合もあります。

重症化を見逃さないためには、呼吸、意識状態、水分摂取、尿量、胸痛、症状が悪化していないかなどを体温と一緒に見ることが重要です。

インフルエンザ重症化のリスクが高い人

インフルエンザは多くの人が自然に回復しますが、年齢や基礎疾患によって重症化しやすい人がいます。このような場合は、軽症に見えても早めに医療機関へ相談する価値が高くなります。

  • 高齢者
  • 幼い子ども
  • 妊娠中または産後間もない人
  • 慢性的な心臓・肺・腎臓などの病気がある人
  • 糖尿病などの基礎疾患がある人
  • 免疫機能が低下している人
  • 症状が重い、または急速に悪化している人

重症化リスクのある人については、抗インフルエンザ薬を早期に使用する重要性も高くなるため、自己判断だけで一晩様子を見るのではなく医療機関へ相談してください。

熱がつらいときに解熱剤を使ってもいい?

発熱そのものを無理にゼロにする必要はありませんが、高熱による頭痛、関節痛、だるさなどで休めない場合には、適切な解熱鎮痛薬を使用することがあります。

ただし、年齢、持病、妊娠、服用中の薬などによって使える薬は異なります。特に子どもや10代では自己判断で成人向けの薬を流用せず、医師や薬剤師へ確認することが重要です。

市販の総合感冒薬と解熱鎮痛薬を同時に使うと、同じ成分を重複して摂取する場合があります。「熱が高いから」と複数製品を重ねて飲むのは避け、添付文書や薬剤師の説明に従いましょう。

発熱は下げないほうがウイルスを倒せる?

「熱は免疫反応だから、解熱剤を使うとインフルエンザが長引くのでは」と心配することもあります。しかし、つらい症状を和らげて睡眠や水分摂取をしやすくするために解熱鎮痛薬が用いられることはあります。

逆に「高い熱ほどウイルスを倒せる」と考えて、厚着などでさらに体温を上げる必要もありません。身体が作っている発熱と、外部から暑くして体温を上げることは同じではありません。

熱を何度まで下げるかにこだわるより、本人が休息を取れる状態を作ることを優先しましょう。

インフルエンザの夜に実践しやすい過ごし方

重症化を完全に防ぐ方法はありませんが、発熱中の身体へ余計な負担をかけないことは重要です。基本的には次のような過ごし方をします。

  • 睡眠・休養を優先する
  • 喉が渇き切る前にこまめに水分を取る
  • 暑すぎず寒すぎない服装と寝具にする
  • 室温を快適に調整し、必要なら冷暖房を使う
  • 食べられるなら消化しやすい食事を無理のない範囲で取る
  • 飲酒や激しい運動、長風呂を避ける
  • 処方薬がある場合は指示どおり使用する

厚生労働省もインフルエンザ対策として、十分な休養、バランスの取れた栄養摂取、適度な湿度、換気などを挙げています。[参照:厚生労働省 インフルエンザ総合ページ]

具体例:39℃、寒気が強い夜はどうする?

例えば39℃の熱があり、まだ悪寒がして身体がガタガタ震えるような場合は、薄着にして無理に冷やす必要はありません。掛け布団などを使い、自分が楽に感じる程度に温かくします。

その後、悪寒がなくなり身体が熱くて汗ばんできたら、厚手の上着を着たまま我慢する必要はありません。不要な上着を脱ぎ、寝具も調整します。

水分は手元に置き、目が覚めたときなどに少量ずつ取ります。暑い季節で室温まで高い場合には、冷房も使って快適な環境を保ちましょう。

具体例:冷たい水しか飲みたくない場合

高熱で喉が渇いていて、冷蔵庫から出した水のほうが飲みやすいのであれば、通常はそれを少しずつ飲んで構いません。

「身体を冷やしてはいけないから」と嫌いな熱い飲み物を無理に飲む必要はありません。反対に「体温を下げるため」と氷水を何リットルも一気に飲む必要もありません。

冷水で咳が増える、喉が痛い、胃が気持ち悪いと感じる場合には常温へ変更します。水温より、無理なく必要な水分を取れることを優先してください。

具体例:吐き気があって水を飲めない場合

吐き気があるときにコップ1~2杯を一気に飲むと吐いてしまうことがあります。その場合は、一口ずつ数分おきに飲むなど少量頻回へ変更します。

水分を飲むたびに吐く、長時間尿が出ていない、口が非常に乾いている、立つと強くふらつくなどの症状がある場合は、脱水が進んでいる可能性があります。

CDCも、インフルエンザの緊急受診を考える兆候の一つとして脱水や尿が出ない状態を挙げています。[参照:CDC Emergency Warning Signs of Flu Complications]

