緊張すると吐き気・嗚咽が出るのはなぜ?予定の直前に悪化する原因と受診の目安を解説

メンタルヘルス

緊張する場面になると吐き気がしたり、実際には吐かないものの強い嗚咽が出たりすることがあります。さらに症状を何度も経験すると、本人には緊張している自覚がない予定でも、外出直前や特定の場所へ行く前になると吐き気が現れる場合があります。

こうした症状には、不安やストレスに伴う自律神経の反応、過去の経験から生じる予期不安などが関係することがあります。一方、吐き気は消化器疾患をはじめ身体的な病気でも起こるため、症状だけからパニック障害や嘔吐恐怖症などと自己判断することはできません。長期間続いて生活に支障がある場合には、身体面と心理面の両方から原因を確認することが大切です。

緊張や不安で吐き気が起こることはある

不安や緊張は気持ちだけの問題ではなく、身体にもさまざまな反応を起こします。強いストレスを感じると自律神経の働きが変化し、胃の不快感、吐き気、動悸、発汗、震え、息苦しさなどが現れることがあります。

厚生労働省が紹介しているパニック発作の症状にも、吐き気や腹部の不快感が含まれています。ただし、パニック発作では複数の症状が急激に現れることが診断上のポイントになるため、吐き気だけがあるからといってパニック障害だと判断できるわけではありません。[参照]

例えば、マラソン大会、試験、歯科治療、人前で話す場面などで毎回吐き気が起きる場合、その状況に対する緊張が身体症状として胃腸に強く現れている可能性があります。人によって不安の現れ方は異なるため、動悸よりも吐き気が目立つケースも考えられます。

緊張していない予定でも吐き気が出る理由

分かりにくいのが、楽しい外出や親しい友人との食事など、本人としては緊張する理由がない場面でも吐き気が起こるケースです。このような場合に考える必要があるものの一つが予期不安です。

過去に特定の状況で激しい吐き気を経験すると、次回から「また気持ち悪くなったらどうしよう」「外出先で吐いたら困る」といった不安が生まれることがあります。そして、その不安によって実際に吐き気が起きると、「やはり外出すると気持ち悪くなる」という経験が強化され、症状を繰り返すことがあります。

例えば「友人と会うこと」そのものは楽しみでも、「家を出る」というタイミングが過去の吐き気と結び付いていれば、出発時刻が近づいただけで身体が反応する可能性があります。本人が頭では緊張していないと思っていても、身体反応まで同じとは限りません。

厚生労働省も、パニック障害では発作を経験した後に「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安が生じ、外出などを避けるようになることがあると説明しています。[参照]

パニック障害・嘔吐恐怖症などは症状だけでは判断できない

強い吐き気についてインターネットで検索すると、「パニック障害」「不安障害」「嘔吐恐怖症」といった言葉が見つかることがあります。しかし、検索結果と自分の症状が似ているという理由だけで病名を決めるのは避けたほうがよいでしょう。

厚生労働省が掲載しているパニック発作の診断基準では、動悸、発汗、震え、息苦しさ、胸部不快感、吐き気、めまい、死への恐怖など複数の項目が示されています。典型的なパニック発作では、これらのうち複数の症状が突然現れて短時間でピークに達します。[参照]

一方、嘔吐することへの強い恐怖が中心になっている場合には、嘔吐への恐怖が症状の悪循環に関係している可能性もあります。「吐いたらどうしよう」という考えによって吐き気が強くなり、その吐き気を感じることでさらに恐怖が増す、といった流れです。

重要なのは病名を自分で当てることではなく、いつ、どのような状況で、どの程度の症状が起きるのかを医療機関に伝えることです。診断では症状の経過や生活への影響、身体疾患や薬・飲酒など他の原因の可能性も含めて評価されます。

まず身体的な原因がないか確認することも大切

吐き気は不安だけで起こる症状ではありません。胃腸の病気、逆流性食道炎、薬の影響、飲酒、睡眠不足などさまざまな要因で起こります。そのため、長期間にわたって繰り返す吐き気を「精神的なものだから」と決めつけるのも適切ではありません。

