IQ58はどのくらい低い?IQの目安・知的障害との関係と数字だけでは判断できない理由

発達障害

知能検査を受けて「IQ58」という結果が出ると、平均と比べてどの程度なのか、知的障害に該当する数値なのか気になることがあります。一般的なIQ検査は平均を100として評価されるため、58という数値は統計的には平均よりかなり低い範囲に位置します。ただし、IQの数字だけで、その人の能力全体や知的障害の有無・程度を確定することはできません。

この記事では、IQ58という数値の位置づけ、知的障害との関係、検査結果を見るときの注意点について、できるだけ分かりやすく解説します。

IQ58は平均と比べるとどのくらい低い?

一般的な標準化された知能検査では、IQ100前後が平均になるように得点が設定されています。米国精神医学会(APA)の一般向け解説では、多くの人が含まれる範囲としてIQ85~115が示されています。そのため、IQ58は平均的な範囲よりかなり低い数値です。

また、APAは知的機能に有意な制約がある一つの目安として、全検査IQがおおむね70~75程度以下となる場合を挙げています。ただし、現在の診断では特定のIQだけを基準にするのではなく、日常生活に必要な「適応機能」も合わせて評価します。[参照]

日本の厚生労働省の資料でも、知的障害について、知的機能の遅れだけでなく生活上の適応機能に制限があり、発達期に現れていることが重要な要素として示されています。資料上ではIQ70以下が一つの目安となっています。[参照]

IQ58だから知的障害と即断できるわけではない

IQ58という検査結果は専門的な評価を検討するうえで重要な情報ですが、「58だったから知的障害」「この数値なら必ずこの程度」と機械的に判断することは適切ではありません。現在は知能検査だけでなく、本人が実生活でどの程度自立して生活できているかを重視して判断します。

適応機能には、例えば言葉を理解して意思を伝えること、読み書きや計算、お金の管理、人間関係、仕事や学校での課題への対応、身の回りのことを自分でする能力などが含まれます。APAでは、これらを大きく「概念的」「社会的」「実用的」の3領域として説明しています。

例えば同じIQ58という結果でも、一人で公共交通機関を利用できる人、仕事を継続できる人、金銭管理に支援が必要な人など、実際の生活能力には個人差があります。そのため、数字だけから具体的な生活能力を推測することもできません。

「軽度・中度」などをIQだけで決めないことが重要

過去にはIQの範囲によって知的障害の程度を分類する考え方が広く用いられてきました。現在でも行政資料などではIQの範囲が目安として示される場合がありますが、医療上の評価ではIQだけによる分類には注意が必要です。

米国精神医学会がDSM-5への変更点として公表した資料では、知的障害の重症度についてIQの数値ではなく適応機能を基準として判断することが示されています。[参照]

したがって、IQ58という数字を見て、インターネット上の表だけから自分や他人を「軽度」「中度」などと断定するのは避けた方がよいでしょう。実際にどのような支援が必要なのかという観点の方が、本人の生活を考えるうえでは重要です。

IQの検査結果には誤差やばらつきもある

IQは身長や体重のように完全に固定された物理量ではありません。使用した検査、年齢、検査時の体調、集中状態などを踏まえて専門家が解釈する必要があります。また、総合的なIQだけを見ると、その人の得意・不得意が分からなくなることがあります。

例えば、言葉を使って考える課題は比較的得意でも、短時間で情報を処理する課題が苦手というケースがあります。逆に、言葉で説明する課題は苦手でも、視覚的な情報から答えを導く課題では高い成績になることもあります。このような場合、全体を一つのIQにまとめた数字だけでは本人の特徴を十分に表せません。

APAも、知能検査の下位項目には大きなばらつきが生じることがあり、全検査IQが必ずしも知的機能全体を正確に表すとは限らないため、専門的な判断が必要だと説明しています。

ネットのIQテストと医療・心理機関の知能検査は別物

「IQ58」という数字がどの検査から出たものなのかも非常に重要です。ウェブサイトやスマートフォンアプリにある簡易的なIQテストの結果と、心理職などが個別に実施する標準化された知能検査の結果は、同じように扱うことができません。

知的機能を正式に評価する場合には、標準化され、信頼性や妥当性が検討された知能検査を適切な方法で実施します。そのため、ネット上の無料テストで58と表示されたというだけなら、その数字から医学的・心理学的な結論を出すことはできません。

一方、医療機関や専門機関で正式な検査を受けてIQ58という結果が出た場合には、総合得点だけでなく各指標の結果や検査担当者の所見を確認すると、本人の得意なこと・苦手なことをより具体的に把握できます。

IQよりも「実際に何に困っているか」を確認する

知能検査の大きな意義は、人を順位付けすることではなく、認知面の特徴を把握して必要な支援につなげることにあります。そのため「58は低いのか」という疑問だけで終わらせず、「日常生活のどこで困っているのか」「どのような方法なら理解しやすいのか」を確認することが大切です。

例えば、口頭で長い説明をされると分からなくなる人でも、手順を短く区切り、写真や図を使って説明すると理解しやすくなる場合があります。仕事でも、一度に複数の指示を受けることが苦手なら、一つずつ具体的に指示してもらうことで能力を発揮しやすくなることがあります。

正式な検査結果について疑問がある場合は、検査を実施した医師や心理職などに「この数値はどのように解釈すればよいですか」「得意な領域と苦手な領域はどこですか」と確認するのが確実です。本人の生活上の困難が大きい場合には、必要に応じて医療機関や地域の相談窓口などで支援について相談する方法もあります。

まとめ:IQ58は低い範囲だが数字だけで人の能力は判断できない

IQ58は、平均100を基準とする一般的な標準化知能検査では平均よりかなり低い範囲に位置する数値です。また、知的機能の有意な制約を考える際の数値的な目安にも入ります。

しかし、知的障害についてはIQだけで判断するものではありません。知的機能に加えて、コミュニケーション、社会生活、金銭管理、身の回りのことなどの適応機能や、発達期からの経過を含めて総合的に評価します。

さらに、同じIQであっても得意分野、苦手分野、生活能力、必要となる支援は人によって異なります。検査結果が本人に関するものであれば、単純に「高い・低い」という評価だけを見るより、検査を担当した専門家から詳しい説明を受け、結果を今後の生活や学習、仕事の工夫に役立てることが重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました