乾いた耳垢が急に湿って耳から水が出るのはなぜ?耳だれ・外耳炎・中耳炎の見分け方と受診の目安

耳の病気

普段はカサカサした乾いた耳垢なのに、急に耳の中が湿ったり、水のような液体が出てきたりすると「耳垢の体質が急に変わったのでは」「何かの病気では」と心配になるものです。しかし、耳から液体が出ている場合は、単なる耳垢ではなく「耳だれ(耳漏)」の可能性も考える必要があります。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、耳だれとは耳から流れ出る液体、または液体が出てくる状態を指し、外耳道や中耳の病気で生じることがあります。一方、もともと柔らかい耳垢が耳だれのように見えるケースもあります。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]

普段は乾燥した耳垢なのに突然湿り、水っぽい液体まで出てきたのであれば、「湿性耳垢になっただけ」と自己判断せず、外耳炎や中耳炎などがないか耳鼻咽喉科で確認するのが安全です。特に痛み、かゆみ、悪臭、膿、血、聞こえにくさ、めまい、発熱などを伴う場合は受診の優先度が上がります。

「湿った耳垢」と「耳だれ」は同じものではない

耳垢には乾燥したタイプと湿ったタイプがあり、柔らかい耳垢そのものは病気ではありません。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、外耳道の柔らかい耳垢が耳だれに似て見えることがあると説明しています。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]

ただし、これまでずっと乾いた耳垢だった人について「突然水が出てきた」という場合は少し事情が違います。耳垢の見た目だけではなく、外耳道の皮膚や鼓膜の奥から液体が出ている可能性まで考える必要があります。

耳から出る液体には、水のように透明なもの、黄色や白っぽいもの、粘り気のあるもの、膿のようなもの、血液が混ざったものなどがあります。見た目だけで原因を確定することはできないため、続く場合には耳鼻咽喉科で耳の中と鼓膜を確認してもらうことが重要です。

耳から水のような液体が出る状態は「耳漏」と呼ばれる

医学的には、外耳道から排出される分泌物を「耳漏(じろう)」と呼び、一般には「耳だれ」ともいいます。日本耳鼻咽喉科学会の用語集では、耳漏には漿液性、粘液性、膿性、血性などさまざまな性状があると説明されています。[参照:日本耳鼻咽喉科学会 Web用語集「耳漏」]

つまり「耳から水が出る」という症状だけで特定の病気を決めることはできません。耳の入口から鼓膜までの外耳道に原因がある場合もあれば、鼓膜より奥の中耳に原因がある場合もあります。

そのため重要なのは、「何色か」だけで自己診断するのではなく、いつから始まったのか、片耳か両耳か、痛み・かゆみ・臭い・聞こえの変化などがあるかを一緒に確認することです。

原因として多いのが外耳炎

耳が急に湿って耳だれが出る場合に考えられる病気の一つが外耳炎です。外耳炎は耳の穴から鼓膜までの外耳道に炎症が起きた状態です。

済生会の医学解説によると、外耳炎では耳の穴周辺の赤みや痛みが生じ、炎症の程度によって白色や黄色の耳だれが出ることがあります。耳の中が腫れたり、詰まった感じがしたり、ひどくなると聞こえにくくなったりする場合もあります。[参照:済生会「外耳炎」]

特徴の一つとして、耳たぶを引っ張ったときや耳の入口付近を押したときに痛みが強くなることがあります。ただし、この症状だけで外耳炎と断定することはできません。

耳掃除のしすぎが外耳炎を起こすこともある

「耳を清潔にしよう」と綿棒や耳かきを頻繁に使っている場合、それが逆に外耳炎のきっかけになることがあります。外耳道の皮膚は刺激に弱く、耳掃除によって小さな傷ができると、そこから細菌などが入り炎症を起こすことがあります。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、耳のかゆみの原因として外耳炎を挙げ、耳掃除などでも外耳道に炎症が起こり得ると説明しています。かゆみが続いたり、痛みや耳だれが生じたりする場合は耳鼻咽喉科での治療が必要としています。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]