特に以前とは症状の出方が変化した、吐き気の頻度が増えている、食事に関係なく症状が出るなどの場合には、一度かかりつけ医や内科・消化器内科などへ相談し、身体的な原因について確認することが選択肢になります。

身体的な異常が見つからず、不安や特定の状況との関連が強い場合や、外出・仕事・歯科受診など日常生活に支障が出ている場合には、心療内科や精神科などへの相談も検討できます。長年続いている症状であっても、「昔からこうだから」と我慢し続ける必要はありません。

受診時は「吐き気がする」だけでなく経過を伝える

診察では、症状の経過を具体的に伝えるほど原因を検討しやすくなります。例えば「子どもの頃から緊張すると吐き気が出る」「実際に吐くことはほとんどない」「最近は楽しい外出でも出発直前になると嗚咽する」といった情報は重要です。

スマートフォンのメモなどに、症状が起きた日時、直前にしていたこと、吐き気の強さ、動悸・発汗・腹痛・めまいなど他の症状の有無、食事や飲酒、服用した薬、症状が治まるまでの時間を記録しておく方法もあります。

例えば「18時に友人と食事の予定。17時30分ごろから吐き気が始まり、玄関で強くなった。動悸はなし。30分ほどで軽減」のように記録します。数回分を並べることで、医師にも症状のパターンが伝わりやすくなります。

エチゾラムを自己判断で頓服する場合は特に注意が必要

エチゾラムは医師の処方が必要な薬です。症状が軽くなるように感じても、処方された目的・用法・用量を超えて自己判断で服用方法を変更しないことが重要です。吐き気に対してどのように使用してよいかは、処方した医師または薬剤師に確認してください。

また、飲みに行く前の吐き気に対してエチゾラムを使用する場合には、アルコールとの関係に特に注意が必要です。PMDAが公開しているエチゾラムの添付文書では、アルコール(飲酒)との併用により精神機能や知覚・運動機能が低下するおそれがあるとして、併用注意とされています。[参照]

「薬を飲んで症状を抑えてから飲酒する」という使い方を自己判断で行うのは避け、飲酒との間隔を含めて処方医や薬剤師に相談してください。現在の症状についても処方医に伝えておくと、薬が適切なのか、別の治療方法を検討すべきなのかを判断してもらえます。

吐き気への恐怖から予定を避け始めたら早めに相談を

注意したいのは、吐き気そのものだけでなく、吐き気を恐れて行動範囲が狭くなっていくことです。「外出すると吐きそうだから約束を断る」「電車に乗れない」「歯医者に行けない」「食事会を避ける」といった状態が続くと、生活への影響が大きくなります。

不安に関連した症状には、状態に応じて心理療法や薬物療法など複数の治療方法があります。どの治療が適しているかは診断や症状によって異なるため、自己流で対処を続けるより、専門家と一緒に原因と対策を整理するほうが安全です。

また、繰り返し実際に嘔吐する、水分が取れない、強い腹痛がある、吐血する、黒い便が出る、意識がおかしい、急激に状態が悪化するといった場合には、不安によるものと決めつけず速やかに医療機関へ相談してください。

まとめ:緊張性の吐き気は「予期不安」も含めて医療機関で相談できる

緊張や不安によって吐き気や胃の不快感が起こることはあります。また、過去に強い吐き気を経験すると、「また起きるのではないか」という予期不安によって、本人には緊張する理由がない予定でも症状が現れる可能性があります。

ただし、吐き気だけでパニック障害や嘔吐恐怖症などの病名を判断することはできません。身体的な病気や薬、飲酒などの影響も含めて確認する必要があります。長期間繰り返している、症状が以前より強くなった、外出など日常生活に影響している場合には、まず医療機関で相談することが大切です。

特にエチゾラムを服用している場合は、自己判断で服用方法を変えたり飲酒と組み合わせたりせず、現在起きている吐き気について処方医に具体的に伝えてください。症状が起きる場面や時間、他の身体症状などを記録して持参すると、原因を整理する手掛かりになります。

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