声枯れが半年以上続く・日によって変わる原因は?挿管後の影響、声帯の病気、がんの可能性と受診先を解説

病気、症状

声がかすれる、途中から声が出しにくくなる、日によって調子が違うといった「声枯れ(嗄声)」にはさまざまな原因があります。風邪や声の使いすぎのような一時的なものから、声帯の炎症、声帯結節、声帯麻痺、筋緊張性発声障害、逆流による刺激などまで原因は幅広く、まれには喉頭がんなどの病気が隠れていることもあります。

全身麻酔で気管挿管を受けた直後には声枯れや喉の痛みが比較的よく起こりますが、多くは短期間で改善します。研究では、短時間の手術後に起こる嗄声は一般的である一方、重い声帯麻痺などはまれとされています。[参照:気管挿管後の喉頭障害に関するシステマティックレビュー]

一方、数カ月にわたって声枯れを繰り返し、電話で相手が聞き取れないほどになる場合は、「以前ファイバースコープで異常なしだったから問題ない」と終わらせず、声の診療を得意とする耳鼻咽喉科で再評価を受けることが大切です。

この記事では、長引いたり変動したりする声枯れの原因、気管挿管との関係、喉頭がんを疑う症状、通常のファイバースコープで異常が見つからない場合に次に何をすればよいのかを整理します。

声枯れが4週間以上続くなら喉頭の再評価が推奨される

声枯れは珍しい症状ではありませんが、一定期間以上続く場合には原因を確認する必要があります。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の診療ガイドラインでは、声枯れが改善せず4週間以上続く場合には喉頭鏡検査を行う、または検査可能な専門医へ紹介することが推奨されています。重大な病気が疑われる場合には4週間を待つ必要はありません。[参照:American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery]

すでに一度ファイバースコープを受けて正常といわれていたとしても、その後も症状が続いているなら再診には意味があります。声帯の状態は日によって変わることがありますし、通常の観察では分かりにくい微細な振動異常が原因となるケースもあります。

「一度異常なしだった」という結果は安心材料の一つですが、現在の症状が続いている以上、それだけで原因究明が終了したとは限りません。

全身麻酔のチューブで声枯れは起こる?

全身麻酔では、呼吸を管理するため口から気管へチューブを入れる「気管挿管」が行われることがあります。チューブは声帯の間を通過するため、術後に喉の痛みや声枯れが起こることは珍しくありません。

手術時の気管挿管について21研究、6140人をまとめたシステマティックレビューでは、抜管後の嗄声は約27%で報告されています。一方、披裂軟骨の亜脱臼や声帯麻痺など重い障害は1%未満とされました。[参照:PubMed]

日本の約4000人を調べた研究でも、挿管後の声枯れの多くは手術後3日以内に改善し、挿管だけが原因と考えられた持続性嗄声については2カ月以内に回復したと報告されています。[参照:PubMed・気管挿管後の嗄声]

したがって手術から半年以上たった時点で新たに、または繰り返し声枯れが続いている場合、挿管だけを原因と決めつけず、現在の声帯をあらためて評価するのが適切です。

ただし挿管後の声帯障害が長引くケースもゼロではない

挿管後の症状の大部分は軽く一時的ですが、非常にまれながら声帯麻痺、声帯の瘢痕、肉芽腫、披裂軟骨の位置異常などが残ることがあります。

こうした場合には「声が弱い」「息が漏れるような声になる」「長く話すほどかすれる」といった症状がみられることがあります。

ただし、半年後の声枯れがあるからといって、直ちに挿管による永久的損傷を意味するわけではありません。実際には別の原因による嗄声のほうが考えられるケースも多くあります。

手術後から一度も完全に声が戻らなかった場合には、受診時に「手術前は正常だった」「手術直後から声が変わった」という時系列を医師へ伝えることが重要です。

日によって声枯れが変わる原因には何がある?

声枯れが常に同じではなく、朝は普通なのに夕方になると悪化したり、電話で長く話しているうちにカスカスになったりすることがあります。

こうした「声を使うほど悪くなる」というパターンでは、声帯の使い方や筋肉の緊張が関係する筋緊張性発声障害、声帯結節・ポリープなどの病変、声帯の閉じ方の問題などが候補になります。

また声帯麻痺などが軽度の場合、短時間なら声を出せても、長時間話すことで声が弱くなることがあります。

症状が変動するから病気ではない、というわけではありません。「話し始めは正常だが10分ほどでかすれる」といった特徴そのものが診断の手掛かりになります。

ストレスで声が枯れることもある?

