髪の毛を繰り返し抜いたり、むしったりする行動が続き、部分的に髪が薄くなっている人を見かけることがあります。単なる癖のように見えることもありますが、自分でやめようと思ってもやめにくい状態では、医学的には抜毛症(トリコチロマニア)などが関係している可能性があります。
特に、脱毛が目立つほど繰り返している、頭皮から出血している、本人がやめたくてもやめられないといった場合は、単純に「ストレスで髪を触っている」と決めつけないことが大切です。ここでは、髪をむしる行動とストレスの関係、抜毛症の特徴、出血している場合の注意点、周囲の人ができる対応について解説します。
髪の毛を繰り返しむしる行動は「抜毛症」の可能性がある
抜毛症(トリコチロマニア)は、自分の髪や体毛を繰り返し抜いてしまう状態です。頭髪だけとは限らず、眉毛やまつ毛などが対象になる場合もあります。本人の意思の弱さや単なる悪い癖だけで説明できるものではありません。
例えば、仕事をしながら無意識に髪を触り、そのまま抜いてしまうケースもあれば、髪を抜きたいという強い衝動が生じ、抜くことで一時的に気持ちが落ち着くケースもあります。行動の現れ方には個人差があります。
髪を抜いているという行動だけを見て、第三者が抜毛症だと断定することはできません。円形脱毛症など別の原因による脱毛もあるため、診断は医療機関で行われるものです。
ストレスが原因とは限らないが関係することはある
髪を抜く行動は、不安や緊張、退屈、疲労など特定の状況で増えることがあります。そのため、仕事や人間関係などのストレスが強い時期に目立つようになる人もいます。
一方で、「髪をむしっている=強いストレスを抱えている」と単純には判断できません。本人がほとんど意識せずに行っていることもあり、ストレス以外の心理的・行動的要因が複雑に関係している場合があります。
例えば、パソコン作業中や考え事をしているときだけ髪を触る人もいます。こうした場合、本人にとって髪を触ること自体が習慣化し、その延長として抜く行動が繰り返されている可能性もあります。
髪が薄くなったり出血したりしている場合は軽視しない
繰り返し毛を抜くと、その部分だけ髪が短くなったり、地肌が目立つほど脱毛したりすることがあります。さらに強く引っ張ったり皮膚を傷つけたりすると、頭皮に傷や出血が生じることもあります。
出血するほど頭皮が傷ついている場合には、傷口から細菌が入り炎症や感染につながる可能性もあります。赤み、腫れ、強い痛み、膿などが見られる場合には、皮膚科など医療機関への相談を検討すべき状態です。
また、抜毛行動そのものについて困っている場合には、精神科や心療内科などが相談先になることがあります。まず皮膚の状態について皮膚科で相談し、必要に応じて適切な診療科を案内してもらう方法もあります。
周囲の人が「やめればいい」と注意するだけでは解決しにくい
目の前で髪を抜いている人を見ると、「抜かなければいいのに」「もったいない」と感じるかもしれません。しかし、本人もやめたいのにやめられず悩んでいる可能性があります。
そのため、大勢の前で髪や脱毛部分を指摘したり、「また抜いているよ」と繰り返し注意したりすることは慎重に考える必要があります。恥ずかしさや緊張が強くなり、かえって本人の負担になる可能性があるためです。
職場の同僚など、それほど近い関係ではない場合には、病名を推測して本人に伝える必要もありません。特に外見について「はげている」などと評価することは避け、本人から相談された場合に話を聞くという距離感も大切です。
本人から相談された場合にできること
本人から「髪を抜くのをやめられない」「最近ひどくなっている」と相談された場合は、まず行動を責めずに話を聞くことが重要です。本人が困っているのであれば、医療機関へ相談する選択肢があることを伝えられます。
抜毛症に対しては、状態に応じて認知行動療法などの心理的な治療・支援が検討されることがあります。どの方法が適しているかは本人の状態によって異なるため、自己判断だけで対応するより専門家に相談することが重要です。
また、「仕事中に多い」「考え事をすると触ってしまう」など、どのような状況で行動が起こるのか本人が把握することが、対策を考える手掛かりになる場合もあります。
薄毛そのものと自分で髪を抜く行動は分けて考える
髪が薄く見える原因にはさまざまなものがあります。男性型脱毛症(AGA)、円形脱毛症、皮膚疾患などによる脱毛と、自分で毛を抜くことによって生じる脱毛では原因も対応も異なります。
見た目だけで原因を特定することは難しく、「頭頂部が薄いからAGA」「自分で触っているから抜毛症」と決めつけることはできません。特に複数の原因が重なっている可能性もあります。
そのため、脱毛範囲が広がっている、頭皮に傷がある、本人が行動をコントロールできず困っているといった場合には、専門家による評価を受けることに意味があります。
まとめ:髪をむしる行動はストレスだけで判断せず、出血があるなら医療相談も検討
髪の毛を繰り返しむしる行動には、抜毛症(トリコチロマニア)が関係している可能性があります。ストレスや不安などによって行動が増えることはありますが、第三者が「ストレスが原因」と断定することはできません。
特に、髪が目立って薄くなるほど抜いている場合や、頭皮から出血するほど傷つけている場合には軽視しないほうがよいでしょう。皮膚の傷については皮膚科、抜毛行動をやめられず本人が困っている場合には精神科・心療内科などへの相談が選択肢になります。
周囲の人にできることは、外見や行動をからかったり強く注意したりすることではなく、本人が困っている様子ならプライバシーに配慮しながら接することです。髪を抜く行動には医学的・心理的な背景が存在することがあるため、「単なる癖」「もったいない」で片付けずに考えることが大切です。

コメント