20年以上続く耳鳴りは治らない?慢性耳鳴りの原因・治療と「気になりにくくする」方法を解説

耳の病気

「キーン」「ジー」「ピー」といった音が、周囲では鳴っていないのに耳や頭の中で聞こえる耳鳴り。短期間で消えることもありますが、何年、何十年と続く慢性的な耳鳴りに悩む人もいます。

長期間続いていると「もう治らないのでは」と感じやすいものですが、耳鳴りの医療では音を完全にゼロにすることだけが治療目標ではありません。原因となる病気や難聴を確認したうえで、耳鳴りによる不快感、睡眠への影響、集中しにくさなどを軽減する治療・支援も重要です。

20年以上続いている耳鳴りでも、「長いから何をしても意味がない」と一律に決めることはできません。以前受診してから長期間たっている場合は、現在の聴力や症状を改めて耳鼻咽喉科で評価してもらうことにも意味があります。

長年続く耳鳴りは「完全に消す」ことが難しい場合がある

慢性的な耳鳴りでは、原因によっては耳鳴りそのものを完全に消失させる治療が難しい場合があります。そのため「耳鳴りに効く薬を飲めば必ず音がなくなる」と期待すると、治療とのギャップが生じることがあります。

一方で、耳鳴りへの対処がないという意味ではありません。英国NICEの耳鳴り診療ガイドラインでも、聴覚評価、難聴がある場合の補聴器、耳鳴りによる苦痛に対する認知行動療法(CBT)など、状態に応じた管理方法が示されています。NICE「Tinnitus: assessment and management」[参照]

つまり、慢性耳鳴りでは「音があるか、ないか」だけで治療効果を判断するのではなく、耳鳴りが以前ほど気にならない、眠れるようになる、仕事や趣味へ集中できるようになるといった生活への影響の改善も大切な目標になります。

耳鳴りがあるなら一度は聴力を確認することが重要

耳鳴りと難聴は関連することがあり、自分では「普通に聞こえている」と感じていても、聴力検査をすると特定の周波数で聴力低下が見つかる場合があります。そのため、耳鳴りの評価では聴力検査が重要です。

NICEのガイドラインでも耳鳴りがある人への聴覚評価が推奨されています。さらに、コミュニケーションへ影響する難聴を伴う耳鳴りでは補聴器などの増幅機器が推奨されています。NICE 耳鳴りの評価・補聴器に関する推奨[参照]

例えば20年前に「特に治療法はない」と説明を受けたとしても、その後に加齢などで聴力が変化している可能性があります。長期間検査を受けていないなら、現在の状態を把握する目的で耳鼻咽喉科へ相談する選択肢があります。

難聴を伴う耳鳴りでは補聴器が役立つ場合がある

難聴がある人では、周囲の音が聞こえにくくなることで相対的に耳鳴りが目立つ場合があります。そのようなケースでは補聴器によって周囲の音を聞き取りやすくすることが、耳鳴りへの対処につながる場合があります。

ただし「耳鳴りがある人は全員補聴器を使えばよい」ということではありません。NICEでは、耳鳴りがあっても難聴がない人に耳鳴り対策だけを目的として増幅機器を使用することは推奨していません。NICE 補聴器と耳鳴りに関する解説[参照]

補聴器が適しているかどうかは、耳鳴りの音の大きさだけではなく、聴力検査の結果や日常生活での聞こえ方を含めて判断します。

耳鳴りによる苦痛には認知行動療法という選択肢もある

慢性耳鳴りで重要なのが「音そのもの」と「音によって生じる苦痛」を分けて考えることです。同じ程度の耳鳴りでも、ほとんど意識せず生活できる人もいれば、耳鳴りへ注意が集中し、強い不安や不眠につながる人もいます。

認知行動療法(CBT)は、耳鳴りの音を物理的に消去する治療というより、耳鳴りに対する不安や注意、考え方などへ働きかけ、耳鳴りによる苦痛を軽減することを目的とします。NICEでは、耳鳴りが精神面・社会生活・日常生活へ影響している成人について、耳鳴りに関連したCBTなどの心理的介入を段階的に検討することを推奨しています。NICE 耳鳴りに対する心理療法[参照]

「心理的な治療」と聞くと、耳鳴りが気のせいだと言われているように感じるかもしれませんが、そういう意味ではありません。実際に感じている耳鳴りによって生活が支配されにくくするための治療方法の一つです。

無音にすると耳鳴りが目立つ場合がある

周囲が静かになると耳鳴りが目立ち、寝る前に特につらくなる人もいます。その場合、完全な無音にこだわらず、生活音や穏やかな環境音を利用すると過ごしやすくなることがあります。