ストレスや緊張が発声へ影響することはあります。精神的緊張によって喉周辺の筋肉に過剰な力が入り、声帯を効率よく振動させられなくなることがあります。

このような状態では、喉に力が入る、長く話すと疲れる、声が詰まる、かすれるなどの症状が現れることがあります。

ただし、長く続く声枯れを最初から「ストレスのせい」と決めるべきではありません。まず声帯や喉頭に構造的な病変がないことを確認し、そのうえで機能的な発声障害を考える順序が安全です。

原因が筋緊張性発声障害などであれば、耳鼻咽喉科での評価後に言語聴覚士による音声治療が行われることがあります。

通常のファイバースコープで「何もない」といわれても声枯れが起こる理由

鼻から入れる一般的な喉頭ファイバースコープでは、声帯に大きな腫瘍、ポリープ、麻痺などがないかを直接確認できます。そのため異常なしという結果は重要な安心材料です。

しかし、人の声は声帯が高速で振動することによって作られています。通常のファイバースコープで形が正常に見えても、声帯粘膜の振動の左右差や小さな硬さ、閉鎖不全などがある場合があります。

こうした微細な問題の評価では喉頭ストロボスコピーが有用です。声帯の高速振動を見かけ上ゆっくり観察し、左右対称に振動しているか、粘膜波が正常か、発声時に隙間が残らないかなどを調べます。

「ファイバーでは異常なしなのに声が明らかにおかしい」という場合、音声外来や喉頭・音声を専門とする耳鼻咽喉科でストロボスコピーを相談する価値があります。

まず探したいのは「音声外来」「声の専門外来」のある耳鼻咽喉科

長引く声枯れでは、一般的な耳鼻咽喉科を再受診する方法でも構いませんが、一度通常のファイバー検査で異常なしとされている場合には、音声障害を専門的に診療する医療機関が役立つことがあります。

大学病院や総合病院などには「音声外来」「喉頭外来」「ボイスクリニック」などの名称で専門外来が設けられている場合があります。

診察では喉頭内視鏡だけではなく、ストロボスコピー、声の録音・音響分析、発声機能検査などを組み合わせることがあります。

受診時には「日によって違う」「電話で話している途中から急激にかすれる」「長時間話すほど出なくなる」といった特徴を具体的に伝えると診断の助けになります。

声帯結節・声帯ポリープでも声枯れは起こる

声帯に小さな病変ができる代表例が声帯結節と声帯ポリープです。声を頻繁に使う人、大声を出す機会が多い人などで起こることがあります。

症状としては、声がかすれる、高い声が出にくい、話していると声が疲れるなどがあります。

大きな病変なら一般的な喉頭ファイバーでも分かりますが、ごく小さな病変や振動だけに影響する異常はストロボスコピーで詳しく確認することがあります。

治療は原因によって異なり、声の使い方を改善する音声治療だけで改善するケースもあれば、手術が検討される場合もあります。

声帯麻痺ではどんな声になる?

左右の声帯は、発声するとき中央へ寄って振動します。しかし声帯を動かす神経に問題が起きると、一側または両側の声帯が正常に動かなくなることがあります。

片側声帯麻痺では、息が漏れるような弱い声、声量が出ない、長く話せない、むせやすいなどの症状がみられることがあります。

気管挿管後にも非常にまれに声帯麻痺が報告されていますが、甲状腺や胸部の手術、神経疾患、腫瘍などほかの原因でも起こります。

声帯の動きに明らかな麻痺があれば通常の内視鏡でも確認できることが多いため、すでに正常な動きを確認されているのであれば可能性は下がります。ただし症状が続けば再評価が適切です。

