築年数が古く、残置物が多い戸建てでも、買取価格が極端に安かったからといって、その金額がそのまま不動産の市場価値とは限りません。不動産会社による「買取」と、一般の購入希望者を探す「仲介」では価格の決まり方が大きく異なるためです。
特に、旧耐震、下水道未接続、土砂災害警戒区域、墓地への隣接、残置物が大量にあるといった条件が重なる物件では、建物価格だけを見るのではなく、土地としての需要、解体・残置物撤去費用、接道状況、再建築の可否などを含めて判断する必要があります。また、すでに別の買主へ売却の意思を伝えている場合は、価格比較より先に現在の契約関係を確認することが重要です。
- 5万円の買取と150万円の仲介売却は同じ条件ではない
- 築48年だから解体前提とは限らない
- 土地価格から売却価格を逆算してみる
- 旧耐震・下水未接続・土砂災害警戒区域などは価格だけでなく「売りやすさ」に影響する
- ゴミを全部撤去してから売るべきとは限らない
- 低価格物件では仲介手数料にも注意する
- すでに5万円で「売ります」と伝えている場合は新しい募集の前に契約関係を確認する
- 150万円で1カ月だけ掲載する方法に意味はある?
- 250万円から徐々に下げる方法の注意点
- 査定では「いくらで掲載できるか」より根拠を確認する
- 売却前に確認しておきたいチェックポイント
- まとめ:5万円か150万円かではなく「契約状態・手取り・売れる確率」で考える
5万円の買取と150万円の仲介売却は同じ条件ではない
最初に理解しておきたいのが、不動産会社などによる「買取」と「仲介による売却」の違いです。買取では、買主側が購入後の残置物処分、修繕、解体、再販売できないリスクなどを負担します。そのため、一般的に買取価格は市場でエンドユーザーへ販売する場合より低くなりやすい傾向があります。
一方、仲介では不動産会社自身が買うのではなく、広告や不動産流通の仕組みを利用して購入希望者を探します。時間はかかる可能性がありますが、古家を自分で直したい人、土地として購入したい人、賃貸用に再生したい投資家などが現れれば、買取価格を上回る価格で成約する可能性があります。
したがって、「買取なら5万円、仲介なら150万円で販売開始」という査定が出ても、必ずしもどちらかが間違っているわけではありません。売却方法と買主が負担するリスクが違うため、提示価格に大きな差が生まれることがあります。
築48年だから解体前提とは限らない
「築48年だから建物には価値がなく、必ず解体して売る」という考え方も少し単純化しすぎています。中古住宅では築年数だけではなく、構造、雨漏りやシロアリ被害、傾き、基礎や屋根の状態、増改築履歴、耐震性などによって建物の評価が変わります。
例えばDIYやリノベーションを前提として古い戸建てを探している購入者であれば、古家付き土地として購入することがあります。一方、建物の傷みが激しく、改修費が新築に近い金額になるような物件なら、購入希望者が「解体費を差し引いた土地価格」で判断する可能性が高くなります。
つまり「築何年を超えたら解体」という一律の境界線があるわけではありません。築48年でも利用できる建物はありますし、築年数がもっと浅くても状態次第では解体前提になる場合があります。YouTubeなどのリノベーション事例は参考になりますが、再生可能かどうかは個々の建物で異なる点には注意が必要です。
土地価格から売却価格を逆算してみる
古家の価格を考えるときは、近隣の土地の売出価格が参考になります。ただし、「売出価格」と「実際に売れた成約価格」は別物です。例えば近隣の30坪の更地が200万円で半年以上売れていない場合、単純に坪単価約6.7万円として自分の35坪に掛ければ約233万円になりますが、その金額で売れると断定することはできません。
むしろ長期間売れていないという事実は、その地域ではその価格でも需要が強くない可能性を示す材料になります。さらに古家付き物件では、残置物処分費、解体費、下水道への接続費用などを購入希望者が考慮して値下げ交渉することがあります。