例えば「耳がかゆいので綿棒で何度もこすった翌日から湿ってきた」「耳かきを奥まで入れたあとから液体が出るようになった」という経過なら、耳垢そのものより外耳道の傷や炎症を確認する必要があります。

お風呂やシャワーの水が残っているだけの場合もある

耳から透明な水が出たからといって、必ず病気とは限りません。入浴、シャワー、水泳などの直後であれば、外耳道へ入った水が時間差で出てきた可能性もあります。

例えば入浴後だけ一度水が出て、その後は耳の湿り、痛み、かゆみ、臭い、聞こえの変化などがまったくなく、再発もしないのであれば、単純に入浴時の水だった可能性があります。

一方、入浴とは関係なく繰り返し液体が出る、翌日になっても湿っている、黄色っぽくなった、臭いがする、痛くなってきたという場合は「水が残っているだけ」と決めつけないほうがよいでしょう。

中耳炎でも耳だれが出ることがある

耳から出る液体は外耳道だけが原因とは限りません。鼓膜の奥にある「中耳」に炎症が起きる中耳炎でも、耳だれが生じることがあります。

済生会によると、中耳炎では耳の強い痛み、耳が詰まった感じ、難聴、耳鳴り、めまい、発熱などがみられ、症状が進行すると鼓膜が破れて中耳にたまった膿が耳だれとして出ることがあります。[参照:済生会「中耳炎」]

急性中耳炎では風邪などに続いて発症することもあります。「数日前から風邪をひいていた」「耳が強く痛んだあと突然液体が出てきた」「液体が出たあと痛みが少し軽くなった」といった経過なら、中耳炎や鼓膜の状態も含めて耳鼻咽喉科で診察を受けることが大切です。

鼓膜に穴が開いて耳だれが出るケースもある

中耳から液体が外へ出るには、鼓膜に穴が開いている場合があります。これを鼓膜穿孔といいます。

済生会の解説では、中耳炎などによって中耳に膿がたまると、鼓膜の穴を通って外耳道へ流れ出ることがあります。また耳かきを奥深くまで入れた場合など、外傷によって鼓膜に穴が開くこともあります。[参照:済生会「鼓膜穿孔」]

鼓膜に穴があるかどうかを自分で確認するのは困難です。耳鼻咽喉科では耳鏡などを使って鼓膜を直接観察できるため、耳だれと聞こえにくさが同時に起きている場合には特に診察を受ける意味があります。

透明なら安全、黄色なら危険という単純な判断はできない

耳だれの色は原因を考える手掛かりになりますが、色だけで病気を診断することはできません。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、耳だれには漿液性、膿性、粘液性、粘膿性、水様性、血性などがあります。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]

外耳道湿疹や耳掃除による刺激では漿液性の耳だれが生じることがあり、細菌感染を起こすと膿性になることがあります。また中耳から出る耳だれは粘液性になったり、感染すると粘膿性になったりします。

したがって「透明だから放置してよい」「黄色だから必ず細菌感染」といった自己判断は避け、症状の経過や耳の中の状態を合わせて判断する必要があります。

耳だれと一緒に臭いがする場合

耳から出る液体に臭いがある場合も、外耳道や中耳に病気がないか確認したほうがよいサインです。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は「耳だれが出る・耳が臭う」を耳の症状として取り上げ、外耳道や中耳の病気の可能性を説明しています。

特に膿のような液体、繰り返す耳だれ、聞こえにくさなどを伴う場合は、単純な耳垢だと考えて放置しないことが重要です。

耳の奥の臭いを消そうとして綿棒を深く入れたり、アルコールなどを自己判断で入れたりすると、炎症や傷を悪化させる可能性があります。

耳だれが出たときに綿棒で奥まで掃除しない

耳の中が湿っていると、綿棒で水分をすべて拭き取りたくなります。しかし耳だれの原因が外耳炎や鼓膜の異常だった場合、奥まで綿棒を入れることで外耳道をさらに傷つける可能性があります。

