嫌なトラウマを気にしない方法はある?思い出してつらいときの対処法と心を守る考え方

ストレス

過去の嫌な出来事をふと思い出し、当時の不安や恐怖、怒り、悲しさまでよみがえってしまうことがあります。忘れようとしているのに何度も考えてしまい、日常生活に集中できなくなることもあるでしょう。

こうしたときは、無理に記憶を消そうとするよりも、思い出したときの苦痛を小さくする方法を身につけることが現実的です。ここでは、つらい記憶が頭に浮かんだときにできる対処法と、専門家への相談を検討したほうがよい目安を解説します。

トラウマは「気にしないようにする」ほど気になることがある

嫌な記憶に対して「絶対に考えない」「早く忘れなければ」と強く意識すると、かえってその出来事を繰り返し思い出してしまうことがあります。そのため、思い出したこと自体を失敗だと考える必要はありません。

例えば、突然嫌な出来事を思い出したときは、「また考えてしまった」と自分を責める代わりに、「今、嫌な記憶を思い出している」と現在の状態を淡々と認識します。記憶の内容をさらに掘り下げるのではなく、注意を現在に戻していくことがポイントです。

目標は記憶を完全に消すことではなく、思い出しても生活を大きく乱されない状態に近づけることと考えると取り組みやすくなります。

嫌な記憶が浮かんだら「今ここ」に注意を戻す

過去の出来事を思い出して苦しくなったときは、現在の環境に意識を向ける方法があります。心理的な対処法では、このように現在の感覚へ注意を戻す方法をグラウンディングと呼ぶことがあります。

例えば、足の裏が床に触れている感覚を確認する、周囲にある物を順番に眺める、聞こえてくる音を探す、手に持った物の温度や感触に注意を向ける、といった方法です。「過去について考えない」と頑張るのではなく、脳が処理する対象を現在の感覚へ少しずつ移していきます。

「見えるものを5つ、触れて感じられるものを4つ、聞こえるものを3つ」というように周囲を確認していく方法もあります。ただし、特定の方法で余計につらくなる場合には無理に続けず、自分が落ち着きやすい方法を選びましょう。

呼吸や日常の行動で気持ちを落ち着かせる

嫌な記憶によって緊張が強くなったときには、呼吸をゆっくり整える方法もあります。息を無理に大きく吸おうとせず、楽な姿勢でゆっくり呼吸し、特に吐く息を急がないようにします。めまいや息苦しさを感じる場合は中止してください。

また、気持ちが落ち着いてきたら、普段行っている小さな行動へ戻るのも一つの方法です。温かい飲み物を飲む、シャワーを浴びる、散歩をする、音楽を聴く、部屋を少し片付けるなど、現在の生活に意識を向けられる行動を選びます。

例えば夜に嫌な記憶が浮かんできた場合、布団の中で何時間も原因を考え続けるより、一度水を飲む、部屋の中にある物を確認する、落ち着いてから再び横になる、といった形で思考の流れを切り替えられる場合があります。

無理に詳しく思い出そうとしないことも大切

トラウマへの対処というと、「過去と向き合わなければならない」と考えることがあります。しかし、強い苦痛を伴う出来事を一人で意図的に何度も思い出すことが、必ずしも適切とは限りません。

特に、思い出すとパニックのような状態になる、現実感が薄れる、何時間も動けなくなるといった場合には、自分だけで記憶を掘り下げるより専門家に相談するほうが安全です。トラウマに関連する心理療法には専門的な進め方があります。

一方で、生活上の負担になっている状況を簡単に記録することは役立つ場合があります。「いつ思い出したか」「直前に何があったか」「どの程度つらかったか」などを簡潔に残しておくと、自分の傾向を把握したり、医療機関などへ相談するときに説明したりしやすくなります。

生活に支障が出ている場合は専門家への相談を検討する

つらい記憶を思い出すこと自体は珍しいことではありません。ただし、繰り返し思い出して強い苦痛を感じる、悪夢が続く、出来事に関係する場所や人を極端に避ける、常に警戒してしまうなどの状態が続く場合には、精神科や心療内科などへの相談を検討できます。

「この程度で相談してよいのだろうか」と迷う場合でも、睡眠、仕事、学校、家事、人間関係などに影響が出ているなら相談する理由になります。受診したからといって必ず特定の診断になるわけではなく、現在困っている症状について専門家と整理するところから始められます。

また、苦痛が非常に強く、自分を傷つけたい気持ちがあるなど安全を保つことが難しい場合には、一人で耐え続けず、身近な人や医療機関、地域の緊急相談窓口などにつながることを優先してください。

「早く忘れなければ」と期限を決めなくてよい

嫌な出来事から立ち直るまでに必要な時間には個人差があります。「もう何カ月も経ったのだから平気なはず」と時間だけで判断すると、まだつらい自分を責める原因になることがあります。

回復も一直線とは限りません。しばらく気にならなかったのに、似た出来事や場所、音、季節などをきっかけとして急に思い出すこともあります。一度つらくなったからといって、それまでの回復が無意味になったわけではありません。

思い出す回数だけではなく、「以前より短時間で落ち着けた」「思い出しても予定していたことを続けられた」といった変化にも目を向けると、状態をより現実的に捉えられます。

まとめ

トラウマのような嫌な記憶は、「気にしない」「忘れる」と強く念じるだけでは解決しにくいことがあります。思い出した自分を責めず、現在の感覚に注意を戻す、呼吸を整える、普段の行動へ戻るなど、記憶が浮かんだ後の対処を身につけることが大切です。

また、強い苦痛を伴う記憶を一人で無理に掘り下げる必要はありません。繰り返す記憶や悪夢、強い不安、回避などによって日常生活に支障が出ている場合には、精神科・心療内科などの専門家へ相談することも有力な選択肢です。

「完全に忘れること」だけをゴールにせず、嫌な記憶が浮かんでも自分の生活へ戻れる時間を少しずつ増やしていくことが、現実的な対処につながります。

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