特定の食べ物を口にするたびに、食後しばらくして吐き気が起こったり、実際に嘔吐したりする場合、「蕁麻疹や喉のかゆみがないから食物アレルギーではない」とは言い切れません。食物による体の反応には複数のタイプがあり、消化器症状を中心に現れる食物アレルギーも存在します。
一方、吐き気や嘔吐の原因は食物アレルギーだけではありません。食物不耐症、消化器疾患、食中毒などでも似た症状が起こるため、「特定の食品で毎回起こる」という情報だけで自己診断するのは避ける必要があります。
この記事では、特定の食品を食べた後に吐き気・嘔吐だけが起こる場合に考えられる原因、食物アレルギーとの関係、医療機関へ相談するときに記録しておきたい情報などを整理します。
食物アレルギーでも吐き気や嘔吐は起こる
食物アレルギーとは、食物に含まれるたんぱく質などを体が異物として認識し、免疫反応によって不利益な症状が起こる状態です。消費者庁も食物アレルギーを、食物を摂取した際に身体がアレルゲンを異物として認識し、過剰に防御することで症状を起こすものと説明しています。[参照]
食物アレルギーというと、蕁麻疹、皮膚の赤み、口や喉のかゆみ、咳などをイメージしやすいでしょう。しかし、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が現れることもあります。
したがって、皮膚症状がないという理由だけで食物アレルギーを否定することはできません。症状が繰り返されている場合には、いつ、何を、どれくらい食べ、何分・何時間後にどのような症状が出たのかが重要な判断材料になります。
蕁麻疹がなく嘔吐が中心になる食物アレルギーもある
食物アレルギーには、一般によく知られている即時型とは異なる仕組みで症状が起こるものがあります。その一つとして知られているのが、食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES:Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome)です。
アレルギーポータルに掲載されている資料では、FPIESでは原因となる食品を食べてから約1~4時間後に繰り返し嘔吐することがあり、24時間以内に下痢を呈する場合があると説明されています。また、即時型食物アレルギーとは異なり、通常は蕁麻疹などの皮膚症状や呼吸器症状を伴わないことも特徴です。[参照]
つまり、「食後1時間以上してから吐き気や嘔吐が起こる」「蕁麻疹や喉のかゆみはない」という経過でも、アレルギーに関連した反応が候補から完全に外れるわけではありません。ただし、症状だけを見てFPIESなどと断定することもできません。
毎回同じ食べ物で症状が出ることは重要な情報
診断を考えるうえで重要なのは、症状そのものだけではなく、原因と疑われる食品と症状の間に再現性があるかどうかです。
例えば「食品Aを食べた3回すべてで1~2時間後に嘔吐したが、食品Aを食べない日は症状がない」という経過と、「さまざまな食品を食べた後に不規則に吐き気が出る」という経過では、医師が検討する原因も変わってきます。
特定の食品で何度も同じ症状を繰り返している場合は、食品名だけでなく原材料にも注目してください。加工食品の場合、本人が疑っている食品そのものではなく、毎回共通して含まれている別の原材料が関係している可能性もあります。
通常のアレルギー検査だけでは分からない場合もある
食物アレルギーの検査として、血液中の特異的IgEを調べる検査や皮膚テストを聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、食物による反応には異なる仕組みがあるため、すべてを一般的なIgE検査だけで判断できるわけではありません。
例えば前述したFPIESについて、アレルギーポータルの資料では、通常の特異的IgE検査や皮膚テストでは原因食品を特定できないと説明されています。[参照]
そのため「血液検査が陰性だったから絶対に食物による反応ではない」と自己判断するのも適切ではありません。症状の経過を含め、医師による総合的な評価が必要です。
食物アレルギー以外でも吐き気や嘔吐は起こる
特定の食品を食べた後に症状が出るからといって、原因が必ず免疫反応による食物アレルギーとは限りません。
例えば、特定成分をうまく消化・吸収できない食物不耐症では、腹痛、膨満感、下痢、吐き気などが起こる場合があります。また、胃腸そのものの疾患や食品の状態など、別の原因によって食後に症状が現れることもあります。
