地震への備えは大切ですが、「地震が今来たらどうしよう」と寝る前に何時間も考え続け、眠れない、吐いてしまう、息が苦しくなるほど不安が強くなる場合は、単なる防災意識の高さだけで片づけず、心身の不調として対処することが大切です。
地震を心配すること自体は自然な反応です。しかし、不安によって睡眠や日常生活が大きく妨げられているなら、精神科・心療内科などの専門家へ相談してよい状態です。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも、不安が強くなり生活や行動へ影響が出ていると感じる場合には専門家への相談を勧めています。[参照:国立精神・神経医療研究センター「不安症」]
重要なのは「地震について一切考えないようにする」ことではありません。現実的な防災準備は昼間に一度整理し、夜になったら防災計画を繰り返し検証しない、というように防災の時間と休む時間を分けることがポイントです。
- 地震が怖いと感じること自体は異常ではない
- 「備えること」と「不安を何時間も検証すること」は分けて考える
- 「考えないようにしよう」とすると余計に気になることがある
- 吐き気・嘔吐・過呼吸まで起きるなら我慢し続けない
- 「治らないのでは」と決めつける必要はない
- 「地震への備え」を一度紙に書いて終了させる
- ペットがいる家庭では役割分担をシンプルにする
- 寝室そのものを安全にすると「考える防災」を減らせる
- 防災情報を夜中まで検索し続けない
- 不安が始まったときは「今起きていること」に注意を戻す
- 過呼吸のような状態になったときに紙袋を使うのは避ける
- 眠れない夜が続くこと自体も受診理由になる
- 精神科と心療内科、どちらへ相談すればいい?
- 病院へ行くほどなのか迷ったら公的相談窓口も使える
- パートナーには「安心させて」だけでなく具体的に頼む
- 具体例:夜に「今地震が来たら」と考え始めた場合
- 具体例:「もっと最悪のケースも考えなければ」と感じた場合
- 受診までの間に記録しておくと役立つこと
- 防災をやめるのではなく「十分な備え」で区切る
- まとめ:地震への備えは昼間に終わらせ、眠れないほどの不安は専門家へ相談する
地震が怖いと感じること自体は異常ではない
日本で生活していれば、地震に不安を感じることには現実的な理由があります。家具が倒れないか、避難できるか、家族やペットを守れるかなどを考えて備えることは、防災という意味では有益です。
内閣府も、地震などへの日頃の備えとして、家族内の安否確認方法、避難場所、非常用持出品、食料・飲料水等の備蓄、家具や家電の転倒防止、ペットとの同行避難などを確認するよう案内しています。[参照:内閣府「令和8年度 防災週間」]
したがって、「地震が来たらどう動くかを家族と相談する」こと自体をやめる必要はありません。問題になるのは、確認しても安心できず、さらに別の危険を想像し、何度も頭の中でシミュレーションしなければ眠れなくなるような状態です。
「備えること」と「不安を何時間も検証すること」は分けて考える
防災準備には終わりを作れます。例えば「家具を固定する」「避難場所を確認する」「ペットのキャリーを決めた場所へ置く」「非常持出袋を準備する」「パートナーとの役割を決める」といった行動です。
一方、「もし寝ている瞬間に震度7が来たら」「玄関が開かなかったら」「ペットが隠れたら」「自分がけがをしたら」「相手が動けなかったら」と条件を増やし続ければ、思考には終点がありません。どれだけ考えても、災害時に起こるすべての状況を事前に予測することはできないからです。
安全性を高めるための具体的な準備は有益ですが、「すべての可能性を考え終わるまで眠らない」という方法では安心を完成させることができません。ここを分けることが重要です。
「考えないようにしよう」とすると余計に気になることがある
不安な考えが浮かんだとき、「絶対に考えてはいけない」「今すぐ頭から消さなければ」と強く意識すると、かえってその考えを監視することになり、気になり続ける場合があります。
例えば「地震のことを考えてはいけない」と確認するためには、自分が今地震を考えているかどうかを繰り返しチェックしなければなりません。その結果、地震というテーマへ注意が戻ってしまいます。
そのため目標を「地震のことを二度と考えない」にするより、「考えが浮かんでも、今すぐ答えを出そうとしない」とするほうが現実的です。不安な考えが浮かぶことと、その考えについて何時間も検討を続けることは別だからです。
吐き気・嘔吐・過呼吸まで起きるなら我慢し続けない
