飛行機の着陸前から耳に強い痛みが出て、到着してからも耳が詰まったように聞こえにくい、自分の声がこもって聞こえる、耳抜きをしても改善しない――このような症状では、単なる一時的な耳詰まりだけでなく、急激な気圧変化による航空性中耳炎(耳の圧外傷・気圧外傷)が起きている可能性があります。
特に風邪、鼻づまり、アレルギー性鼻炎などがあると、鼻の奥と中耳をつなぐ「耳管」が開きにくくなります。飛行機が降下すると機内の気圧が上がるため、耳管で圧力を調節できないと鼓膜の内側と外側に気圧差が生じ、強い耳痛や耳閉感、聞こえにくさにつながります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、急激な気圧変化に耳管の働きがついていけず起こるものとして航空性中耳炎を挙げています。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]
多くの耳の圧外傷は時間とともに改善しますが、激痛があったうえに着陸後も明らかな聞こえにくさが残っている場合は、「何日で治るか」を自己判断で待つより、耳鼻咽喉科で鼓膜と聴力を確認してもらうことが重要です。まれではあるものの、鼓膜損傷や内耳の障害でも難聴が起こるためです。
- 飛行機の着陸時に耳が激痛になるのはなぜ?
- 鼻づまりがあると航空性中耳炎になりやすい
- 着陸後に自分の声や人の声が聞こえにくいのはなぜ?
- 何時間・何日くらいで治る?回復期間には個人差がある
- 「耳抜きを何度もすれば治る」とは限らない
- 「ネットに書かれている方法を全部試したのに治らない」ときは?
- 激痛+聞こえにくさが残っているなら耳鼻咽喉科へ
- 特に早く受診したい症状
- 耳鼻咽喉科では何を調べる?
- 治療は症状の程度によって変わる
- 耳の中へ綿棒や器具を入れて治そうとしない
- 次に飛行機へ乗るときの予防方法
- 鼻炎持ちなら搭乗前に耳鼻咽喉科へ相談する方法もある
- 具体例:着陸後に耳が詰まっているが徐々に改善している場合
- 具体例:着陸時に激痛、その後も片耳が明らかに聞こえにくい場合
- 具体例:耳が「ポン」となったあと急に痛みが軽くなった場合
- 「いつ治る?」より「どこが障害されているか」が大切
- まとめ:着陸後も激痛や聞こえにくさが続くなら無理に耳抜きを繰り返さず耳鼻咽喉科へ
飛行機の着陸時に耳が激痛になるのはなぜ?
耳の奥にある中耳は、耳管という細い通路によって鼻・のどの奥とつながっています。通常はあくびをしたり、つばを飲み込んだりすると耳管が開き、中耳と外部の気圧差を調節します。
ところが飛行機が着陸へ向けて高度を下げると、機内の気圧が次第に高くなります。耳管が正常に働けば中耳にも空気が入り圧力を調節できますが、耳管が開かないと中耳側の圧力が相対的に低くなり、鼓膜が内側へ引っ張られる状態になります。
この気圧差が大きくなるほど痛みが強くなり、場合によっては中耳粘膜や鼓膜に出血が起きたり、中耳に液体がたまったり、鼓膜が損傷したりすることがあります。MSDマニュアルでも、耳の圧外傷では重度の疼痛や伝音難聴が生じ、大きな気圧差では中耳内の出血や鼓膜破裂などが起こり得ると解説されています。[参照:MSDマニュアル「耳の圧外傷」]
鼻づまりがあると航空性中耳炎になりやすい
飛行機へ乗る前から鼻が詰まっていた場合は、耳抜きができなかったことと関連している可能性があります。鼻の奥には耳管の入口があるため、風邪やアレルギーなどによって周辺が腫れると耳管が開きにくくなるからです。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、風邪に伴って鼻の奥と耳をつなぐ耳管が腫れ、中耳の空気圧をうまく調節できなくなる「耳管狭窄症」でも耳の詰まり感が起こると説明しています。さらに飛行機のような急激な気圧変化による航空性中耳炎も耳閉感の原因として挙げています。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会]
つまり「普段なら飛行機で耳抜きできるのに、今回は鼻づまりがあって全然できなかった」というケースは不自然ではありません。風邪、花粉症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがある時期には注意が必要です。
着陸後に自分の声や人の声が聞こえにくいのはなぜ?
