生理前から生理中、さらに生理後にかけて強い吐き気が続き、食事が十分に取れなくなることがあります。月経周期に合わせて毎回症状が起こる場合は、PMS(月経前症候群)や月経困難症など月経に関連した症状が考えられますが、吐き気だけで原因を決めることはできません。
特に、症状が出るたびに食べられず短期間で2〜3kg体重が減るほどの吐き気がある場合は、「生理だから仕方ない」と我慢せず、婦人科・産婦人科で相談したい程度の症状です。体重減少の一部が水分量の変化だったとしても、嘔吐や食事・水分摂取の低下があれば脱水や栄養不足にも注意が必要です。
低用量ピル・LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)によって月経関連症状が軽くなる人はいます。ただし、吐き気の原因や体質によって適した治療は異なり、ピル自体で吐き気が起こる場合もあります。まず症状と月経周期との関係を整理し、ほかの病気が隠れていないか確認することが大切です。
生理前・生理中の吐き気はなぜ起こる?
月経前に繰り返す不調として代表的なのがPMSです。日本産科婦人科学会は、PMSについて月経前3〜10日程度続く心身の症状で、月経が始まると軽快・消失するものと説明しています。女性ホルモンの変動などが関係すると考えられています。日本産科婦人科学会・月経前症候群(PMS)[参照]
一方、生理が始まってからの強い不調では月経困難症も考えられます。月経困難症は下腹部痛や腰痛だけを指すものではなく、吐き気などの全身症状を伴うことがあります。
さらに、子宮内膜症や子宮腺筋症などが月経関連症状の背景にある場合もあります。したがって「毎月生理に合わせて吐き気がある」という情報だけでPMSと自己判断せず、症状が強い場合は婦人科で原因を確認することが重要です。
生理後まで吐き気が続くならPMSだけとは限らない
PMSは一般に月経前に症状が現れ、月経開始とともに軽快・消失していくことが特徴です。そのため、月経が終わった後まで強い吐き気が続く場合は、典型的なPMSだけでは説明できない可能性があります。
月経困難症のほか、貧血、片頭痛、胃腸の病気、薬の副作用、妊娠の可能性がある状況では妊娠に関連する吐き気など、月経とは別の原因も考慮する必要があります。たまたま月経時期と重なっているケースもあるためです。
例えば「生理3日前から吐き気が始まり、生理2日目が最もひどく、生理終了からさらに3日程度続く」という場合は、その具体的な経過を医師へ伝えると診断の手掛かりになります。
短期間で2〜3kg痩せるほどなら婦人科で相談したい
月経前後はむくみや水分量が変化するため、体重が多少上下すること自体はあります。しかし、吐き気で食事ができず、その期間だけ毎回2〜3kg減少するのであれば、単純な体重変動として済ませないほうがよいでしょう。
重要なのは体重の数字だけではなく、何日間食べられないのか、水分は飲めるのか、実際に嘔吐しているのか、日常生活がどの程度できなくなるのかという点です。
例えば「毎月3〜5日ほとんど食事が取れない」「学校や仕事を休む」「水を飲んでも吐いてしまう」といった状態なら、次の生理まで様子を見るより医療機関へ相談することをおすすめします。
ピルで吐き気が楽になる可能性はある
月経周期に伴うホルモン変動が症状に関係している場合、低用量ピルなどによって症状が改善する可能性があります。日本産科婦人科学会はPMSの薬物療法の一つとして、低用量ピルによって排卵を抑え、女性ホルモンの変動を小さくすることでPMS症状の軽快が期待できると説明しています。日本産科婦人科学会・PMSの治療[参照]
また、日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」では、機能性月経困難症に対し、鎮痛薬で十分な効果が得られない場合の治療として低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)などが挙げられています。日本産科婦人科学会・産婦人科診療ガイドライン[参照]
