うつ病で働けないのに生活保護を断られる理由は?受給要件・世帯収入・申請却下の仕組みを解説

うつ病

うつ病などの精神疾患で仕事ができず、収入も十分にない場合でも、「病気で働けない」という事情だけで生活保護が自動的に決定するわけではありません。生活保護では、本人の病名だけでなく、世帯全体の収入、利用できる資産、就労能力、年金や手当など他制度の利用状況を総合して保護が必要かどうかが判断されます。

そのため、「うつ病で仕事ができないのに断られた」という話を聞いても、情報が少ない段階では理由を特定できません。本人に目立った資産がなくても、同居家族を含む世帯収入が最低生活費を上回っていた、他の収入があった、就労能力について異なる判断がされたなど、さまざまな可能性があります。

また、「窓口で難しいと言われた」というケースと、実際に生活保護を申請して正式な却下決定を受けたケースは別です。生活保護を理解するときは、「相談で断られた」のか「申請後に却下された」のかを区別することが重要です。

生活保護は「うつ病かどうか」だけで決まる制度ではない

厚生労働省によると、生活保護は、世帯員全員が利用できる資産や能力、その他の制度などを生活維持のために活用したうえで、世帯の収入が国の基準で計算される最低生活費を下回る場合に適用される仕組みです。厚生労働省・生活保護制度[参照]

つまり、うつ病は「働く能力がどの程度あるか」を判断する重要な事情にはなりますが、「うつ病と診断された=必ず生活保護」「働けない=それだけで受給」という制度ではありません。

反対に、病名の重さだけで受給資格が決まるわけでもありません。うつ病、双極症、統合失調症、身体疾患など病名にかかわらず、最終的にはその世帯が最低限度の生活を自力で維持できる状態なのかが中心になります。

資産がなくても「世帯の収入」で対象外になることがある

生活保護は原則として世帯単位で行われます。この点は、「本人には貯金も収入もないのになぜ?」という疑問が生じやすいポイントです。

例えば本人がうつ病で無収入でも、配偶者と同居しており配偶者に一定の給与収入がある場合、その収入を含めた世帯全体で判断されます。同居している親などと同一世帯として認定され、その世帯全体で最低生活費を満たしていると判断されれば、本人だけを切り離して生活保護が支給されるとは限りません。

生活保護費は、厚生労働大臣が定める基準による最低生活費と世帯の収入を比較し、原則として不足する部分を補う仕組みです。したがって「資産がない」という一点だけでは、受給できるかどうかは判断できません。厚生労働省[参照]

うつ病でも「働ける状態」と判断される場合は就労能力も確認される

生活保護法では、利用できる「能力」を最低限度の生活維持のために活用することが要件の一つとされています。厚生労働省も、働くことが可能な人については、その能力に応じて働くことを求める仕組みを示しています。

しかし、これは「うつ病でも無理に働かなければ生活保護を受けられない」という意味ではありません。病状によって現在就労が困難であれば、その健康状態を踏まえて就労可能性が判断されます。生活保護の申請後には、必要に応じて就労可能性についても調査が行われます。厚生労働省・生活保護の手続き[参照]

例えば、主治医から休養が必要とされている人と、症状が改善し一定の就労が可能と評価されている人では、能力活用についての扱いが同じとは限りません。そのため「うつ病」という診断名だけでなく、現在どの程度働ける状態なのかが重要になります。

障害年金など他の制度が使える場合も確認される

生活保護では、年金や各種手当など、他の法律や制度から受けられる給付がある場合は、それらを活用することが原則です。うつ病など精神疾患の場合には、病状や加入要件などを満たせば障害年金が関係する場合もあります。

ただし、「障害年金を受け取れる可能性があるから生活保護は絶対に受けられない」という意味ではありません。実際に受け取る年金などを収入として計算し、それでも最低生活費に足りなければ、その不足分について生活保護が適用される可能性があります。

例えば最低生活費として認定される額より障害年金などの収入が少なければ、その差額を生活保護で補うという考え方が基本です。生活保護は「収入が完全にゼロの人だけ」の制度ではありません。

親や兄弟がいるだけで生活保護を申請できないわけではない

「親族がいるから断られたのでは」と考えられることもあります。生活保護法では扶養義務者による扶養は生活保護に優先するとされていますが、厚生労働省は、同居していない親族に相談してからでなければ生活保護を申請できないということではないと明確に案内しています。厚生労働省・生活保護を申請したい方へ[参照]

つまり、「親がいる」「兄弟が働いている」という事実だけで、自動的に生活保護の申請資格がなくなるわけではありません。実際に援助を受けられるのか、どの程度可能なのかなどが個別に確認されます。