航空性中耳炎では、耳が水の中に入ったような感じ、膜が張った感じ、自分の声が響く感じ、周囲の音が遠くなったような感じなどが起こることがあります。
中耳に気圧差が残っていたり、鼓膜の動きが悪くなったり、中耳に液体がたまったりすると、音の振動を内耳へ効率よく伝えられなくなるためです。このように外耳・中耳で音がうまく伝わらなくなるタイプの難聴を「伝音難聴」と呼びます。
一方で、「飛行機だから中耳の問題だろう」と決めつけないことも重要です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、耳の詰まり感が中耳だけでなく内耳の病気でも起こり、急性低音障害型感音難聴、メニエール病、突発性難聴などでもみられると説明しています。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]
何時間・何日くらいで治る?回復期間には個人差がある
軽い飛行機耳であれば、着陸後に耳管が開いて気圧差が解消されることで比較的短時間に楽になることがあります。Mayo Clinicも、あくび、嚥下、ガムを噛むといった方法で改善するケースが多い一方、重症では医療が必要になることがあるとしています。[参照:Mayo Clinic「Airplane ear」]
しかし「航空性中耳炎なら必ず○時間で治る」「3日待てば治る」という一律の回復期間はありません。単なる圧力差なのか、中耳に液体や出血が生じているのか、鼓膜が傷ついているのか、内耳まで影響しているのかによって経過が異なるためです。
そのため、インターネット上の「私は翌日に治った」「1週間かかった」という体験談は参考程度にしかなりません。特に激しい痛みと明らかな聴力低下があった場合は、他人が治った日数を基準に待たないほうが安全です。
「耳抜きを何度もすれば治る」とは限らない
耳抜きの代表的な方法には、あくびをする、つばを飲み込む、ガムを噛む、鼻をつまんで口を閉じた状態でごく穏やかに鼻側へ息を送る方法などがあります。飛行中の予防や軽い耳閉感では役立つことがあります。
ただし着陸後に激痛と聞こえにくさが残っている状態で、「開くまで力いっぱい耳抜きしよう」と強く繰り返すのは避けたほうがよいでしょう。MSDマニュアルでも圧力を調整する方法として紹介されているのは、閉じた鼻孔から静かに息を吹き出そうとする方法です。[参照:MSDマニュアル家庭版「耳の圧外傷」]
すでにいくつもの耳抜き方法を試して改善せず、聞こえにくさまで残っているなら、さらに強い自己流の耳抜きを続けるより耳鼻咽喉科で状態を確認する段階と考えたほうがよいでしょう。
「ネットに書かれている方法を全部試したのに治らない」ときは?
あくび、嚥下、ガム、耳抜きなどは、耳管を開いて気圧差を解消することを目的とした方法です。しかし中耳粘膜が強く腫れていたり、中耳に液体や血液がたまっていたり、鼓膜や内耳に障害が生じていたりすれば、それだけで即座に元通りになるとは限りません。
Mayo Clinicも、多くの場合は時間とともに改善するものの、症状が改善しない場合には医療的な対応が必要になることがあるとしています。診察では耳鏡などを使って鼓膜の状態を確認します。[参照:Mayo Clinic「Airplane ear – Diagnosis & treatment」]
聞こえにくさがある場合には、必要に応じて聴力検査などによって「中耳で音が伝わりにくくなっているのか」「内耳側の聴力低下なのか」を確認することが重要になります。
激痛+聞こえにくさが残っているなら耳鼻咽喉科へ
飛行機から降りた直後に軽く耳が詰まっているだけで、徐々に改善しているのであれば経過を見るケースもあります。しかし、着陸時に泣きそうになるほどの強い痛みがあり、その後も明らかに聞こえにくい状態が続いている場合は、早めに耳鼻咽喉科へ相談することをおすすめします。
耳鼻咽喉科では鼓膜を直接観察でき、必要に応じて聴力検査や中耳の状態を調べる検査を行えます。航空性中耳炎なのか、鼓膜の損傷があるのか、内耳の障害を疑う必要があるのかを切り分けられます。
「飛行機に乗った直後だから放っておけば治る」と決めつけるのではなく、聞こえ方が明らかに変わっていることを受診判断の材料にしてください。
特に早く受診したい症状
耳の圧外傷では、強い気圧差によって鼓膜だけでなく内耳まで障害されるケースがあります。次のような症状がある場合は、単なる耳詰まりとして長く様子を見ず、速やかに医療機関へ相談してください。
- 急に聴力が大きく低下した
- 片耳がほとんど聞こえないなど左右差が強い
- 激しい耳痛が続いている
- 回転するようなめまいがある
- 強い耳鳴りが新たに出た
- 耳から血液や液体が出ている
- 吐き気を伴うほどのめまいがある
MSDマニュアルでは、耳の圧外傷で感音難聴や回転性めまいがある場合、内耳の外リンパ瘻などを考える必要があると説明しています。[参照:MSDマニュアル「耳の圧外傷」]
またMayo Clinicも重症の飛行機耳では、強い痛み、悪化した難聴、耳鳴り、回転性めまい、耳からの出血などがみられることがあるとしています。[参照:Mayo Clinic「Airplane ear」]
耳鼻咽喉科では何を調べる?