例えば土地として200万円程度の価値を期待できるとしても、購入後に残置物処分と建物解体などで大きな費用が必要なら、買主が提示する金額は大幅に低くなる可能性があります。反対に建物をそのまま利用したい購入者が見つかれば、解体費を前提としない価格交渉ができることもあります。
旧耐震・下水未接続・土砂災害警戒区域などは価格だけでなく「売りやすさ」に影響する
古い戸建ての場合、価格以外にも確認する項目があります。代表的なのが接道条件、再建築の可否、境界、上下水道、建物の登記状況、増築部分、耐震性、災害リスクなどです。
特に土砂災害警戒区域などに該当する場合、購入希望者が災害リスクを気にして候補から外すことがあります。墓地への隣接についても法的な問題とは別に、購入者の好みによって需要が限定される可能性があります。
一方で、こうした条件があるから「5万円でしか売れない」と直ちに決まるわけでもありません。価格を下げれば検討する人、立地を気に入る人、資材置場やセカンドハウスなど別の用途を考える人が現れる可能性もあるためです。
ゴミを全部撤去してから売るべきとは限らない
大量の残置物がある場合、売主側ですべて撤去すると内覧時の印象は良くなります。しかし、数十万円の撤去費を支払ったからといって、売却価格が同額以上高くなる保証はありません。
例えば残置物撤去に60万円かけ、売却価格が50万円しか上昇しなければ、経済的には撤去しない方が有利だった計算になります。反対に残置物によって建物内部を確認できず購入希望者が判断できない状態なら、ある程度整理することで売却しやすくなる可能性があります。
そのため、「売主が全部撤去」「買主が現状のまま引き取る」「売買契約成立後に売主が撤去」といった複数条件で査定してもらう方法があります。売出価格ではなく、最終的に手元にいくら残るかという手取り額で比較することが重要です。
低価格物件では仲介手数料にも注意する
低価格の不動産では、売買価格に対して仲介手数料が非常に大きく見える場合があります。現在は800万円以下の宅地・建物について、一定の条件のもとで「低廉な空家等」の媒介報酬に関する特例があり、宅建業者が依頼者一方から受け取れる報酬について税込33万円までの上限が設けられています。
そのため、「5万円で売却するのに仲介手数料が33万円」というように、売却価格より仲介手数料の方が高くなるケースも制度上想定され得ます。ただし、33万円が自動的に必ず請求されるわけではありません。実際の報酬額や特例の適用については、媒介契約を結ぶ際に不動産会社へ確認し、書面に記載された金額を確認することが大切です。
例えば150万円で売却できても、そこから仲介手数料、残置物撤去費、測量費、登記関係費用などが必要になれば手取り額は小さくなります。逆に5万円で現状渡しができ、売主負担となる費用がほとんどない条件なら、金額だけでは比較できないメリットがあります。
すでに5万円で「売ります」と伝えている場合は新しい募集の前に契約関係を確認する
ここは非常に重要です。別の買主から5万円という提示を受けて承諾し、その後に契約書が作成されているような状況では、単純に「まだ契約書へ署名していないから自由に他へ売れる」と自己判断しない方が安全です。
不動産売買では、これまでのやり取り、合意した内容、契約成立時期について当事者間の認識が異なるとトラブルになることがあります。また、間に不動産会社が入っている場合は媒介契約の内容についても確認する必要があります。
別の不動産会社で150万円や250万円の販売活動を始める前に、最初の不動産会社へ現在どのような契約状態なのかを確認することをおすすめします。すでに売買契約が成立している可能性を指摘された場合や説明に納得できない場合は、宅地建物取引に詳しい弁護士などの専門家へ契約書案やこれまでのやり取りを見せて確認する方が安全です。
150万円で1カ月だけ掲載する方法に意味はある?
