精神科や心療内科を予約できても、初診まで数週間から数か月待つことがあります。しかし、強い不安やパニック、混乱、眠れない状態などが続き、日常生活を保つことが難しくなっている場合、予約した精神科の初診日まで何もせず耐え続ける必要はありません。
精神的な不調には、予約済みの医療機関以外にも、別の精神科・心療内科、かかりつけ医、精神保健福祉センター、保健所、自治体の相談窓口など複数の相談先があります。また、自分や他人を傷つけそう、現実の状況を判断できないほど混乱しているなど安全を保てない状態では、通常の予約を待つのではなく緊急の医療につなげることが重要です。
この記事では、精神科の予約日まで待つことがつらい場合に利用できる相談先、緊急性を判断するポイント、受診までの過ごし方を整理します。なお、精神症状には身体疾患や薬物などが関係する場合もあるため、自己判断だけで病名を決めないことも大切です。
精神科の予約が先でも、症状が強ければ別の相談先を利用できる
「予約した病院が2か月後だから、それまでは待つしかない」と考えてしまいがちですが、医療機関の予約日と、現在の症状に対して必要な支援のタイミングは別の問題です。症状が悪化している場合には、予約日を待たずに相談先を探すことができます。
まず予約している精神科・心療内科に電話し、「初診予約は○月ですが、現在は毎晩強いパニックと混乱が起こり、日常生活に支障があります」など、現在の状態を具体的に伝えてみる方法があります。キャンセル枠や早い診察日の案内が可能か、緊急時にはどこへ相談すべきかを確認できる場合があります。
また、「良さそうな病院を予約できたから、ほかの病院には行ってはいけない」ということもありません。現在の症状への対応を優先し、より早く診察可能な精神科・心療内科を探す選択肢もあります。後日、本来希望していた医療機関で治療方針について相談することも可能です。
今すぐ利用できる公的な相談窓口がある
どこの医療機関に相談すればよいかわからない場合には、厚生労働省が案内している「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556があります。電話をかけた地域の都道府県・政令指定都市が実施する公的なこころの相談窓口につながります。受付時間は地域によって異なるため、最新情報は厚生労働省の案内で確認してください。[参照]
また、都道府県・政令指定都市には精神保健福祉センターが設置されています。ここでは、こころの健康や精神科医療など精神保健福祉に関する相談を電話や面接で受け付けています。医師、保健師、精神保健福祉士などの専門職が配置されているセンターもあり、「病院の予約まで待てないほどつらいが、どこへ行けばいいかわからない」といった段階でも相談先の候補になります。[参照]
地域の保健所・保健センターも相談先になります。厚生労働省は、医療機関を受診すべきかわからない場合の公的な相談先として、地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターなどを案内しています。
夜間に症状が強くなる場合はどうする?
精神症状は必ずしも医療機関の診療時間内に悪化するとは限りません。特に夜になると不安が急激に強くなる、パニックになって一人では落ち着けない、混乱して自分の行動をコントロールできなくなるといった場合には、日中の相談先だけでは十分でないことがあります。
都道府県によっては、夜間・休日に精神科の救急医療機関を案内する精神科救急の相談・案内窓口があります。制度や名称、利用条件、受付時間は地域によって異なるため、「○○県 精神科救急」「○○県 精神科救急情報センター」などで自治体の公式情報を確認するか、精神保健福祉センターなどへ問い合わせておくと安心です。
例えば「毎晩22時ごろから症状が悪化する」という傾向がわかっているなら、比較的落ち着いている昼間のうちに、夜間に悪化した場合の連絡先をスマートフォンへ登録しておきます。危機の最中に一から相談先を検索する負担を減らすことができます。
「つらい」と「救急対応が必要」は分けて考える
強い不安やパニックがあるからといって、すべての場合で救急車が必要というわけではありません。一方、精神的な問題だから救急を利用してはいけないということでもありません。本人や周囲の安全を維持できるかどうかが重要な判断材料になります。
たとえば、自殺や自傷を実行しそうで自分では止められない、他人を傷つけそう、極端な混乱で安全な行動が取れない、意識がおかしい、けいれんがある、激しい胸痛や呼吸困難など重大な身体症状を伴う場合などは、通常の精神科予約を待つ状況ではありません。日本では119番への連絡を含め、緊急の医療につなげる必要があります。
また、「これはパニック発作だから大丈夫」と本人が決めつけることにも注意が必要です。動悸、息苦しさ、震え、めまい、意識の変化などは精神的な不安以外の身体疾患でも生じることがあります。初めて経験する激しい症状や、いつもと明らかに違う症状では身体的な原因も含めて医療機関に相談することが大切です。
電話相談では何を伝えればいい?