また、耳だれを取ってしまえば病気が治るわけではありません。外耳炎の場合、耳鼻咽喉科では耳垢や炎症による分泌物を適切に除去したうえで、必要に応じて抗菌薬などによる治療が行われます。真菌が原因の場合には抗真菌薬が使われることもあります。[参照:済生会「外耳炎」]

自宅では耳の奥をいじらず、外へ流れてきた液体があれば耳の入口付近を清潔なガーゼやティッシュなどでそっと押さえる程度にしておくのが無難です。

市販の点耳薬を自己判断で入れないほうがよい理由

耳から液体が出ると「消毒すればよい」「点耳薬を入れれば治る」と考えることがあります。しかし耳だれの原因は外耳炎だけではなく、中耳炎や鼓膜穿孔などの場合もあります。

鼓膜の状態によって使用できる薬が変わる可能性があるため、原因が分からない状態で手元に残っている古い点耳薬や、他人に処方された薬を使用するのは避けましょう。

耳鼻咽喉科なら鼓膜や外耳道を直接観察して、炎症がどこにあるのかを判断できます。そのうえで必要な薬を選んでもらうほうが安全です。

耳に水を入れないようにする

耳だれが出ている間は、原因が分かるまで耳の中へ積極的に水を入れないほうが安全です。外耳炎では水泳などで耳に水が入ることが発症に関係する場合があります。

また鼓膜穿孔がある場合には、水が中耳まで入りやすくなるため注意が必要です。済生会も鼓膜穿孔があると水泳などで耳へ入った水が中耳まで到達し、中耳炎を繰り返しやすくなると説明しています。[参照:済生会「鼓膜穿孔」]

シャワーを浴びる際も耳の穴へ水を直接当てず、プールや水泳は耳の状態が分かるまで控えるのが無難です。

こんな症状が一緒にあるなら早めに耳鼻咽喉科へ

耳だれだけでなく、ほかの症状を伴っている場合は早めの診察が必要になることがあります。特に次のような症状がないか確認してください。

  • 耳が強く痛む
  • 耳たぶを引っ張ったり入口を押したりすると痛い
  • 耳の中が腫れている感じがする
  • 黄色・白色・膿のような液体が出る
  • 血液が混じっている
  • 嫌な臭いがする
  • 聞こえにくくなった
  • 耳が詰まった感じが強い
  • 耳鳴りがする
  • めまいがある
  • 発熱している
  • 強い頭痛がある
  • 耳だれが繰り返す、または止まらない

済生会では中耳炎について、激しい耳痛、難聴、めまいなどがある場合には早めに耳鼻咽喉科を受診するよう案内しています。[参照:済生会「中耳炎」]

また突然聞こえが悪くなった場合には、中耳炎だけでなく別の耳の病気も考える必要があります。耳だれの有無にかかわらず、急な聴力低下は放置せず耳鼻咽喉科へ相談してください。

耳だれが一度だけなら様子を見てもよい?

例えば入浴直後に透明な水が少量出ただけで、その後まったく症状がなく、耳も普段どおりであれば、耳へ入った水だった可能性があります。

一方、入浴や水泳とは関係なく突然出た液体の場合や、「いつも乾燥した耳垢なのに今日は明らかに耳の中が湿っている」という変化がある場合には、単なる体質の変化とは決めつけないほうが安全です。

特に翌日も湿っている、何度も液体が出る、かゆみや痛みが追加された、臭いが出てきたといった場合は耳鼻咽喉科で確認しましょう。

具体例:耳掃除をした後から透明な液体が出てきた場合

例えば普段から乾燥した耳垢で、耳かきをした日の夜から耳がかゆくなり、翌日に透明~薄黄色の液体が出てきたとします。この場合、耳掃除によって外耳道に細かな傷や炎症が起き、そこから耳だれが生じている可能性を考えます。