つまり、月経関連の症状として吐き気が起きているのであれば、ホルモン治療によって症状全体が軽くなる可能性はあります。ただし「吐き気がある人ならピルを飲めば必ず治る」という意味ではありません。
ピル自体で吐き気が出ることもある
低用量ピル・LEPには副作用があり、服用開始時などに吐き気を感じる人もいます。そのため、もともと吐き気が強い場合はその点も含めて医師へ伝えることが大切です。
また、エストロゲンを含む薬では血栓症など重要な副作用についても考慮する必要があります。年齢、喫煙、肥満、片頭痛の種類、血栓症の既往・家族歴、ほかの病気や服用薬などによって使用できる薬が異なることがあります。
「生理の吐き気がつらいから、とりあえずピル」というより、症状の原因を確認したうえで、その人に適した治療法としてピル・LEPを検討するという考え方が安全です。
受診前に症状日誌をつけると原因を探りやすい
月経に関連した症状を診察してもらうときは、症状が出た日を記録しておくと役立ちます。日本産科婦人科学会もPMSについて、日々の症状を記録し、月経周期との関連を確認することが大切だとしています。日本産科婦人科学会・PMSの診断[参照]
難しい記録表を作る必要はありません。スマートフォンのメモや生理管理アプリなどへ、次のような内容を残しておくだけでも参考になります。
- 生理開始日・終了日
- 吐き気が始まった日・治まった日
- 吐いた回数
- 食事をどの程度取れたか
- 水分を飲めているか
- 毎日の体重
- 腹痛・頭痛・下痢・めまいなどの症状
- 使用した薬と効果
- 学校・仕事・家事を休むほどだったか
これを2〜3周期程度記録できれば周期性を把握しやすくなりますが、症状が強い場合は記録がそろうまで受診を待つ必要はありません。現在分かっている範囲だけでも相談できます。
婦人科ではピル以外の治療が選ばれることもある
月経に伴う症状の治療はピルだけではありません。月経困難症であれば鎮痛薬、LEP、プロゲスチン製剤など、原因や症状に応じた複数の治療方法があります。
例えば子宮内膜症が背景にある場合には、その治療も含めて検討します。日本産科婦人科学会によると、子宮内膜症は20〜30代で発症することが多く、月経痛などさまざまな痛みや不妊の原因になることがあります。日本産科婦人科学会・子宮内膜症[参照]
そのため診察では、「ピルを処方してほしい」と治療法を一つに限定するより、「生理前から生理後に強い吐き気があり、毎回体重が2〜3kg減る」と症状をそのまま伝えるほうが適切な治療につながりやすくなります。
すぐに医療機関へ相談したい症状
吐き気が強くても水分や食事がある程度取れていて落ち着いているなら、婦人科の通常診療で相談できることが多いでしょう。一方、脱水や別の急性疾患が疑われる状態では、月経が終わるまで待たずに受診が必要です。
特に次のような状態では早めの医療相談を検討してください。
- 水分を飲んでも繰り返し吐いてしまう
- 尿が極端に少ない、強い口渇やふらつきがある
- 意識がぼんやりする、失神する
- 突然の激しい腹痛がある
- 大量の出血があり、強いめまい・息切れなどを伴う
- 吐血や黒い便などがある
- 妊娠の可能性があり、強い腹痛や出血を伴う
症状が非常に強く、自力での移動が難しい、意識状態がおかしいなど緊急性が高い場合は救急要請も選択肢になります。
まとめ:ピルで改善する可能性はあるが、2〜3kg痩せるほどなら原因確認を
生理前から生理中にかけての吐き気はPMSや月経困難症などに伴って起こることがあります。低用量ピル・LEPで排卵やホルモン変動を抑えることで、月経関連症状が軽くなる人もいるため、治療の選択肢になる可能性はあります。
ただし、生理後まで強い吐き気が続く場合は典型的なPMSだけとは限りません。また、吐き気によって毎周期2〜3kg痩せるほど食事が取れないのであれば、一度婦人科・産婦人科で相談する価値が十分にあります。
受診時には「生理前の何日前から始まり、生理後の何日目まで続くか」「食事・水分がどの程度取れるか」「何kg変化するか」「腹痛・頭痛・下痢などを伴うか」を伝えると原因を検討しやすくなります。ピルが適しているかも含め、原因と体質に合わせて治療方法を選んでもらうことが大切です。


コメント