逆流性食道炎や喉への逆流が関係することもある

胃酸や胃内容物が食道や喉へ逆流すると、喉頭が刺激されて声枯れ、喉の違和感、咳、頻繁な咳払いなどが起きることがあります。

胸焼けをほとんど感じない人でも喉の症状が出ることはあります。

一方で、声枯れだけを根拠として「逆流でしょう」と診断し、胃酸を抑える薬を漫然と使用することは推奨されていません。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会のガイドラインでは、喉頭を確認せず、孤立した嗄声だけを理由に逆流治療薬を処方することを推奨していません。[参照:AAO-HNS]

逆流の可能性がある場合も、まず声帯を評価したうえで必要な治療を考えることが大切です。

乾燥・脱水・喫煙・飲酒でも声の状態は変わる

声帯は表面の粘膜を振動させて音を作るため、乾燥すると振動しにくくなります。

水分摂取が少ない日、空調の効いた乾燥した環境、長時間の会話などによって一時的に声が出しにくくなることがあります。

喫煙は喉頭粘膜を慢性的に刺激し、声枯れの原因となります。また喉頭がんの重要なリスク因子でもあるため、喫煙習慣があり声枯れが長期間続く場合には特に耳鼻咽喉科での評価が重要です。

飲酒量が多い場合も、脱水や逆流などを介して喉へ影響することがあります。

声枯れ=喉頭がんではない

長引く声枯れがあると「がんではないか」と不安になるかもしれません。確かに声の変化は喉頭がんの代表的な症状の一つです。

NHSでは、喉頭がんの主な症状として、治らない声枯れ・声の変化、首のしこり、飲み込みにくさ・飲み込むときの痛み、呼吸困難などを挙げています。[参照:NHS・喉頭がんの症状]

しかし声枯れの原因の多くはがんではありません。炎症、発声方法、良性病変、逆流、声帯麻痺などさまざまな原因があります。

また、すでに耳鼻咽喉科で喉頭ファイバーを行い「明らかな異常なし」と確認されていることは、目立つ喉頭腫瘍が存在する可能性を下げる安心材料です。ただし症状がその後も続いているため、再評価は行ったほうがよいでしょう。

がんを疑って早めに受診したい「赤旗症状」

声枯れだけでも4週間以上改善しなければ再診の対象ですが、ほかの症状を伴う場合はさらに積極的な評価が必要です。

症状 確認が必要な理由
何週間も続く声枯れ 喉頭病変の評価が必要
首のしこり リンパ節などの評価が必要
飲み込みにくい・飲み込むと痛い 咽頭・喉頭などの病変を確認
血の混じった痰 出血源の確認が必要
原因不明の体重減少 全身疾患を含めた評価が必要
息苦しさ 気道の問題がないか早急な確認が必要

特に呼吸が苦しい、急激に悪化したといった場合には通常の予約診療を待たず、速やかに医療機関へ相談してください。

声が途中からカスカスになる場合は「その状況」を録音しておく

病院へ行く日に限って声が正常ということは珍しくありません。症状が日によって変わる場合には、実際に声が悪いタイミングを記録しておくと診察に役立ちます。

例えばスマートフォンの録音機能を使い、通常時と声が枯れたときに同じ文章を10秒程度読んで保存しておく方法があります。

また「朝は正常」「30分話すと枯れる」「夕方に悪化」「食後に出やすい」「電話だと特に出にくい」などを簡単にメモします。

症状が診察室では再現されなくても、こうした記録があれば医師が変動パターンを把握しやすくなります。

声が枯れたとき無理に大きな声を出さない

声が出にくいと、相手に聞こえるよう無理に大声を出そうとしてしまいます。しかし喉へ力を入れて発声し続けると、声帯への負担が増えることがあります。

長時間の電話や大声での会話を減らし、声が疲れてきたら休ませます。また十分な水分をとり、室内の乾燥が強ければ加湿を検討します。

「ささやき声なら声帯を休ませられる」と考えることもありますが、ささやき方によってはかえって喉に力が入ることがあります。無理なささやき声を長時間続けるより、会話量自体を減らすほうがよいでしょう。