すぐに医療機関へ相談したい危険な症状

「何度の熱なら危険か」だけではなく、次のような症状がある場合には早めの医療が必要です。

  • 息苦しい、呼吸が速い、呼吸が困難
  • 胸やお腹に持続する強い痛み・圧迫感がある
  • 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
  • けいれんがある
  • 水分がほとんど摂れない
  • 尿が長時間出ていない
  • 非常に強い脱力感やふらつきがある
  • 一度改善した発熱や咳が再び悪化した
  • 持病が明らかに悪化している

CDCも、呼吸困難、持続する胸部・腹部痛、意識状態の異常、けいれん、尿が出ない状態、強い筋肉痛や脱力、いったん改善した症状の再悪化などをインフルエンザ合併症の警告サインとして挙げています。[参照:CDC Flu Emergency Warning Signs]

特に子ども・未成年では様子がおかしければ早めに相談する

子どもや未成年の場合、体温の数字だけではなく、呼吸や意識、けいれん、水分摂取などをよく観察することが重要です。

ぐったりして反応がおかしい、けいれんがある、呼吸が苦しそう、水分をほとんど取れないなどの場合は、「朝まで寝れば治るだろう」と様子を見続けず、救急相談や医療機関を利用してください。

また、未成年が自分だけで市販薬を選ぶより、保護者に体調を伝え、必要に応じて医師・薬剤師へ相談するほうが安全です。

インフルエンザか分からない段階でも注意が必要

高熱、関節痛、頭痛、咳などがあっても、それが必ずインフルエンザとは限りません。新型コロナウイルス感染症など、似た症状を起こす感染症もあります。

そのため、「インフルだからこの方法で治す」と自己診断するのではなく、症状が強い場合や重症化リスクがある場合には診察を受けることが大切です。

特に発症から48時間以内は抗インフルエンザ薬を検討するうえでも重要な時期なので、受診が必要と思われる場合には早めに相談しましょう。

翌朝熱が下がっても無理に外出しない

夜に39℃あった熱が、翌朝37℃台まで下がることがあります。しかし、体温が一時的に下がっただけで感染力や全身状態が完全に回復したとは限りません。

解熱剤を使用している場合、その作用で一時的に熱が下がっているだけのこともあります。学校や仕事へ行くためだけに薬で体温を下げ、無理に活動するのは避けましょう。

十分な回復期間を取り、外出や登校・出勤については年齢や所属先のルール、医師の指示などに従って判断してください。

「絶対に重症化しない方法」はないが、できることはある

残念ながら、インフルエンザを発症してから「これをすれば絶対に重症化しない」という家庭での方法はありません。

ただし、重症化リスクがある人が早めに医療へつながること、適応がある場合に抗インフルエンザ薬を早期に開始すること、脱水を防ぐこと、無理な活動をせず休養すること、危険な症状を見逃さないことは重要です。

また、将来のインフルエンザについてはワクチン接種も重症化予防の重要な手段です。厚生労働省もインフルエンザワクチンについて、発症した場合の重症化防止に有効と報告されているとしています。[参照:厚生労働省 インフルエンザの予防と対策]

まとめ:厚着で熱を上げず、水分を少しずつ取り、発症早期なら受診も検討する

インフルエンザの熱を一晩で確実に下げる家庭療法はありません。厚生労働省によれば、多くの場合は4~5日程度の発熱などを経て自然軽快し、抗インフルエンザ薬を発症48時間以内に適切に開始した場合には発熱期間が通常1~2日短縮されます。[参照:厚生労働省 インフルエンザQ&A]

「治すために上着を着込んで冷房を切り、大量に汗をかく」という方法はおすすめできません。寒気がするときは適度に温まり、暑くなったら衣類や寝具を減らし、夏場など室温が高ければ冷房も利用して快適な環境にします。

冷たい水を飲むこと自体は通常問題ありません。大切なのは温度ではなく水分を摂取できることであり、一気に大量に飲むより少量ずつこまめに取るほうが適しています。水分がまったく取れない、尿が出ない、呼吸が苦しい、胸が痛い、意識がおかしい、けいれんがある、一度良くなったあと急に悪化したなどの症状があれば、夜間でも医療機関や救急相談につながる必要があります。

そして「絶対に重症化させたくない」という場合に最も重要なのは、熱の数字だけを無理やり下げることではありません。十分な休養と水分補給を行い、発症から48時間以内であれば抗インフルエンザ薬が必要か医師へ相談し、重症化のサインを見逃さないことが現実的な対策です。

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