高齢の家族が認知症になると、「財布を盗まれた」「誰かに物を取られた」と訴えることがあります。実際には物忘れや記憶の混乱が原因であっても、本人にとっては本当に起きた出来事として感じられているため、否定すると強く怒ったり不安になったりすることがあります。この記事では、認知症の方が被害を訴える時の心理や、家族がどのように対応するとよいのか、症状の進行を穏やかにするための工夫について解説します。
認知症で「盗まれた」と訴えることがある理由
認知症では、最近の出来事を覚えておく力が低下することがあります。そのため、自分で置いた場所を忘れたり、いつもと違う場所にしまったりした場合に、「誰かが持っていった」と考えてしまうことがあります。
これは本人が嘘をついているわけではありません。記憶が抜けた部分を脳が自然に補おうとすることで、本人の中では「盗まれた」という出来事が現実のように感じられることがあります。
例えば、財布を引き出しにしまったことを忘れてしまい、「昨日まであった財布がない。誰かが盗った」と思い込んでしまうケースがあります。
認知症の親を否定すると怒る理由
家族としては「そんなわけないよ」「私が取るわけないでしょう」と説明したくなるものですが、本人からすると自分の大切な物がなくなった不安を訴えている状態です。
そのため、事実を否定されると「自分の気持ちを分かってもらえない」と感じ、怒りや悲しみにつながることがあります。
大切なのは、盗まれたという話の内容だけを訂正するよりも、不安な気持ちに寄り添うことです。「なくなって心配だったね」「一緒に探してみよう」と声をかけることで安心につながりやすくなります。
「盗まれた」と言われた時の具体的な対応方法
まずは気持ちを受け止める
認知症の方への対応では、事実確認よりも感情への対応が重要になることがあります。
例えば、「盗られてないよ」とすぐ否定するより、「大事なお金がなくなったと思ったら不安だよね。一緒に探そう」と伝えることで、本人の安心感を高めることができます。
一緒に探して本人の安心につなげる
本人が納得するまで探すことも有効な場合があります。実際には本人が忘れて置いた場所から見つかることも多く、見つかった時には「ここにあったね」と自然に伝えるとよいでしょう。
ただし、毎回長時間探し続けると家族の負担になるため、無理をしすぎないことも大切です。
家族が疑われても感情的にならない
認知症の症状によって家族が疑われることは、介護をしている人にとって大きなストレスになります。しかし、本人も好きで疑っているわけではなく、不安や混乱からそのような発言が出ている場合があります。
「自分が責められている」と受け止めすぎず、「病気による症状の一つかもしれない」と考えることで、少し冷静に対応しやすくなります。
認知症の症状を少しでも穏やかにするためにできること
認知症そのものを完全になくすことは難しいですが、生活環境を整えたり、本人が安心できる時間を増やしたりすることで、不安や混乱を減らせる場合があります。
- 毎日の生活リズムをなるべく一定にする
- できることは本人に続けてもらう
- 家族との会話や交流の時間を作る
- 失敗を責めず安心できる声かけをする
例えば、料理や掃除など本人ができる家事を続けてもらうことは、自信や役割を保つことにつながります。認知症だから何もできないと決めつけないことも大切です。
症状が強くなった時は専門機関への相談も大切
「盗まれた」という訴えが頻繁になる、怒りが強くなる、生活に支障が出てくる場合は、家族だけで抱え込まないことが重要です。
かかりつけ医や認知症専門外来、地域包括支援センターなどに相談すると、本人への対応方法や利用できるサービスについてアドバイスを受けられます。
認知症の症状は本人だけでなく家族にも大きな負担がかかります。早めに相談先を作っておくことで、本人も家族も安心して生活を続けやすくなります。
まとめ
認知症の方が「物を盗られた」「お金を取られた」と話す場合、それは記憶の混乱や不安から起こる症状の一つであることがあります。
大切なのは、すぐに否定するのではなく、不安な気持ちを受け止めながら安心できる対応をすることです。家族だけで対応するのが難しい場合は、医療機関や相談窓口を利用しながら、本人と家族が無理なく過ごせる環境を整えていくことが大切です。

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