例えば就寝時にエアコンや空気清浄機の小さな運転音、雨音などの環境音を利用し、耳鳴りだけが際立たない環境を作る方法があります。ただし、イヤホンで大音量を流して耳鳴りを無理にかき消す方法は聴覚への負担になる可能性があるため避けましょう。

なお、音を利用する「サウンドセラピー」についてはさまざまな方法があり、NICEは単独療法として特定の方法を推奨できるだけの十分なエビデンスがないとしています。したがって、高額な機器や「耳鳴りが必ず消える」とうたうサービスを安易に選ばないことも大切です。NICE サウンドセラピーのエビデンス[参照]

20年続いていても症状が変化したら再受診したほうがよい

何十年もほぼ同じ耳鳴りが続いているケースと、最近になって性質が変化したケースは分けて考える必要があります。「昔から耳鳴りがあるから今回も同じ」と自己判断しないことが重要です。

特に片側だけの耳鳴りが続く、左右で聴力に差がある、脈拍に合わせてドクドク・ザーザーと聞こえる、最近急に聴力が落ちた、強いめまいや神経症状を伴うといった場合は医療機関での評価が必要です。

NICEでは、突然の難聴を伴う耳鳴り、神経症状や制御できない急性のめまいを伴うケースなどについて迅速な評価を推奨しています。また、持続する片側性耳鳴りや拍動性耳鳴りも専門的な評価を検討する対象としています。NICE 耳鳴りの紹介・緊急評価基準[参照]

「治らない」と言われたときに確認しておきたいこと

医療機関で「耳鳴りは治らない」と説明された場合、その意味を確認することも大切です。「原因となる病気がなく、耳鳴りそのものを完全に消す治療がない」という意味なのか、「現在できる治療や対処がまったくない」という意味なのかでは大きく異なります。

再受診するときは、耳鳴りが始まった時期だけでなく、左右どちらか、音の種類、24時間続くか、聴力低下の自覚、睡眠への影響、仕事や日常生活への支障、最近の変化などを伝えると評価に役立ちます。

確認したいこと 具体例
聞こえる場所 右・左・両耳・頭の中
キーン・ジー・ザー・ピーなど
時間 常時・夜だけ・断続的
聞こえ 会話やテレビが聞き取りにくくなったか
生活への影響 睡眠・集中・仕事・気分への影響
変化 最近大きくなった・片側だけになったなど

「耳鳴りをゼロにできるか」だけでなく、「現在の聴力はどうか」「生活への負担を軽くする方法はあるか」と相談すると、治療の選択肢を整理しやすくなります。

耳鳴りを必ず治すとうたう治療・サプリには慎重になる

長期間耳鳴りに悩んでいると、「耳鳴りを完全に消す」「長年の耳鳴りが短期間で治る」といった広告が魅力的に見えることがあります。しかし、慢性耳鳴りにはさまざまな背景があり、すべての人の耳鳴りを確実に消す方法が確立されているわけではありません。

例えば神経調節(ニューロモジュレーション)についても研究が続けられていますが、NICEは耳鳴りへの神経調節治療について、確実な診療上の推奨を行うには十分に強固なエビデンスがないとしています。NICE 耳鳴り治療に関する研究課題[参照]

長年の症状だからこそ、治療を選ぶ際は「必ず消える」という宣伝より、耳鼻咽喉科で現在の聴力や耳の状態を評価し、根拠のある選択肢を相談することが重要です。

まとめ:慢性耳鳴りは「消す」だけでなく生活への影響を減らすことも大切

20年以上続く慢性耳鳴りでは、耳鳴りの音を完全に消失させることが難しいケースがあります。しかし、「完全に消せないことがある」と「何もできない」は同じではありません。

聴力検査によって難聴の有無を確認し、必要に応じて補聴器を検討するほか、耳鳴りによる苦痛が大きければCBTなどの心理的アプローチも選択肢になります。睡眠時などに耳鳴りが目立つ場合は、無理に大音量でかき消さず、穏やかな環境音を利用する方法もあります。

以前の受診から何年も経過しているなら、現在の聴力を含めて耳鼻咽喉科で再評価してもらうことには意味があります。また、長年の耳鳴りであっても、突然の聴力低下、片側性・拍動性への変化、強いめまい、顔の動かしにくさなど新しい症状が加わった場合は、「昔からある耳鳴りだから」と放置せず、速やかに医療機関へ相談することが大切です。

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