顎変形症の外科的矯正治療は、顎の手術が終わった時点ですべての治療が終了するわけではありません。手術後には、顎の骨や噛み合わせが安定しているかを確認する口腔外科での経過観察と、歯並び・噛み合わせを仕上げる術後矯正、その後の後戻りを防ぐ保定が続きます。
通院期間は病院や術式、骨の固定方法、術後の状態などによって異なるため、「手術後○年で必ず終了」と一律には決まりません。実際に術後5年程度まで経過確認を行う大学病院もあり、長期的な評価が必要と説明している医療機関もあります。
一方、矯正歯科では手術後すぐに保定へ移るとは限らず、まず数か月から1年以上の術後矯正を行い、その後に保定装置へ移行するのが一般的です。ここでは、顎変形症の手術後に「どこへ、何のために、どのくらい通うのか」を整理します。
顎変形症の手術後は口腔外科と矯正歯科の両方に通うことがある
顎変形症では、口腔外科医と矯正歯科医が連携して治療を進めることが一般的です。基本的な流れは「術前矯正→顎矯正手術→術後矯正→保定」と考えると分かりやすいでしょう。
手術を担当した病院では、骨の治癒や顎の位置、神経症状、顎関節、噛み合わせなどの経過を確認します。一方の矯正歯科では、手術によって大きく改善した上下顎の位置関係に合わせて歯を細かく動かし、噛み合わせを完成させていきます。
つまり、手術後に大学病院などの口腔外科と矯正歯科の両方へ通っていても珍しいことではありません。それぞれ診察している目的が異なります。
手術した病院には何年間通うのか
手術した病院への通院期間にはかなり幅があります。例えば自治医科大学医学部歯科口腔外科学講座では、顎変形症について術後5年程度は経過を確認し、長期間の定期的な通院をお願いしていると案内しています。[参照]
東京大学医学部附属病院も、顎変形症について手術後は矯正歯科医院で術後矯正を行う一方、長期的な評価が必要なため口腔外科への定期受診も必要と説明しています。[参照]
したがって「手術から1年経ったから手術した病院への通院も終了する」とは限りません。術式や病院の方針によっては数年間にわたり、間隔を空けながら定期診察を続けることがあります。
術後すぐと数年後では通院頻度が違う
「術後5年間通う」と聞くと、5年間ずっと毎月通院するように感じるかもしれませんが、通常はそういう意味ではありません。術後早期ほど診察が重要になるため受診間隔が短く、状態が安定するにつれて間隔が長くなることがあります。
例えば手術直後には、傷の状態、感染の有無、骨の位置、噛み合わせ、腫れ、開口状態、知覚の変化などを確認します。その後、問題なく回復していけば数か月後、1年後といった長期的な評価へ移っていくことがあります。
具体的な診察時期は術式と医療機関によって異なるため、退院時や次回診察時に「今後は何年間、どの程度の間隔で通院予定ですか」と担当医へ確認しておくと予定を立てやすくなります。
プレート除去をする場合は通院期間にも関係する
顎の骨切り手術では、移動した骨をプレートやスクリューで固定する場合があります。使用する材料や治療方針によっては、その後にプレートを取り除く手術が予定されることがあります。
例えば自治医科大学では、術後1年程度を目途としてプレートとスクリューの除去を行う場合があると案内しています。[参照]
ただし、すべての患者が同じ時期にプレート除去を行うわけではありません。チタンプレートを残す方針の場合や、吸収性材料が使われている場合などもあるため、自分の手術で何が使用されているかを担当医へ確認する必要があります。
矯正歯科では手術後もしばらく「術後矯正」が続く
顎の手術後、すぐにブラケットなどの矯正装置を外して保定装置へ移行できるとは限りません。手術によって顎の骨格的な位置を改善した後、歯を細かく動かして上下の噛み合わせを仕上げる術後矯正が行われます。
慶應義塾大学病院では、手術後2か月ほどして矯正治療を再開し、術後矯正には6か月から1年程度を要すると説明しています。その後、良好な噛み合わせとなれば保定装置を装着します。[参照]
また、九州大学病院の案内では、手術後の歯の微調整を行う術後矯正について約1年~1年6か月としています。このように術後矯正の期間にも個人差・施設差があります。
保定装置に変わったら矯正治療は終わりなのか
ブラケットなどが外れてリテーナー(保定装置)へ変わると、大きな治療が終わったように感じます。しかし、矯正歯科ではここから「保定」という重要な期間に入ります。
歯を移動した直後は、歯の周囲の骨や歯肉などが新しい位置に十分適応していません。そのままにすると歯が元の方向へ移動する「後戻り」が起こる可能性があります。
日本矯正歯科学会は、歯の移動完了直後は歯の周囲組織が十分に安定していないため、通常は1年以上、できるだけ毎日保定装置を使用する必要があると説明しています。[参照]
保定中も矯正歯科への定期通院が必要