強い不安は気持ちだけでなく身体にも現れることがあります。国立精神・神経医療研究センターは、不安症では動悸、呼吸困難、震え、発汗などの身体症状が生じる場合があり、パニック発作では強い不安とともに身体症状が急激に生じると説明しています。[参照:国立精神・神経医療研究センター「不安症」]
ただし、嘔吐や息苦しさがあるからといって、自分で「パニック症だ」と診断することはできません。身体疾患や薬、カフェインなど別の要因が関係することもあります。同サイトでも、動悸や呼吸困難がある場合には身体的な原因を確認する観点から内科受診について案内しています。
眠れない状態が続き、嘔吐や強い呼吸苦まで生じているなら、「もう少し自分で頑張ってから」と受診を先延ばしにする必要はありません。精神科・心療内科をはじめ、かかりつけ医や内科から相談を始めても構いません。
「治らないのでは」と決めつける必要はない
強い不安が続くと、「この状態が一生続くのではないか」とさらに不安になることがあります。しかし、不安症やパニック症などには専門的な治療方法があります。
厚生労働省は、不安障害・不安症に対する認知療法・認知行動療法の資料として、パニック症や強迫症などの治療者向けマニュアルを公開しています。つまり、強い不安に対して医学的・心理学的な治療アプローチが存在します。[参照:厚生労働省「心の健康・認知行動療法」]
実際にどの治療が適しているかは症状や診断によって異なります。薬物療法が検討される場合もあれば、認知行動療法などの心理療法、睡眠への対応、生活上の調整などを組み合わせることもあります。
「地震への備え」を一度紙に書いて終了させる
寝る前に毎日頭の中で防災シミュレーションを繰り返している場合は、頭の中だけで管理せず、パートナーと相談して一度簡単な防災計画を紙やスマートフォンへまとめておく方法があります。
例えば「揺れている最中はまず身の安全を確保する」「揺れが収まってから状況を確認する」「ペット用キャリーはこの場所」「避難が必要な場合の持出袋はここ」「避難場所はここ」「連絡できない場合の集合場所はここ」といった最低限の項目だけを決めます。
そして夜に「このケースも考えないと危ないのでは」と思った場合は、その場でシミュレーションを始めるのではなく、「明日の防災確認時間に考える項目」として一行だけメモします。思いついた問題を無視するのではなく、検討する時間を翌日に移すという方法です。
ペットがいる家庭では役割分担をシンプルにする
ペットがいると、「自分が2匹とも助けなければ」と責任を一人で抱え込みやすくなります。同居している人がいるなら、日中の落ち着いている時間に役割分担を話しておくとよいでしょう。
例えば「キャリーAは自分、キャリーBはパートナー」というように基本担当を決めておけば、夜中に毎回ゼロから手順を考える必要がなくなります。ただし災害時には状況が変わるため、計画どおりにできない場合はその場で安全を優先します。
内閣府も防災週間の取組として、ペットの同行避難や避難所での飼養について日頃から準備することを挙げています。キャリー、フード、水、薬、トイレ用品、飼い主情報など、必要なものを自治体の案内も参考に準備しておくとよいでしょう。[参照:内閣府「防災週間」]
寝室そのものを安全にすると「考える防災」を減らせる
「地震が起きたらどう逃げるか」だけを考えるより、そもそも寝ている場所を安全にしておくことが重要です。内閣府は家具・家電製品などの固定による転倒防止や配置の見直し、収納物の落下防止を防災対策として挙げています。[参照:内閣府「令和8年度 防災週間」]
例えばベッドの上へ倒れる可能性がある背の高い家具がないか、頭上に重い物を置いていないか、出口を家具が塞ぐ配置になっていないかなどを昼間に確認します。
実際の危険を一つずつ減らしておけば、「地震が来たら完璧に動かなければ」という負担を減らせます。大きな揺れの最中に複雑な手順を実行することを前提とするより、まず身の安全を守れる環境を作ることが基本です。
防災情報を夜中まで検索し続けない
不安になると、地震情報、過去の災害映像、SNSの予測投稿などを検索して安心材料を探したくなることがあります。しかし、検索すればするほど新しい危険情報が目に入り、さらに確認したくなる循環へ入る場合があります。
防災情報を確認するなら、気象庁や自治体、内閣府など信頼できる公的情報を中心にし、確認する時間帯を決める方法があります。特に就寝直前に災害映像や根拠の乏しい地震予知情報を何時間も見ることは避けたほうがよいでしょう。
