片耳が突然聞こえにくくなったり、水の中に入っているような耳の詰まりを感じたり、耳鳴りが現れたりした場合には、突発性難聴を含む急性感音難聴の可能性が考えられます。突発性難聴は突然発症する原因不明の難聴であり、耳がふさがった感じや耳鳴りを伴うこともあります。
ただし、耳閉感や耳鳴りがあることだけで突発性難聴と確定することはできません。急性低音障害型感音難聴、メニエール病、中耳の病気、音響外傷などでも似た症状が出るため、耳鼻咽喉科での聴力検査や経過観察によって判断する必要があります。
この記事では、突発性難聴でみられる症状、聴力検査で一部の音が聞こえにくい場合の考え方、ほかの病気との違い、治療を早く始めることが重要とされる理由について解説します。
突発性難聴とは突然起こる原因不明の感音難聴
突発性難聴は、これまで大きな聴力の問題がなかった人に、ある時突然起こる感音難聴です。感音難聴とは、主に内耳や聴神経など音を感じ取る仕組みに問題が生じるタイプの難聴を指します。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、突発性難聴について、突然発症した原因不明の難聴と説明しています。起床したときに片耳が聞こえにくいことに気付くケースなどもあり、耳鳴り、耳がふさがった感じ、めまいなどを伴う場合があります。[参照]
「耳が詰まる」「耳鳴りがする」という症状に加えて、実際の聴力検査で片耳の聴力低下が確認されている場合は、耳鼻咽喉科で継続して評価を受けることが重要です。
耳が水の中に入ったような感じも突発性難聴で起こることがある
突発性難聴という名称から、「急にほとんど聞こえなくなる病気」をイメージする人もいます。しかし実際には、最初に本人が感じる症状が「聞こえない」ではなく、「耳が詰まっている」「水が入ったような感じがする」ということもあります。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、耳が水に入ったような感じや、ふたをされたような耳閉感は、外耳・中耳・内耳のいずれの異常でも起こります。内耳が原因の場合には、急性低音障害型感音難聴、メニエール病、突発性難聴などでよくみられる症状とされています。[参照]
そのため、耳閉感が薬を飲んで改善したとしても、それだけで原因となる病気が完全に治ったとは判断できません。自覚症状と聴力の回復が必ず一致するわけではないため、必要に応じて再度聴力検査を受けることが重要です。
静かな場所で聞こえる「ジー」という耳鳴りも関連する可能性がある
突発性難聴では耳鳴りを伴うことがあります。耳鳴りは「キーン」という高い音だけではなく、「ジー」「ザー」「ワーン」といったさまざまな音として感じられます。
特に昼間は周囲の生活音に紛れて気にならなくても、夜や就寝前など静かな環境になると耳鳴りを強く意識することがあります。そのため「寝るときだけ耳鳴りが聞こえる」という状態でも、耳鳴りそのものが夜だけ発生しているとは限りません。
耳鳴りは難聴とともに現れることが多いため、急に始まった片耳の耳鳴りと聴力低下が同時にある場合には、耳鼻咽喉科で原因を確認することが大切です。[参照]
聴力検査で「一つの音が聞こえない」とはどういう意味?
一般的な純音聴力検査では、低い音から高い音まで複数の周波数について、どの程度小さな音まで聞き取れるかを測定します。そのため「一つの音が聞こえていない」と説明された場合、特定の周波数帯で聴力が低下していた可能性があります。
例えば低音域だけが低下する急性低音障害型感音難聴という病気もあります。一方、突発性難聴ではさまざまな聴力低下のパターンがみられるため、一部の周波数だけ低下しているという情報だけでは病名を確定できません。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の2026年の手引きでも、急性感音難聴の鑑別疾患として突発性難聴、低音障害型感音難聴、メニエール病などが挙げられており、純音聴力検査などを使って区別することが示されています。[参照]
過去の健康診断で正常でも今回の難聴は否定できない
これまで健康診断の聴力検査で一度も異常がなかったとしても、今回新たに急性感音難聴を発症することはあります。むしろ、以前は問題がなく今回突然変化が出たという経過は、急性に起こった聴力変化を考える際の重要な情報になります。
健康診断の聴力検査は、一般に限られた周波数・音量を使ったスクリーニングです。耳鼻咽喉科で行う純音聴力検査のほうが、周波数ごとの詳しい聴力を確認できます。
そのため、過去の健診結果が正常だったことだけで「今回も耳には問題がない」とは判断できません。逆に過去の正常結果が分かっていれば、今回の変化が比較的新しいものであることを医師が判断する材料になります。
突発性難聴以外にも似た症状を起こす病気がある
耳閉感、耳鳴り、片耳の聴力低下という組み合わせは突発性難聴にみられますが、ほかの病気でも起こります。そのため突発性難聴は、似た病気を除外しながら診断することが重要とされています。
| 病気・状態 | 特徴の例 |
|---|---|