魚類などではヒスタミン食中毒のように、食物アレルギーではないにもかかわらずアレルギーに似た症状を起こすものも知られています。消費者庁は、ヒスタミン食中毒では魚やその加工品などを原因として症状が起こり得ることを案内しています。[参照]
症状を確認するために自宅で食べ直すのは避ける
「本当にその食品が原因なのか確かめたい」と考え、もう一度食べて反応を見ることはおすすめできません。過去に軽い症状だったからといって、次回も同程度で済むとは限らないためです。
医療機関では必要性やリスクを評価したうえで、医師の管理下で食物経口負荷試験が行われることがあります。これは自宅で原因食品を食べて試すこととは全く異なります。
特定の食品を食べるたびに嘔吐するなど明確な再現性がある場合は、自分で再チャレンジするより、いったんその食品を避けて医療機関へ相談するほうが安全です。
受診するときは食事と症状を記録しておく
医療機関へ相談するときには、「○○を食べると気持ち悪くなる」という情報だけでなく、具体的な経過を記録しておくと診察の参考になります。
| 記録する項目 | 具体例 |
|---|---|
| 食べた食品 | 食品名、商品名、料理名、原材料 |
| 食べた量 | 一口、半分、1人前など |
| 食べた時刻 | 12時30分など |
| 発症までの時間 | 約30分後、約2時間後など |
| 症状 | 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、蕁麻疹など |
| 症状の持続時間 | 30分、3時間など |
| 同じ食品での過去の症状 | 今回で3回目など |
| 一緒に食べたもの | 飲料、調味料、ほかの料理など |
加工食品なら、パッケージや原材料表示を写真に残しておくのも有用です。複数回の記録を比較すると、共通する原材料が見つかる場合があります。
何科を受診すればよい?
食物アレルギーが疑われる場合は、アレルギー科など、食物アレルギーを診療している医療機関への相談が選択肢になります。吐き気や嘔吐など消化器症状が中心の場合は、まず内科・消化器内科などで相談し、必要に応じて専門医につないでもらう方法もあります。
子どもの場合は小児科が基本的な相談先になります。受診先を探す際には、医療機関のウェブサイトなどで「食物アレルギー」「消化管アレルギー」への対応状況を確認するとよいでしょう。
受診時には、症状が現在治まっていても「何を食べたか」「食後何時間で吐いたか」「過去にも同じことが何回あったか」を伝えることが重要です。
繰り返す嘔吐やぐったりする場合は早めの医療相談を
食後に一度軽い吐き気があった場合と、短時間に何度も嘔吐して水分も取れない場合とでは緊急性が異なります。
繰り返す嘔吐に加えて、ぐったりする、顔色が明らかに悪い、意識状態がおかしい、水分が取れないなどの状態がある場合は、様子を見続けず医療機関への相談が必要です。呼吸困難、喉の締め付け感、意識障害など急激で重い症状がある場合には救急対応が必要になることがあります。
また、症状が治まったとしても、特定の食品を食べるたびに繰り返しているなら、一度医療機関で原因を評価してもらう価値があります。
食品表示も確認する習慣をつける
原因食品が疑われる段階では、加工食品の原材料表示を確認することも重要です。消費者庁では食物アレルギー表示に関する情報を公開しており、容器包装された加工食品では対象となるアレルゲンについて表示制度が設けられています。[参照]
ただし、自己判断で多数の食品を長期間除去すると、食生活が不必要に制限される可能性があります。特に子どもでは栄養面への影響も考慮する必要があります。
原因食品の除去をどの程度続けるべきかについても、繰り返し症状がある場合は医師へ相談すると安心です。
まとめ:蕁麻疹がなくても食物アレルギーの可能性は否定できない
食物アレルギーでは蕁麻疹や喉のかゆみだけでなく、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など消化器症状が現れることがあります。さらに、FPIESのように食後1~4時間程度して嘔吐し、典型的な皮膚症状や呼吸器症状を伴わないタイプも知られています。
一方で、食物不耐症や消化器疾患など別の原因でも似た症状は起こるため、「嘔吐だけだからアレルギー」「蕁麻疹がないからアレルギーではない」のどちらも自己判断はできません。
特定の食べ物を摂取するたびに同じ症状が繰り返される場合は、原因確認のために自宅で食べ直すのではなく、食品名・摂取量・発症までの時間・症状などを記録し、アレルギー科、内科、消化器内科、小児科など適切な医療機関へ相談することが大切です。

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