「情報を見ない=地震への備えを放棄する」ではありません。必要な備えを昼間に済ませ、夜は睡眠を確保することも、災害時に冷静に行動するための準備の一部です。
不安が始まったときは「今起きていること」に注意を戻す
「地震で家が壊れたら」「ペットを助けられなかったら」と未来の映像が頭の中で膨らんでいるときは、頭の中のシミュレーションから現在の環境へ注意を戻します。
例えば「今はベッドにいる」「床に足が触れている」「部屋の明かりが見える」「パートナーがここにいる」と、現在確認できる事実へ意識を向けます。未来の安全を100%保証するためではなく、頭の中で起きている想像と、現在目の前で実際に起きていることを区別するためです。
「地震は絶対に来ない」と自分へ言い聞かせる必要もありません。地震が将来起こる可能性をゼロにすることはできないため、「今この瞬間には地震が起きていない。備えは昼間に確認する」と現在へ戻すほうが現実に沿っています。
過呼吸のような状態になったときに紙袋を使うのは避ける
以前は過呼吸に対して紙袋を口へ当てて呼吸する方法が知られていましたが、自己判断で行うのは安全ではありません。息苦しさの原因が本当に過呼吸なのか本人には判断できず、酸素不足を招く危険もあるためです。
強い不安で呼吸が速くなっている場合は、無理に大きく深呼吸し続けるより、安全な場所で座るなどして身体を休め、呼吸を急いで正常化させようとしすぎないことが大切です。
胸の強い痛み、意識がおかしい、失神、唇の色がおかしい、これまで経験したことのない激しい呼吸困難などがある場合は、「いつもの不安だろう」と決めつけず、救急要請を含め医療機関への相談が必要です。
眠れない夜が続くこと自体も受診理由になる
「精神的にもっと重症にならないと病院へ行ってはいけない」と考える必要はありません。睡眠が取れない状態が続いているだけでも相談する理由になります。
特に朝まで不安について考え続ける状態が繰り返されると、翌日の集中力や判断力にも影響します。睡眠不足によって心身が疲れると、さらに不安を強く感じるという悪循環になることもあります。
受診するときは、「地震が怖い」とだけ伝えるより、いつ頃から始まったか、週に何日眠れないか、何時間考え続けるか、嘔吐や呼吸苦が何回起きたか、日中にも不安が続くかなどをメモして持参すると状況を説明しやすくなります。
精神科と心療内科、どちらへ相談すればいい?
強い不安、パニックのような症状、不眠などが中心なら精神科が専門領域になります。心療内科でも不安やストレスに関連した身体症状を診療している医療機関がありますが、診療範囲は施設によって異なります。
近くの医療機関でどこへ行けばよいか分からなければ、かかりつけの内科へ最初に相談する方法もあります。特に動悸や呼吸困難、嘔吐など身体症状がある場合は、身体的な病気が隠れていないか確認することにも意味があります。
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」には、こころの病気や相談・受診に関する一般向け情報がまとめられています。[参照:国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」]
病院へ行くほどなのか迷ったら公的相談窓口も使える
受診するべきか迷っている場合や、すぐ医療機関を予約できない場合は、公的なこころの相談窓口を利用する方法もあります。
厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」は、全国共通の0570-064-556から、電話をかけた地域の公的な相談機関へつながる仕組みです。受付時間は地域によって異なります。[参照:厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」]
「自分は相談するほどではない」と我慢する必要はありません。睡眠が大きく乱れ、嘔吐や呼吸苦まで起きているなら、相談窓口や医療機関につながる十分な理由があります。
パートナーには「安心させて」だけでなく具体的に頼む
同居しているパートナーがいる場合、不安について共有しておくことも大切です。ただし毎晩「地震が来ないと言って」「この避難方法で絶対大丈夫だよね」と確認を繰り返すだけでは、一時的に安心しても再び不安になってしまうことがあります。
そこで、「夜に防災シミュレーションを始めてしまったら、明日考えようと声をかけてほしい」「今週末に30分だけ一緒に防災用品を確認してほしい」「受診の予約をするときに付き添ってほしい」など、具体的な協力を頼む方法があります。
