テレビ番組で障害のある人が紹介される際、「身体障害は取り上げられるのに、発達障害はあまり出てこない」と感じることがあります。特に大型チャリティー番組などを見て、発達障害が扱われていないように感じると、その理由が気になるかもしれません。
ただし、ある放送回で発達障害が明示的に取り上げられていなかったとしても、そこから「発達障害は存在しない」「発達障害の人は他責思考だからテレビに出せない」と結論づける根拠にはなりません。番組出演者の診断歴は本人が公表しない限り分かりませんし、番組で何を取り上げるかは企画や取材対象によって変わるからです。
発達障害は医学的に認められている状態であり、「他責思考」は発達障害全体を定義する特徴でもありません。テレビへの登場頻度と医学的な存在の有無は分けて考える必要があります。
発達障害は「存在しない障害」ではない
発達障害は単なる性格やインターネット上の呼び名ではありません。日本の発達障害者支援法では、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などが定義されています。現在の医療では、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症などの診断名が用いられます。e-Gov 発達障害者支援法[参照]
国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターでも、発達障害の特性や支援について公的な情報が提供されています。発達障害情報・支援センター[参照]
したがって、テレビ番組で目立って取り上げられていないことを根拠に「実在しない」と考えることはできません。テレビ番組は医学的な有病率をそのまま再現するものではないためです。
「発達障害の人は他責思考」は医学的な定義ではない
発達障害についてインターネット上では、「空気が読めない」「わがまま」「他責思考」といった言葉で一括りにされることがあります。しかし、こうした性格評価を発達障害そのものの定義とすることはできません。
例えばASDでは社会的コミュニケーションや対人関係、限定された反復的な行動・興味などに関する特徴がみられます。ADHDでは不注意、多動性、衝動性などが中心的な特徴です。本人が物事の責任を自分と他人のどちらに求めるかという「他責思考」は、これらの診断を決める共通項ではありません。
同じ診断名でも性格、得意不得意、生活上の困りごと、必要な支援は人によって大きく異なります。発達障害という診断だけから、その人の人格や責任感を推測することはできません。
テレビでは発達障害が「見えにくい」理由がある
発達障害の特徴は、車いすや義足などのように映像を見ただけで分かるものとは限りません。会話している短時間の映像では特性がほとんど分からない人もいます。
例えばADHDの人が「予定管理が非常に難しい」「忘れ物によって仕事で何度も困っている」としても、数分間のインタビュー映像では普通に会話しているように見えることがあります。ASDでも、日常生活で感覚過敏や急な予定変更などに大きな負担を感じていても、その場面を映さなければ視聴者には分かりません。
さらに、発達障害の診断は健康・医療に関するプライベートな情報です。出演者が診断を受けていたとしても、番組内でそれを公表する義務はありません。そのため、「発達障害と紹介された出演者が見当たらない」と「発達障害の出演者がいない」は同じ意味ではありません。
番組で扱われない理由を外部から断定することはできない
特定の番組で発達障害が目立って取り上げられない理由について、番組側から明確な説明がない限り、「映像映えしないから」「他責的だから」「スポンサーが嫌がるから」などと外部から断定することはできません。
テレビ番組には放送時間があり、毎年すべての障害・疾患・社会課題を同じ割合で取り上げることはできません。出演者本人の同意、取材可能性、企画テーマ、放送上の構成など複数の事情によって取り上げる対象は変わります。
また、「24時間テレビ」で過去を含め発達障害に関連する人物や企画が一切登場したことがない、と確認せずに言い切ることにも注意が必要です。ある年の放送や一部の企画を見ただけでは、番組全体の長年の取り扱いを判断できません。
発達障害はテレビで説明すること自体が難しい面もある
発達障害は「できる・できない」が単純に二分されるとは限りません。同じ人でも環境によって困難の程度が変化することがあります。静かな場所なら集中できても騒音の多い場所では難しい、予定が決まっていれば行動できても突然変更されると混乱しやすい、といった違いが生じることがあります。
そのため数分のVTRで分かりやすい物語にしようとすると、複雑な特性を「天才的な才能がある人」「コミュニケーションできない人」といった極端なイメージに単純化してしまう危険があります。
発達障害を扱うこと自体が悪いわけではありませんが、本人の尊厳を守りながら、障害特性、環境との関係、合理的配慮などを丁寧に説明することが重要になります。
「見た目で分からない障害」も障害として扱われる
障害という言葉から、歩けない、見えない、聞こえないなど外見から認識しやすい状態だけを想像することがあります。しかし実際には、外見から分かりにくい障害や疾患もあります。
発達障害でも、日常的な会話や短時間の活動は問題なくできる一方、仕事の段取り、対人コミュニケーション、感覚刺激、学習など特定の場面で大きな困難が生じる人がいます。その困難はテレビ画面に映りにくいからといって存在しなくなるわけではありません。
発達障害情報・支援センターでは、本人の特性や困りごとを踏まえた理解・支援についてさまざまな情報を提供しています。発達障害について判断するときは、SNS上の人物評より公的・医学的な情報を確認することが大切です。発達障害情報・支援センター[参照]
まとめ:テレビに出るかどうかと発達障害の存在は別問題
特定のテレビ番組で発達障害が目立って取り上げられていないように見えても、それは発達障害が存在しないことを意味しません。発達障害は法律や医学の領域でも位置付けられており、公的な支援制度や相談機関もあります。
また「発達障害の人は他責思考だからテレビに出せない」という説明にも医学的な根拠はありません。ASD、ADHDなどにはそれぞれ特徴がありますが、責任感や性格を一律に決める診断ではなく、個人差があります。
テレビで発達障害が少なく見える理由としては、特性が映像だけでは分かりにくいこと、診断がプライベートな情報であること、毎回すべての障害を扱えるわけではないことなど、さまざまな事情が考えられます。ただし、番組側が説明していない意図まで推測して断定することは避けるべきです。テレビへの登場頻度ではなく、公的・医学的な情報をもとに発達障害を理解することが重要です。

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