まず重要なのが鼓膜の観察です。鼓膜が内側へ引き込まれていないか、赤くなっていないか、出血がないか、穴が開いていないか、中耳に液体がたまっている兆候がないかなどを確認します。
さらに聞こえにくさが強ければ、聴力検査によって難聴の程度と種類を確認できます。中耳が原因の伝音難聴なのか、内耳が関係する感音難聴なのかは、その後の対応を考えるうえでも重要です。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の2026年版「軽度・中等度難聴の診療の手引き」でも、飛行機搭乗などによる中耳気圧変化が外傷性中耳障害の具体的な原因として挙げられており、内耳まで障害が及ぶ場合には混合性難聴を呈することもあるとされています。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「軽度・中等度難聴の診療の手引き」]
治療は症状の程度によって変わる
軽い耳の圧外傷は自然に改善することが多く、すべての人に特別な処置が必要なわけではありません。一方で症状の程度や鼓膜・中耳・内耳の状態によっては医療的な治療が必要になる場合があります。
治療内容は鼻づまりの原因、鼓膜の状態、中耳に液体や出血があるか、難聴の種類などによって異なります。Mayo ClinicやMSDマニュアルでは、症例によって鼻閉改善薬、鎮痛薬などが用いられることがあり、重症例では鼓膜切開などの処置が必要になる場合があると解説されています。[参照:Mayo Clinic「Airplane ear – Diagnosis & treatment」]
ただし鼻閉改善薬などには、持病や年齢、使用中の薬などによって注意が必要なものがあります。特に症状が強い場合はネット情報だけで薬を追加していくのではなく、医師または薬剤師へ相談してください。
耳の中へ綿棒や器具を入れて治そうとしない
耳が詰まると「耳垢が詰まったのでは」と考えて耳掃除をしたくなることがあります。しかし飛行機による圧外傷は鼓膜のさらに奥にある中耳の気圧差などが原因なので、耳かきや綿棒で解消できるものではありません。
むしろ強い痛みの後は鼓膜が傷ついている可能性もあるため、耳の中へ器具を入れるのは避けましょう。液体が出ている場合にも自己判断で耳の奥を掃除しないほうが安全です。
また、鼓膜の状態が分からない段階で自己判断の点耳薬などを使用するのも避け、必要なら耳鼻咽喉科で確認してもらいましょう。
次に飛行機へ乗るときの予防方法
一度強い航空性中耳炎を経験すると、次の搭乗が不安になることがあります。まず重要なのは、風邪や強い鼻づまりがある状態での搭乗を可能なら避けることです。
飛行中、とくに離陸・着陸時には眠り込まず、こまめにつばを飲み込む、あくびをする、ガムを噛むなどして耳管を開きます。耳抜きをする場合も力任せではなく穏やかに行います。
MSDマニュアルでは、鼻やのどの感染症・アレルギーがある人は飛行機で不快感が起こりやすく、可能なら症状が落ち着くまで飛行を避けることが推奨されています。[参照:MSDマニュアル家庭版「耳の圧外傷」]
鼻炎持ちなら搭乗前に耳鼻咽喉科へ相談する方法もある
花粉症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで普段から鼻が詰まりやすく、飛行機に乗るたびに耳が痛くなる人は、旅行当日だけ対策するより事前に耳鼻咽喉科へ相談する方法があります。
鼻の炎症が強ければ、そちらを適切に治療することで耳管が機能しやすくなる可能性があります。また以前の飛行で激しい耳痛や難聴を経験したことを伝えれば、次回搭乗時の予防策について個別に相談できます。
市販の点鼻薬や内服薬が誰にでも適しているとは限らないため、持病や他の薬がある場合は特に自己判断を避けましょう。