保定装置になった後も、一般的には定期的に矯正歯科を受診します。診察では歯並びや噛み合わせに後戻りがないか、保定装置が適合しているか、破損していないかなどを確認します。
保定開始直後と、歯並びが十分に安定した後では通院間隔が変わることがあります。最初は比較的短い間隔で確認し、安定してくれば数か月ごとなどへ間隔を延ばすという考え方です。ただし具体的な頻度は医院や症例によって異なります。
横浜市立大学附属病院でも、治療後は保定装置を使用し、後戻りが落ち着いてきた時点で使用時間を徐々に減らして様子を見ると説明しています。[参照]
顎変形症では「口腔外科の経過観察」と「矯正の保定」を分けて考える
顎変形症の術後通院が分かりにくい理由の一つは、複数の治療が並行して進むためです。大まかに整理すると次のようになります。
| 通院先 | 主な目的 | 期間の考え方 |
|---|---|---|
| 手術をした口腔外科 | 骨・顎位・神経症状・顎関節・噛み合わせなどの術後評価 | 病院によっては数年間の長期観察 |
| 矯正歯科(術後矯正) | 歯を動かして最終的な噛み合わせを整える | 半年~1年以上かかる場合がある |
| 矯正歯科(保定) | 歯並び・噛み合わせの後戻りを防ぐ | 少なくとも1年以上の装置使用が一般的で、その後も症例に応じて管理 |
このため、例えば「術後矯正が1年で終わった」という場合でも、手術した病院の定期診察と矯正歯科での保定管理は、その後も続く可能性があります。
保定装置は何年使えば外してよいのか
保定については「○年経てば完全に不要」と単純に決められない点にも注意が必要です。歯は矯正経験の有無にかかわらず、加齢や噛み合わせ、歯周組織などの影響を受けて生涯にわたり少しずつ位置が変化する可能性があります。
そのため一定期間は長時間リテーナーを使用し、安定後は夜間のみなどへ使用時間を減らしながら長期間使用する方針を採る矯正歯科もあります。
自己判断で保定装置をやめるのではなく、装着時間を減らしてよい時期を担当の矯正歯科医に確認することが重要です。
通院が予定より長くなることもある
術後の経過や歯の動きには個人差があります。骨格や噛み合わせの安定に時間がかかる場合、術後矯正が予定より長くなることもあります。
また、顎関節の症状、しびれなどの知覚異常、プレートに関連した問題、歯並びの後戻りなどがあれば、通常より長期の経過観察が必要になる可能性があります。
反対に経過が非常に安定していれば、受診の間隔が長くなることもあります。「何年間」という年数だけでなく、なぜ通院しているのかを理解しておくことが大切です。
転居などで長期間通院できなくなる場合は早めに相談する
顎変形症は治療期間が長いため、進学、就職、転勤、引っ越しなどで現在の病院へ通い続けることが難しくなるケースもあります。
その場合は自己判断で通院を中断せず、まず担当の口腔外科医と矯正歯科医へ相談します。必要に応じて紹介状や画像検査、手術記録、矯正治療の経過などを準備してもらい、転居先の医療機関へ引き継げる場合があります。
特に顎変形症は口腔外科と矯正歯科の連携が重要な治療なので、引っ越しが決まった段階で早めに相談しておくとスムーズです。
異常を感じたら次回予約まで待たずに相談する
術後の定期診察が半年後や1年後になっていても、異常が生じた場合まで予約日を待つ必要はありません。
急に噛み合わせが変わった、顎周辺の腫れや痛みが出た、口の中からプレート付近が露出しているように感じる、保定装置が入らなくなった、歯並びが急に変化した、といった場合には担当医療機関へ相談するのが安全です。
特に術後の症状については、一般的な情報だけで正常・異常を判断することはできません。手術方法や画像、術後経過を把握している担当医の評価が重要になります。
まとめ:顎変形症の術後通院は数年続くことがあり、保定後も定期管理が必要
顎変形症では、手術が終わって退院した段階で治療完了ではありません。手術した口腔外科では長期的に顎の状態を確認する場合があり、実際に術後5年程度の経過観察を行っている大学病院もあります。
矯正歯科では手術後に半年~1年以上程度の術後矯正が行われることがあり、噛み合わせが整った後に保定装置へ移ります。日本矯正歯科学会では通常1年以上、できるだけ毎日保定装置を使用する必要があると説明しており、保定期間中も定期的な管理が重要です。
最終的な通院期間は、手術方法、プレート除去の有無、噛み合わせ、後戻りの程度、各医療機関の方針によって変わります。自分の場合の終了時期を知りたいときは、口腔外科には「術後何年まで経過観察する予定か」、矯正歯科には「保定装置を何年間・1日何時間使用し、定期診察をいつまで続ける予定か」をそれぞれ確認すると、今後の治療スケジュールを把握しやすくなります。


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