この状態で「もっと掃除すれば乾く」と考えて耳かきを繰り返すと、傷を増やして症状を悪化させる可能性があります。

耳掃除を中止し、耳の中へ物を入れず、痛み・耳だれが続くなら耳鼻咽喉科を受診するのが適切です。

具体例:風邪のあとに耳が痛くなり、その後液体が出た場合

数日前から鼻水や喉の症状があり、その後耳がズキズキ痛み、さらに耳から膿のような液体が出てきた場合には、急性中耳炎なども候補になります。

急性中耳炎では中耳に水や膿がたまり、重症化すると鼓膜に穴が開いて膿が出る場合があります。済生会の急性中耳炎の解説でも、症状が進んだケースでは鼓膜に穴が開いて膿が出ることがあると説明されています。[参照:済生会「急性中耳炎」]

耳だれが出て痛みが一時的に軽くなったとしても「治った」とは限りません。鼓膜の状態も含めて耳鼻咽喉科で診てもらう必要があります。

具体例:シャワー後だけ水が出て、その後は何ともない場合

シャワーを浴びた直後に片耳が詰まった感じになり、頭を傾けたところ透明な水が出て、その後すぐ通常どおりに戻った場合は、単純に外耳道へ入った水だった可能性があります。

この場合でも綿棒を奥まで差し込んで水を吸い取ろうとする必要はありません。外耳道を傷つけるほうが問題になることがあります。

その後も湿った状態が続いたり、かゆみや痛みが始まったりした場合は、外耳炎などが起きていないか確認しましょう。

耳鼻咽喉科では何を調べる?

耳鼻咽喉科では、耳鏡や顕微鏡などを使って外耳道と鼓膜の状態を確認します。これによって「耳垢が湿って見えているだけなのか」「外耳道から分泌物が出ているのか」「鼓膜の奥から耳だれが出ているのか」といった違いを判断しやすくなります。

中耳炎の場合には聴力検査などが行われることもあり、耳だれの状態によっては原因菌を調べる検査が必要になる場合もあります。[参照:済生会「中耳炎」]

耳の内部は自分では十分に確認できない場所なので、耳だれが続くケースでは「色を見て推測する」より実際に鼓膜を診てもらうほうが確実です。

受診までにやっておくと役立つこと

耳鼻咽喉科を受診する場合は、液体が出始めた時刻やきっかけを覚えておくと診察に役立ちます。

  • いつから湿り始めたか
  • 右耳・左耳・両耳のどれか
  • 液体が透明・黄色・白色・血混じりなど、どのように見えたか
  • 臭いがあるか
  • 痛み・かゆみがあるか
  • 聞こえ方が変わったか
  • 最近風邪をひいたか
  • 直前に耳掃除をしたか
  • 入浴・水泳後だったか
  • イヤホンや耳栓を長時間使用したか

ただし確認のために何度も綿棒を入れたり、液体を指で触ったりする必要はありません。耳をなるべく刺激せずに受診することが大切です。

まとめ:普段乾いた耳垢なのに急に水が出たら「耳だれ」も疑って確認を

普段はカサカサした乾性耳垢なのに、突然耳の中が湿り、水のような液体まで出てきた場合、単純に「耳垢が湿性に変わった」とは限りません。入浴などで入った水の場合もありますが、外耳炎、外耳道湿疹、中耳炎、鼓膜穿孔などによる耳だれの可能性もあります。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でも、耳だれは外耳道や中耳の病気で生じることがあり、性状も水様性、漿液性、膿性、粘液性、血性などさまざまだと説明しています。[参照:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」]

特に「普段とは明らかに違う」「入浴とは関係なく水が出た」「何度も出てくる」という場合には、耳の中へ綿棒や耳かきを入れず、耳鼻咽喉科で外耳道と鼓膜を確認してもらうのが安全です。

痛み、膿や血、悪臭、聞こえにくさ、耳鳴り、めまい、発熱などを伴う場合は早めの受診が必要です。また、自己判断で耳の奥を掃除したり、手元にある点耳薬や消毒液を入れたりするのは避けましょう。耳だれは見た目だけでは発生場所を判断しにくいため、「耳垢がおかしくなっただけ」と決めつけず、続く場合には専門医に確認してもらうことが大切です。

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