精神的に混乱しているとき、「何から説明すればいいかわからない」ということがあります。きれいに説明する必要はありません。相談員や医療機関には、現在もっとも困っている症状、いつから続いているか、どの程度生活に支障があるか、安全を保てているかを優先して伝えます。
例えば「精神科は2か月後に予約しています。しかし1週間ほど前から毎晩パニック状態になり、叫びそうになるほど混乱します。今夜も症状が出ています。自宅で予約日まで待ってよい状態なのか、今日相談・受診できるところがあるのか知りたいです」と伝えると、状況が比較的わかりやすくなります。
服用している薬がある場合には薬の名前と量、ほかの病気で治療中の場合にはその内容も伝えます。飲酒や市販薬、サプリメントなどについて尋ねられた場合も、安全な判断に必要な情報なので正確に伝えることが重要です。
受診までの間に「一人で耐える」以外の準備をする
診察まで時間がある場合には、症状を記録しておくと受診時にも役立ちます。「症状が始まった時刻」「その直前にしていたこと」「動悸・息苦しさ・震え・吐き気などの症状」「何分程度続いたか」「睡眠時間」「服薬」「カフェインや飲酒」などを簡単にメモします。
ただし、記録そのものが負担になる場合には無理をする必要はありません。スマートフォンに「22時ごろ、強い不安・混乱、約30分」のように一行だけ残す方法でも十分です。診察時に経過を説明しやすくなります。
また、強い発作が繰り返されている場合には、可能であれば信頼できる家族や友人など一人に現在の状況を知らせておくことも選択肢です。「夜に症状が悪化したら電話してもいいか」「自分で安全を保てなくなったら救急につなぐのを手伝ってほしい」など、具体的に頼めることを決めておくと危機時の負担を減らせます。
費用が心配な場合も相談窓口に伝えてよい
「受診したいけれど費用が心配」という事情は珍しいものではありません。費用面の問題があるからといって、症状が危険な状態になるまで相談を我慢する必要はありません。精神保健福祉センターや保健所などの公的機関に、医療面だけでなく「費用の問題があり受診先に困っている」と事情を伝えて相談することもできます。
継続的な精神科治療が必要になった場合には、一定の要件のもと精神科の通院医療にかかる自己負担を軽減する自立支援医療(精神通院医療)という制度もあります。対象になるかどうかや手続きについては、市区町村の担当窓口や医療機関で確認できます。
大切なのは、「お金がないから2か月耐える」「予約した病院以外には相談できない」という二択にしないことです。医療・保健・福祉の窓口を組み合わせて利用できる場合があります。
電話で話すこと自体が難しい場合の相談方法
パニックや強い不安があると、電話で知らない人に状況を説明すること自体が難しい場合があります。厚生労働省の「まもろうよ こころ」では、電話だけでなくSNSなどで利用できる相談窓口も案内されています。[参照]
相談窓口は「自殺を考えている人しか利用してはいけない」とは限りません。強い不安、生きづらさ、こころの悩みなどについて利用できる窓口があります。厚生労働省が案内するよりそいホットライン(0120-279-338)なども選択肢です。受付条件や最新の対応時間は公式情報を確認してください。
電話をかける前に、「精神科予約は○月○日」「毎晩パニックになる」「今は一人」「自分を傷つける考えはある/ない」といった最低限の情報を紙に書いておくと、途中で頭が真っ白になった場合にも伝えやすくなります。
まとめ|精神科の初診日まで限界状態で待ち続ける必要はない
精神科の予約が数週間・数か月先であっても、現在の症状が強ければ、予約日まで一人で耐える必要はありません。予約中の医療機関への再相談、早く受診できる別の精神科・心療内科、精神保健福祉センター、保健所、こころの健康相談統一ダイヤルなど、複数の経路があります。
特に毎日のように強いパニックや混乱が起きている場合には、「予約があるから大丈夫」ではなく、現在の状態を基準に相談することが大切です。そして、自分や他人を傷つける可能性が切迫している、判断力を失うほど混乱して安全を確保できない、重大な身体症状を伴うといった場合には、通常の予約を待たず119番など緊急の医療につなげます。
精神的な危機への対応は、「耐えられなくなってから助けを求める」必要はありません。比較的落ち着いている時間帯に相談先を確認し、悪化したときに誰へ連絡するかを決めておくことも、受診までの重要な準備になります。


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