具体例:着陸後に耳が詰まっているが徐々に改善している場合
例えば着陸直後は耳が完全に塞がったように感じたものの、数時間の間に少しずつ聞こえ方が戻り、痛みもほぼ消えている場合は、気圧差が徐々に解消している可能性があります。
このような場合でも無理な耳抜きを繰り返す必要はありません。あくびや嚥下など穏やかな方法を試しながら経過をみます。
ただし、聞こえにくさが改善しない、再び強く痛む、耳鳴りやめまいが出るといった場合は耳鼻咽喉科へ相談してください。
具体例:着陸時に激痛、その後も片耳が明らかに聞こえにくい場合
着陸中に非常に強い痛みがあり、飛行機を降りた後も片耳だけ音が遠く感じる、会話が聞き取りにくいという場合は、軽い耳詰まりと決めつけないほうがよい状態です。
中耳の圧外傷による伝音難聴であれば時間とともに改善するケースがありますが、症状だけでは内耳性の難聴との区別はできません。
特に急激で明らかな聴力低下、耳鳴り、めまいを伴う場合は、早めに耳鼻咽喉科で聴力を測ってもらうことが重要です。
具体例:耳が「ポン」となったあと急に痛みが軽くなった場合
強い耳痛の途中で突然「ポン」という感覚があり、その直後に痛みが軽くなった場合でも、単純に耳抜きが成功したとは限りません。大きな圧力差では鼓膜が損傷することもあります。
特にその後に耳から血や液体が出る、聞こえが大幅に悪くなる、強い耳鳴りが出るといった場合は受診が必要です。
鼓膜が傷ついている可能性があるときは耳の中へ水や器具を入れず、医療機関で状態を確認してもらうのが安全です。
「いつ治る?」より「どこが障害されているか」が大切
航空性中耳炎について調べると、「数時間で治った」「翌朝には戻った」「数日かかった」とさまざまな体験談が見つかります。しかし、これらをそのまま自分の回復予定日に当てはめることはできません。
同じ「耳が聞こえにくい」という症状でも、単なる気圧差、耳管の腫れ、中耳にたまった液体、鼓膜損傷、内耳障害など原因が異なる可能性があるためです。
激痛のあとに聴力低下が残っている場合は、「何日待てば治るか」ではなく「鼓膜や中耳・内耳にどの程度の影響があるか」を確認することが重要です。
まとめ:着陸後も激痛や聞こえにくさが続くなら無理に耳抜きを繰り返さず耳鼻咽喉科へ
飛行機の着陸時に耳抜きができず激しい耳痛が起こり、到着後も耳が詰まる、自分や他人の声が聞こえにくいという症状では、航空性中耳炎(耳の圧外傷)が考えられます。鼻づまりや風邪、アレルギーなどで耳管が開きにくい状態では特に起こりやすくなります。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]
軽いケースなら時間とともに改善することがありますが、回復までの時間には個人差があり、「○時間・○日で必ず治る」とは言えません。中耳の圧力差だけでなく、出血、液体貯留、鼓膜損傷、まれに内耳障害などでも聞こえにくくなるからです。
すでにあくび、嚥下、ガム、穏やかな耳抜きなどを試しても改善せず、着陸時に非常に強い痛みがあり、その後も明らかな聴力低下が残っているのであれば、自己流の耳抜きを何度も強く繰り返すより耳鼻咽喉科を受診するのが適切です。鼓膜を観察し、必要に応じて聴力検査をすれば、中耳の問題なのか内耳まで影響しているのかを判断する手掛かりになります。
特に、急に大きく聞こえなくなった、強い耳鳴りや回転性めまいがある、耳から血液・液体が出る、激痛が続くといった症状がある場合は、長く様子を見ないでください。耳の圧外傷の多くは改善が期待できますが、強い痛みと難聴があるケースでは早めに状態を確認することが、安心して回復を待つためにも大切です。

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