ただしセルフケアだけで半年以上続く声枯れを治そうとせず、診断を受けることが前提です。

咳払いを繰り返す習慣にも注意する

喉に何か引っかかる感じがあると、「ンンッ」と何度も咳払いしたくなることがあります。

強い咳払いを繰り返すと声帯同士が強くぶつかり、粘膜への刺激になることがあります。

咳払いしたくなったときには、少量の水を飲む、軽く飲み込むなどで代用できることがあります。

ただし痰や咳が実際に続いている場合には、呼吸器や鼻・副鼻腔など別の原因が関係している可能性もあるため診察時に伝えましょう。

CTやMRIをいきなり受ければ原因が分かるとは限らない

がんが心配になると「念のためCTやMRIを撮りたい」と考えることがあります。しかし声枯れだけが症状の場合、まず重要なのは声帯を直接見ることです。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会では、主症状が嗄声の場合、喉頭を観察する前にCTやMRIをルーチンで行うべきではないとしています。[参照:AAO-HNS]

内視鏡で声帯麻痺や腫瘍などが見つかった場合には、原因や広がりを調べる目的でCT・MRIなどが必要になることがあります。

検査は「多ければ安心」というわけではなく、喉頭の診察結果に応じて必要な検査を選ぶことが重要です。

受診時に医師へ伝えておきたいポイント

長く続く声枯れでは、症状の時系列が診断に役立ちます。特に全身麻酔を受けた経験がある場合には、その前後の状態を具体的に伝えます。

伝える内容
症状が始まった時期 手術直後から/一度治って数カ月後から
変動の仕方 朝は正常、話すほど悪くなる
声を使う時間 電話・仕事などで長時間話す
その他の症状 痛み、飲み込みづらさ、咳、胸焼け、首のしこり
喫煙・飲酒 現在・過去の喫煙歴も含む
過去の検査 以前ファイバースコープで異常なし

以前の耳鼻咽喉科でいつ検査を受けたか分かる場合、その時期も伝えるとよいでしょう。

次に何から始めればよい?

長期間にわたり声枯れを繰り返している場合、最初に行うことはインターネット上で原因を一つに絞ることではありません。

声の診療を行っている耳鼻咽喉科、できれば「音声外来」「喉頭外来」などを受診し、「一度通常のファイバーでは異常なしだったが、半年以上声枯れを繰り返し、会話途中に聞き取れないほど悪化する」と伝えるのが現実的な次の一手です。

そこで再度の喉頭内視鏡に加えて、必要ならストロボスコピーや発声機能検査などを検討してもらえます。

受診までの間には、声が悪いときの録音、症状が出る時間帯や状況を記録しておくと診察の資料になります。

まとめ:半年続く変動性の声枯れは、音声を専門にする耳鼻咽喉科で再評価を

全身麻酔の気管挿管後には喉の痛みや声枯れが比較的よく起こります。しかし多くは数日程度で改善し、重い声帯損傷はまれです。大規模なレビューでも、挿管後の嗄声は比較的多い一方、声帯麻痺など重度の障害は1%未満と報告されています。[参照:PubMed]

手術から半年程度たっても、日によって声が枯れたり、電話で話している途中から相手が聞き取れないほどカスカスになったりする場合、単純な「挿管後の一時的な声枯れ」として様子を見続ける段階ではありません。

一度ファイバースコープで異常なしと言われていることは、目立つ腫瘍などの可能性を下げる安心材料です。一方、通常の内視鏡で正常に見えても、声帯の細かな振動異常、筋緊張性発声障害、軽度の声門閉鎖不全などが原因となることがあります。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会では、声枯れが改善しない場合は4週間以内に喉頭を評価することを推奨しています。半年以上症状が続いているなら、再び耳鼻咽喉科を受診する十分な理由があります。[参照:AAO-HNS]

受診先としては、可能であれば音声外来・喉頭外来など声の診療を専門とする医療機関を選び、喉頭ストロボスコピーなどの追加評価について相談するとよいでしょう。

声枯れだけで直ちに喉頭がんを意味するわけではありません。ただし、治らない声の変化は喉頭がんでもみられる症状であるため、長期間続く場合には確認することが大切です。首のしこり、飲み込みにくさ、血痰、原因不明の体重減少、息苦しさなどを伴う場合には特に早めに受診してください。[参照:NHS]

「がんだろう」と決めつける必要も、「一度異常なしだったから大丈夫」と放置する必要もありません。現在の声が日常生活や電話に支障を与える程度であれば、症状が悪いときの録音を用意し、声の専門的な診察を受けて原因を一つずつ確認することが最も適切です。

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