また、厚生労働省は、必要な書類がすべてそろっていなくても申請できることや、住む場所がない人でも申請できることも案内しています。申請そのものと、審査後に保護が開始されるかどうかは分けて考える必要があります。厚生労働省[参照]

「生活保護を断られた」には2種類ある

生活保護について聞く際に特に確認したいのが、申請前の相談段階なのか、正式に申請した後なのかです。この二つは法的にも意味が異なります。

状況 意味
窓口で「難しいと思う」と言われた 相談段階の説明であり、正式な却下決定とは限らない
申請書を提出した 福祉事務所が保護の要否を審査する段階
却下決定通知書を受け取った 正式な行政処分として保護しない判断がされた状態

生活保護法第24条では、保護開始の申請があった場合、実施機関は保護の要否などを決定し、申請者へ書面で通知し、その書面には決定理由を記載することとされています。原則として申請から14日以内、特別な理由がある場合には30日まで延長できると定められています。生活保護法[参照]

そのため、「断られた理由が全く分からない」という場合は、まず正式に申請したのか、却下決定通知書があるのか、その通知書にどのような理由が記載されているのかを確認すると状況がかなり整理できます。

生活保護が正式に却下される理由として考えられるもの

個別の事情によりますが、正式な却下につながり得る代表的な事情としては、世帯収入によって最低生活費を満たせると判断された場合、活用できる資産がある場合、実際には利用できる収入・給付などによって生活を維持できる場合などがあります。

また、厚生労働省の実施要領では、利用できる資産や能力などの活用を怠ったり避けたりしていると判断され、必要な助言・指導にも従わない場合などに、要件を欠くとして申請を却下する取扱いが示されています。厚生労働省・生活保護法による保護の実施要領[参照]

ただし、ここでも「うつ病なのに働かなかった」という事実だけで一律に却下されるわけではありません。実際に就労できる健康状態なのか、医療上どのような制限があるのかなどを含めた個別判断になります。

持ち家や車があれば必ず申請できない、というわけでもない

生活保護では利用できる資産を生活維持に活用することが原則なので、預貯金や生活に使用していない土地・家屋などは審査対象になります。しかし、資産が少しでもあれば一律に申請できないという制度ではありません。

厚生労働省は、現に住んでいる持ち家について保有が認められる場合があることや、自動車についても障害、地域事情、通勤・通院など一定の条件によって保有が認められる場合があることを案内しています。厚生労働省・生活保護の要件等[参照]

したがって「資産があるから」「車があるから」「持ち家だから」という一言だけでは、申請可能かどうかを正確に判断できません。資産の種類、価値、生活上の必要性などによって取扱いが異なります。

却下理由に納得できない場合は通知書を確認する

正式な生活保護申請が却下された場合は、まず却下決定通知書に記載された理由を確認します。「最低生活費を上回る収入がある」「資産活用の要件を満たしていない」など、何を根拠に判断されたのかによって対応が変わります。

事実関係が違っている、医療上働けない事情が十分に反映されていないなど、決定に納得できない場合には、福祉事務所に説明を求めるほか、生活保護の決定に対して審査請求を行える制度があります。生活保護法には保護の決定等に対する不服申立ての仕組みが設けられています。生活保護法[参照]

必要に応じて自治体の相談窓口、法テラス、生活困窮者支援を行う団体などに、通知書を見せながら相談する方法もあります。単に「一度断られたら二度と申請できない」という制度ではありません。

まとめ:うつ病で働けなくても「病名」ではなく世帯全体で生活保護の要否が判断される

うつ病で仕事ができない人が生活保護を受けられなかったという情報だけでは、その理由を特定することはできません。生活保護は、病気の有無だけではなく、世帯の収入、資産、就労能力、年金など他制度からの給付を含め、最低生活を維持できるかどうかによって判断されるためです。

本人に資産がなくても、同一世帯の家族に十分な収入があれば対象外となる可能性があります。一方、親族がいること、持ち家があること、必要書類が完全にそろっていないことだけを理由に「申請そのものができない」というわけではありません。厚生労働省も、生活保護を希望する場合は現在住んでいる地域を所管する福祉事務所へ相談・申請できると案内しています。厚生労働省[参照]

「なぜ断られたのか」を知るには、「窓口で申請前に難しいと言われた」のか、「正式に申請し、理由が書かれた却下決定通知書を受け取った」のかを確認することが第一歩です。正式な却下であれば、その理由を確認することで初めて、世帯収入なのか、資産なのか、能力活用なのか、別の事情なのかを具体的に判断できます。

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