法的・契約上の問題がなく自由に売却活動ができることを確認できたなら、一定期間だけ市場へ出して反応を見るという方法自体には合理性があります。ただし、1カ月で売れなかったから「150万円では絶対売れない」と判断するのは早い場合があります。
人口規模が小さく不動産取引件数の少ない地域では、購入希望者が現れるまで数カ月以上かかることもあります。特に旧耐震、残置物あり、災害警戒区域など複数の条件がある物件なら、一般的な中古住宅より購入者層が限定されます。
また、「ポータルサイトへ掲載する」ことと「適正価格で売れる」ことも別です。SUUMOやアットホームなどで多くの人に見てもらえることには意味がありますが、問い合わせ件数、内覧件数、価格交渉の内容を記録して価格調整の材料にすることが重要です。
250万円から徐々に下げる方法の注意点
高めの価格からスタートして徐々に下げる販売方法もあります。ただし、周辺相場から大幅に離れた価格で長期間掲載すると、購入希望者や不動産会社から「ずっと売れていない物件」と認識されることがあります。
例えば250万円で2〜3カ月、200万円でさらに数カ月、150万円へ値下げという方法を取ると、その間も固定資産税や建物管理などの負担は続きます。早く手放したい場合には、最高価格より売却期間を優先した方が合理的なケースもあります。
そこで「最低でも50万円は手元に残したい」「半年以内に処分したい」など、価格と期限を最初に決める方法があります。目的が明確なら、150万円で一定期間販売し、問い合わせがほぼなければ100万円、50万円などへ見直すという判断もしやすくなります。
査定では「いくらで掲載できるか」より根拠を確認する
不動産会社が「150万円で掲載できます」と言うことと、「150万円で売れる可能性が高い」ということは同じではありません。媒介契約を取りたい会社が高めの査定価格を提示することもあり得るため、査定額の根拠を確認することが重要です。
具体的には、近隣の売出物件だけでなく実際の成約事例、土地の坪単価、接道状況、再建築の可否、残置物撤去費、解体費、上下水道、災害リスクなどをどのように査定へ反映したのか聞いてみます。
さらに「現状渡しならいくら」「残置物撤去後ならいくら」「更地ならいくら」という3パターンで想定成約価格と売却費用を出してもらうと比較しやすくなります。査定額そのものではなく、最終的な手取り額と売却可能性を見るのがポイントです。
売却前に確認しておきたいチェックポイント
条件の悪い古家ほど、価格だけで判断すると後から想定外の費用や契約上の問題が出やすくなります。少なくとも次の項目を整理してから売却方法を決めると判断しやすくなります。
- 最初に5万円を提示した相手との売買契約が現在どういう状態なのか
- 不動産会社との媒介契約を締結しているか、その種類と有効期間
- 仲介手数料はいくらなのか
- 残置物を誰が撤去する契約なのか
- 土地・建物の登記内容が現況と一致しているか
- 接道条件を満たし再建築できる土地なのか
- 境界が確定しているか
- 下水未接続によって購入後に必要となる費用
- 土砂災害警戒区域などの指定内容
- 近隣の「売出価格」だけでなく成約価格
- 150万円、100万円、50万円で売却した場合の手取り額
特に契約関係を整理しないまま別の買主を募集することは避けたいところです。仕事上、地元の不動産会社と今後も接点が生じる可能性がある場合にも、連絡を放置するより現在の意思を明確に伝えて整理する方が不要なトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ:5万円か150万円かではなく「契約状態・手取り・売れる確率」で考える
築48年、残置物多数、旧耐震、下水未接続、土砂災害警戒区域などの条件がある戸建てでも、築年数だけを理由に「建物は必ず解体」「5万円でしか売れない」と決めることはできません。買取と仲介では価格形成の仕組みそのものが異なるため、仲介で市場の反応を確認することには意味があります。
ただし、すでに別の相手へ売却を承諾し契約書まで準備されている場合には、150万円で販売を始める前に現在の契約状態を確認することが最優先です。その問題が解消されているなら、複数社から査定根拠を聞き、近隣の成約事例と売出事例を比較しながら価格を設定するとよいでしょう。
最終的には「5万円か150万円か」という表面上の売却価格だけでなく、仲介手数料、残置物処分、解体・測量・登記などの費用、売却までに必要な期間を差し引いた手取り額で比較します。古家は一般的な住宅より買い手が見つかるまで時間がかかることもあるため、希望価格と同時に「いつまでに売れなければ値下げするか」という期限も決めておくと、感情に左右されにくい売却判断ができます。

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