鼓室形成術後に点耳薬で喉が苦いのはなぜ?鼓膜の穴との関係と術後の耳閉感を解説

耳の病気

鼓室形成術や鼓膜形成術のあとに点耳薬を使用した際、口や喉の奥に苦味・薬のような味を感じることがあります。このような症状があると、点耳薬が耳から喉へ流れているのではないか、手術で閉じた鼓膜に再び穴が開いているのではないかと心配になるかもしれません。

しかし、苦味を感じるという症状だけで鼓膜穿孔(鼓膜の穴)があると判断することはできません。鼓室形成術では味覚に関係する神経が影響を受けることもあり、術後には耳閉感や聞こえ方の変化が残ることもあります。ここでは耳の構造を踏まえ、点耳薬と喉の苦味の関係、鼓膜穿孔の可能性、受診したほうがよい症状について整理します。

正常な鼓膜があれば点耳薬は基本的に喉へ直接流れない

耳は大きく外耳・中耳・内耳に分かれています。一般的な点耳薬を入れる場所は外耳道で、その奥には鼓膜があります。正常な鼓膜は外耳道と中耳を隔てているため、鼓膜が完全に閉じていれば外耳道に入れた液体がそのまま中耳へ通過する構造にはなっていません。

一方、中耳には耳管という通路があり、鼻の奥の上咽頭につながっています。そのため、中耳側に入った液体が耳管方向へ移動すれば、喉や鼻の奥で薬の味を感じる可能性はあります。

したがって、点耳直後に毎回はっきり薬そのものの苦味を感じる場合には、鼓膜の状態を確認する理由にはなります。ただし、術後の耳では通常とは状態が異なり、後述する味覚神経の影響もあるため、「苦い=鼓膜に穴が開いている」と自己診断することはできません。

鼓室形成術後では味覚そのものが変化することがある

鼓室形成術後の味の異常を考えるうえで重要なのが、鼓索神経(こさくしんけい)です。鼓索神経は舌の味覚に関係する神経で、中耳の中を通っています。そのため、鼓膜や中耳を扱う手術では神経が刺激されたり、伸ばされたりすることがあります。

その結果、術後に「金属のような味がする」「苦く感じる」「片側だけ味がおかしい」「以前と食べ物の味が違う」といった味覚変化が生じる場合があります。鼓膜形成術・鼓室形成術後の味覚変化については複数の医療機関も患者向け資料で説明しています。[参照]

このため、点耳薬を使ったタイミングで苦味を自覚したとしても、実際に薬液が喉まで流れているとは限りません。特に手術後から味覚の違和感が続いている場合には、鼓索神経による味覚変化も考慮する必要があります。

点耳薬の苦味だけでは鼓膜に穴があるか判断できない

鼓室形成術では鼓膜を再建しますが、まれに移植した組織が十分に生着しなかったり、術後に再穿孔したりすることがあります。実際、鼓室形成術・鼓膜形成術では持続する鼓膜穿孔や再穿孔が術後の合併症として知られています。[参照]

ただし、鼓膜に穴が残っているかどうかは症状だけでは確定できません。耳鼻咽喉科では耳鏡や顕微鏡、内視鏡などを使って鼓膜を直接観察し、必要に応じて聴力検査などを行います。

たとえば「点耳薬を入れるたび数秒~数分後に喉の奥で同じ薬の苦味を感じる」という情報は診察時の重要な手掛かりになりますが、それだけで再穿孔と断定するのではなく、術後の鼓膜を実際に診てもらうことが重要です。

術後1か月程度の耳閉感や聞こえ方の違いについて

鼓室形成術後には、しばらく耳が詰まったように感じたり、音がこもったように聞こえたりすることがあります。術式や術後の状態によっては外耳道に詰め物(パッキング)が入っている期間もあり、これによって聞こえにくさや耳閉感が生じることもあります。術後のパッキングによって耳が塞がった感覚になることは、医療機関の術後説明でも案内されています。[参照]

また、鼓膜や中耳の組織が回復途中であること、中耳の換気状態、腫れや分泌物などによっても聞こえ方は変化します。そのため、術後1か月という期間だけから「耳閉感があるので手術が失敗している」と判断することもできません。

一方で、時間とともに改善するはずの症状が逆に悪化している場合や、以前より明らかに聴力が落ちた場合には、次回予約日を待たず手術を受けた耳鼻咽喉科へ相談したほうが安心です。

点耳後に苦味を感じる場合に避けたい自己確認

鼓膜に穴があるか確かめるために、点耳薬を多めに入れたり、耳の入口を強く押して圧力をかけたりする方法はおすすめできません。術後の鼓膜は治癒途中であり、医療機関によっては術後しばらく圧力変化や耳への水の侵入を避けるよう指示しています。[参照]

また、自己判断で別の市販点耳薬を追加することも避けたほうが安全です。鼓膜穿孔がある場合には使用に適さない点耳薬もあるためです。処方された点耳薬については処方時の指示に従い、苦味が出ることを処方した医師や手術を担当した耳鼻咽喉科へ伝えて確認してください。

相談するときには「点耳してから何秒・何分くらいで苦くなるか」「毎回起こるか」「点耳前から味覚異常があるか」「耳だれ、痛み、発熱、めまい、聴力低下がないか」を伝えると状況を説明しやすくなります。

早めに耳鼻咽喉科へ相談したい症状

術後の経過には個人差がありますが、耳から膿や悪臭のある液体が出る、強い耳痛がある、発熱する、急に聞こえが悪くなる、強いめまいが続くといった症状がある場合には、感染症など別の問題も含めて早めの診察が必要です。

また、点耳薬を使用するたびに明確な苦味を感じ、それが術後も継続している場合には、緊急症状がなくても次回診察時に必ず伝えておきたい情報です。特に鼓膜の再建手術後であれば、鼓膜が閉鎖しているかどうかは実際の診察で確認してもらうのが最も確実です。

鼓膜穿孔では耳だれや聴力低下などを伴うことがありますが、症状の出方には差があります。一般的な鼓膜穿孔の症状や注意点についてはNHSの患者向け情報も参考になります。[参照]

まとめ:点耳薬で喉が苦くても鼓膜穿孔とは断定できない

正常な鼓膜は外耳道と中耳を隔てているため、外耳道に入れた点耳薬が通常そのまま喉へ流れるわけではありません。一方、中耳は耳管を通して鼻・喉側につながっているため、鼓膜に交通がある場合には薬液が中耳側へ入る可能性を考える必要があります。

ただし、鼓室形成術では中耳を通る鼓索神経が影響を受け、苦味や金属味などの味覚異常が起こることがあります。そのため、点耳後の苦味だけを根拠に「鼓膜に穴が開いた」と結論づけることはできません。

術後の耳閉感や聞こえ方の変化も含め、鼓膜が正常に治癒しているかどうかを自宅で確実に判断する方法はありません。点耳のたびに苦味が続く場合は自己確認のために耳へ圧力を加えたり薬を追加したりせず、手術を担当した耳鼻咽喉科に症状を伝え、鼓膜と中耳の状態を確認してもらうことが適切です。

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