パートナーにすべての不安を解消してもらうのではなく、専門家へ相談するまでの支えや、現実的な防災準備の協力者になってもらうイメージです。
具体例:夜に「今地震が来たら」と考え始めた場合
例えば布団へ入った直後、「今震度7が来たらペットをどうする?」という考えが浮かんだとします。そこで頭の中の訓練を始めるのではなく、「ペットの避難方法は土曜日の昼にパートナーと確認する」とメモします。
すでにキャリーの場所や避難先を決めているなら、「今日の防災確認は終了している」と区切ります。そのうえで現在の身体感覚や周囲へ注意を戻します。
翌日、本当に改善すべき点があると判断したら昼間に対応します。この方法なら、必要な防災対策を放棄することなく、深夜の際限のないシミュレーションだけを減らしていけます。
具体例:「もっと最悪のケースも考えなければ」と感じた場合
「ペットのキャリーを用意した。でも棚が倒れたら取れないかもしれない」「別の場所へ置いた。でもそこまで行けなかったら」と考え始めると、次々に新しい条件を作ることができます。
このとき大切なのは、「最後の一つまで考えれば完全に安心できる」と考えないことです。災害には予測できない要素があり、完全な計画を作ることはできません。
現実的な安全対策を一定水準まで実施したら、残る不確実性をゼロにしようとするのではなく、「ここから先は専門家と相談しながら、不安そのものへの対処も行う」という方向へ切り替えることが大切です。
受診までの間に記録しておくと役立つこと
医療機関へ相談するまでの数日間、症状を簡単に記録しておくと診察に役立ちます。ただし詳細な地震シミュレーションを書く必要はありません。
- 布団へ入った時刻
- 眠れたおおよその時刻
- 地震への不安が続いた時間
- 不安の強さを0~10で記録
- 動悸、吐き気、嘔吐、息苦しさなどの有無
- カフェインや飲酒の有無
- 翌日の生活への影響
こうした情報があると、「なんとなく最近つらい」だけでなく、睡眠と不安が生活へどの程度影響しているかを医師へ伝えやすくなります。
防災をやめるのではなく「十分な備え」で区切る
地震への強い不安がある人に「地震なんて気にしなければいい」と言っても解決にはなりません。日本で地震への備えをすること自体には意味があるからです。
そこで、内閣府や自治体など公的機関の防災情報を基準に、家具の固定、避難場所、連絡方法、持出品、備蓄、ペット用品などを昼間に確認します。内閣府は最低3日、できれば1週間程度の食料・飲料水・携帯トイレ等の備蓄についても案内しています。[参照:内閣府「令和8年度 防災週間」]
そのチェックを終えたら、夜は「今日の防災は終了」とします。新しい疑問が出たら翌日の確認リストへ移します。安全対策を増やすことと、安心できるまで思考を繰り返すことを分離するのがポイントです。
まとめ:地震への備えは昼間に終わらせ、眠れないほどの不安は専門家へ相談する
地震への不安そのものは自然な感情であり、家族やペットを守るために防災計画を作ることにも意味があります。しかし、毎晩何時間も「今地震が来たらどうするか」をシミュレーションし、朝まで眠れず、嘔吐や強い呼吸苦まで起きているなら、防災知識を増やすことだけではなく、不安と睡眠の問題そのものへのケアが必要な段階と考えたほうがよいでしょう。
「もう治らない」と結論づける必要はありません。不安症やパニック症などには認知行動療法を含む専門的な治療法があり、厚生労働省も関連する治療資料を公開しています。実際にどの状態に当てはまるかは自己判断せず、精神科・心療内科、あるいは身体症状も含めてかかりつけ医や内科へ相談してください。[参照:厚生労働省「心の健康」]
防災については、家具の固定、避難場所、持出品、ペットの同行避難、パートナーとの役割分担など、実際に行動できる項目を昼間に整理します。そして寝る時間になったら、それ以上の「もしも」の検討は翌日に回します。災害の可能性をゼロにすることはできませんが、必要な備えをしたうえで身体と脳を休ませることも大切な安全対策です。
受診先に迷う場合は、厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」から地域の公的相談機関へ相談することもできます。[参照:厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」] 強い呼吸困難、意識障害、失神、激しい胸痛など緊急性のある身体症状が出た場合は、不安によるものと決めつけず救急医療を利用してください。


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