| 突発性難聴 | 突然の片耳の感音難聴。耳鳴り・耳閉感・めまいを伴うことがある |
| 急性低音障害型感音難聴 | 主に低音域の聴力低下。耳閉感を感じやすい |
| メニエール病 | 難聴や耳鳴りに加えて、めまいを反復することがある |
| 滲出性中耳炎・耳管の異常 | 耳の詰まりや聞こえにくさが出る |
| 音響外傷 | ライブなど大きな音を聞いた後に難聴・耳鳴り・耳閉感が出る |
例えば直前にライブや爆音のイヤホンなど非常に大きな音へさらされていた場合には、急性音響外傷も鑑別対象になります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、音響外傷で耳閉感、難聴、耳鳴りが起こると説明しています。[参照]
突発性難聴は「可能性が高いか」を症状だけで判定できない
耳閉感、耳鳴り、聴力低下がそろっていれば突発性難聴を疑う材料にはなります。しかし、本人が感じる症状だけから「突発性難聴である確率は○%」というように判断することはできません。
診断では、症状がいつから始まったか、突然だったか、聴力検査でどの周波数がどの程度低下しているか、耳の中に異常がないか、めまいがあるか、大きな音を聞いた直後ではないかなどを総合的に確認します。
必要に応じてMRI検査などによって、聴神経腫瘍や脳の病気など別の原因を除外する場合もあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、突発性難聴では他の急性感音難聴を起こす疾患との鑑別が重要としています。[参照]
早めの治療が重要とされる理由
突発性難聴が疑われる場合に特に重要なのが、発症から治療開始までの時間です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、発症早期に治療を開始したほうが聴力予後が良好であることが報告されているため、早期に耳鼻咽喉科を受診し検査・治療へつなげることが大切としています。[参照]
治療では病状などに応じて副腎皮質ステロイドなどが使用されることがあります。ただし、治療内容は聴力低下の程度、持病、年齢などによって異なります。
すでに医療機関を受診して薬を処方されている場合は、自己判断で中断したり量を変更したりせず、指示通り服用しながら再診予定を守ることが重要です。
症状が良くなっても再検査が重要
耳の圧迫感が軽くなったり、耳鳴りが小さくなったりすると「治ったのでは」と思うことがあります。しかし、本人の感覚が改善していても、特定の周波数の聴力が完全には戻っていない可能性があります。
反対に、聴力が改善するにつれて耳閉感や耳鳴りも軽くなるケースがあります。そのため経過を判断するうえでは、自覚症状だけでなく再度の聴力検査が重要です。
特に医師から数日後や1週間後などの再診を指示されている場合には、症状が改善していても受診するようにしましょう。
受診中は大きな音を避けて耳を休ませる
急性の聴力低下や耳鳴りがある間は、大音量のイヤホン、ライブ、クラブ、工事現場など強い音に長時間さらされることはできるだけ避けるほうが安心です。
イヤホンが絶対に禁止されるとは限りませんが、少なくとも大音量で長時間使用するのは避け、治療中の使用について担当医へ確認するとよいでしょう。
また過労や睡眠不足が続かないよう、可能な範囲で休息を取ることも大切です。ただし「安静にすれば薬を飲まなくても治る」という意味ではなく、医師から指示された治療を優先してください。
すぐに医療機関へ相談したほうがよい症状
突発性難聴の治療中でも、急にさらに聞こえにくくなった、強いめまいや嘔吐が出たなど、症状が変化した場合は予定の再診を待たず医療機関へ相談するとよいでしょう。
また、難聴と同時に呂律が回らない、顔や手足の感覚がおかしい、手足に力が入らない、飲み込みにくいなど耳以外の神経症状が現れた場合には、脳梗塞など耳以外の緊急疾患を除外する必要があります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、難聴やめまい以外の脳神経症状を伴う場合には他疾患を考える必要があるとしています。[参照]
こうした症状がある場合は、通常の経過観察ではなく速やかな医療機関への相談が必要です。
まとめ|耳閉感・耳鳴り・聴力低下は突発性難聴でもみられるが診断には検査が必要
片耳に水が入ったような圧迫感がある、静かな場所で耳鳴りがする、さらに聴力検査で一部の音が聞こえにくいという状態は、突発性難聴でもみられる症状です。そのため耳鼻咽喉科で突発性難聴の可能性を指摘されること自体は不自然ではありません。
一方で、同じ症状は急性低音障害型感音難聴やメニエール病などでも起こるため、症状だけで突発性難聴と確定することはできません。聴力検査の結果やその後の経過、必要に応じた追加検査をもとに医師が判断します。
突発性難聴を含む急性感音難聴では早期の診断・治療が重要とされています。すでに受診して薬を処方されている場合は指示通り治療を続け、耳の詰まりが改善しても再診や聴力検査を省略しないことが大切です。


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