水虫(足白癬)は非常にありふれた真菌症ですが、その発症や拡大のメカニズムについては意外と知られていません。近年では、足底角層のバリア機能低下や層板構造の乱れが、白癬菌の侵入や拡散に深く関与していることが注目されています。本記事では、皮膚構造の観点から水虫の成り立ちを整理します。
水虫(足白癬)とはどのような真菌症か
水虫は、主に皮膚糸状菌(白癬菌)が足の皮膚、特に足底や趾間の角層に感染して起こる表在性真菌症です。白癬菌は生きた細胞ではなく、角質中のケラチンを栄養源として増殖します。
そのため、水虫は炎症が強く出ないことも多く、気づかないうちに皮膚の内部で感染が拡大しているケースも少なくありません。
足底角層の層板構造と皮膚バリア機能
正常な足底角層は、角質細胞と細胞間脂質(セラミドなど)が規則正しい層板構造を形成し、外部からの微生物侵入を防ぐバリア機能を担っています。この構造が保たれていることで、真菌の侵入は抑制されます。
しかし、乾燥、過角化、長時間の蒸れ、摩擦などが続くと、層板構造が乱れ、角層内に微細な隙間が生じやすくなります。
層板構造の乱れが真菌の側方拡散を促す理由
角層の層板構造が乱れると、白癬菌は角層の深部へ垂直に侵入するだけでなく、角層内を水平方向(側方)へと拡散しやすくなります。これが、足底全体にじわじわ広がる角質増殖型水虫の背景です。
例えば、かかとだけの乾燥やひび割れから始まった感染が、徐々に土踏まずや足底全体へ広がるケースは、この側方拡散によるものと考えられています。
水虫が慢性化・再発しやすい理由
足底は角層が厚く、ターンオーバーが遅いため、一度層板構造が乱れると回復に時間がかかります。その間に白癬菌が生き残り、治療を中断すると再び増殖します。
さらに、見た目の症状が軽くなると治ったと誤認し、抗真菌薬の使用を早期にやめてしまうことも、慢性化の大きな要因です。
病態理解を踏まえた治療とケアの考え方
水虫治療では、白癬菌を殺菌するだけでなく、角層バリアを回復させる視点が重要です。抗真菌薬を十分な期間継続しつつ、保湿や角質ケアを併用することで、層板構造の正常化を促します。
特に角質増殖型では、医師の指示のもとで角質軟化剤を使うことで、薬剤の浸透性を高めることが有効とされています。
まとめ
水虫は単なる表面的な感染症ではなく、足底角層の層板構造乱れが真菌の側方拡散を促進する病態を持つ真菌症といえます。皮膚バリア機能の低下を理解したうえで、適切な治療とスキンケアを継続することが、再発防止の鍵となります。


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