片耳だけから「カクッ」「パチッ」「コツッ」といった音が聞こえ、それが数秒から数十秒おきに繰り返されると、イヤホンの使いすぎなのか、耳鳴りなのか、それとも耳の病気なのか不安になるものです。こうした音は一般的な「キーン」という耳鳴りとは少し印象が異なりますが、音の感じ方だけで原因を特定することはできません。
耳の中の圧力変化や筋肉の動き、耳垢、中耳・内耳のトラブルなど、耳から音を感じる原因には複数の可能性があります。特に片耳だけに新しく症状が現れた場合は、自己判断で長期間様子を見るより、症状の経過を記録したうえで耳鼻咽喉科に相談するのが安心です。
片耳から周期的に音が聞こえるのは「耳鳴り」の可能性もある
耳鳴りというと「キーン」「ピー」「ジー」といった持続的な高い音を想像しがちですが、実際の聞こえ方には個人差があります。断続的に聞こえたり、低い音やクリック音のように感じたりすることもあり、音の表現だけから「耳鳴りではない」と判断することはできません。
厚生労働省の資料でも、耳鳴りの多くは何らかの耳の疾患に伴って生じることがあり、急に耳鳴りが発生した場合には耳鼻咽喉科で耳の診察や聴力評価を受けることが重要とされています。特に急な難聴を伴う場合には早期治療が重要な疾患もあります。
「カクッ」「パチッ」という音で考えられる主な原因
断続的な音にはさまざまな原因が考えられるため、音だけで診断することはできません。代表的には、耳と鼻の奥をつなぐ耳管による圧力調整、耳垢、中耳の状態などが関係している可能性があります。また、まれに中耳周辺の小さな筋肉の収縮などによってクリックするような音を感じるケースもあります。
例えば、飛行機やエレベーターに乗ったとき、あくびや飲み込みをしたときに耳の中で「パキッ」と鳴ることがあります。これは耳の圧力が変化するときにも起こり得る現象です。一方、特にきっかけがないのに片耳だけで一定間隔の音が何日も続く場合は、同じ仕組みとは限りません。
また、「自分にだけ聞こえる音」なのか、「実際に耳の周辺で発生している音」なのかによっても原因の候補は変わります。耳鼻咽喉科では耳の内部を診察するだけでなく、必要に応じて聴力検査などを行い、原因を絞り込んでいきます。
片耳の症状で特に注意したい「聞こえ方の変化」
新しく片耳の違和感が出たときに確認したいのが、左右で聞こえ方に差がないかという点です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、片耳の難聴、急に起こった難聴、耳鳴りやめまいを伴う難聴などでは、治療可能な耳の病気が隠れている可能性があるため、早めの耳鼻咽喉科受診を勧めています。
特に注意したいのが突発性難聴です。突発性難聴では突然片耳が聞こえにくくなるほか、耳鳴りや耳が詰まった感じ、めまいなどを伴うことがあります。軽い難聴では本人が「聞こえにくい」と自覚せず、耳鳴りなど別の違和感から気付くケースもあります。
「電話を左右それぞれの耳で聞くと片方だけ小さく感じる」「片耳だけこもる」「テレビの音が左右で違って感じる」などがあれば重要な情報です。ただし、自宅での確認だけで正常と判断せず、急な変化がある場合は聴力検査を受けることが大切です。
突発性難聴が疑われる症状は早めの受診が重要
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、突発性難聴は突然左右どちらか一方の耳の聞こえが悪くなる病気で、耳鳴り、耳が詰まった感じ、めまい、吐き気などを伴うことがあります。発症後、早い段階で治療を開始することが重要とされています。
片耳が急に聞こえにくい、耳が詰まった感じがする、急な耳鳴りが出た、めまいを伴うといった症状がある場合は、何日も様子を見続けず早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。
さらに、耳の症状とともに、ろれつが回らない、顔の感覚がおかしい、飲み込みにくい、手足の動かしにくさなどの神経症状が突然現れた場合には、耳だけの問題ではない可能性もあります。その場合は緊急性を考えて速やかに医療機関へ相談してください。
イヤホンを休めれば治るとは限らない
耳に違和感が出たとき、イヤホンの使用をいったん控えること自体は耳への追加の音響負担を減らすという意味で合理的です。しかし、イヤホンを使わなければ原因そのものが治るとは限りません。症状の原因が耳垢、中耳の異常、突発性難聴などであれば、それぞれ必要な対応が異なります。
一方、大きな音量でイヤホンやヘッドホンを長時間使用する習慣がある場合には、ヘッドホン難聴にも注意が必要です。厚生労働省では、ヘッドホン難聴は徐々に進行するため初期には自覚しにくく、耳鳴りや耳が詰まった感じを伴うことがあると説明しています。
厚生労働省 e-ヘルスネット「ヘッドホン難聴について」[参照]
再びイヤホンを使用するときも、いきなり以前と同じ音量・時間に戻すのではなく、音量を控えめにして連続使用を避けることが基本です。症状が続いている間は、イヤホンを再開する前に耳鼻咽喉科で相談するとより安心です。
受診前に記録しておくと役立つポイント
周期的な耳の音は診察中に必ず再現されるとは限りません。そのため、「いつから」「どちらの耳で」「何秒くらいの間隔で」「どんな音がするか」を記録しておくと、医師へ状況を伝えやすくなります。
- 症状が始まった日時
- 右耳・左耳のどちらか
- カクッ、パチッ、コツッ、ドクドクなど音の特徴
- 10秒、20秒、30秒など、おおよその間隔
- 一日中続くのか、特定の時間だけなのか
- 脈拍と音のタイミングが一致するか
- 耳の詰まり、痛み、聞こえにくさの有無
- めまい、吐き気などの有無
- 最近のイヤホン使用時間とおおよその音量
- ライブや工事音など大きな音を聞いた経験の有無
例えば「左耳で15~20秒ごとに一度カクッと鳴り、静かな部屋でも聞こえる。痛みやめまいはない」といった形で整理しておくと具体的です。脈と同期しているように感じる場合も、その情報を医師へ伝えましょう。
自分で耳の中を掃除して原因を探すのは避ける
耳垢が原因かもしれないと考えて、綿棒や耳かきを奥まで入れるのはおすすめできません。耳の中を傷つけたり、耳垢をさらに奥へ押し込んだりする可能性があるためです。
また、市販薬を原因が分からない状態で使用するよりも、症状が継続する場合は耳鼻咽喉科で鼓膜や外耳道を確認してもらう方が確実です。聴力に問題がないように感じても、検査によって特定の周波数だけ聴力が低下していることが分かる場合があります。
「痛くないから大丈夫」「イヤホンを休んだから様子を見ればよい」と一律には判断できません。特に片耳だけに新しく現れた症状では、原因を確認することに意味があります。
まとめ:片耳の周期的な音が続くなら耳鼻咽喉科で確認を
片耳から10~30秒程度の間隔で「カクッ」「パチッ」と音がする場合、耳鳴りを含め、耳の圧力調整、中耳周辺の状態など複数の原因が考えられます。音の特徴だけから原因や安全性を断定することはできません。
イヤホンを一時的に休むことは耳への負担を減らすうえでは有用ですが、症状が続いている場合は「イヤホンをやめているから大丈夫」と判断せず、耳鼻咽喉科で耳の診察と必要に応じた聴力検査を受けることが大切です。
とくに突然の聞こえにくさ、耳の詰まり、急な耳鳴り、めまいなどを伴う場合は早めに受診してください。耳の症状には時間が治療結果に影響する病気もあるため、「放っておいてよい症状か」を自己判断するより、専門医に確認してもらうのが安全です。


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