健康診断で血圧が高いと指摘されても、たった1回の測定だけで高血圧と確定するわけではありません。血圧は運動、緊張、会話、睡眠不足、喫煙、カフェイン、測定姿勢などさまざまな条件によって変動するためです。
一方で、例えば上の血圧が138mmHg、下の血圧が102mmHgという結果では、上の数字だけを見るのではなく、100mmHgを超えている下の血圧にも注意する必要があります。測定前に動き回っていたなどの事情があったとしても、「その条件のせいだろう」と自己判断だけで終わらせず、安静時の血圧を改めて確認することが大切です。
この記事では、健康診断で血圧が高かったときの考え方、家庭で正確に測定するポイント、再検査や医療機関を受診する目安について解説します。
血圧の「上」と「下」は何を表している?
血圧には2つの数字があります。一般に「上」と呼ばれる収縮期血圧は心臓が収縮して血液を送り出したときの圧力、「下」と呼ばれる拡張期血圧は心臓が拡張しているときの圧力です。
高血圧を考える際には上の血圧だけを見るわけではありません。下の血圧が高い場合にも高血圧として評価されることがあります。そのため「上は140未満だから大丈夫」と下の数字を無視することはできません。
例えば診察室で138/102mmHgだった場合、138だけを見れば140mmHg未満ですが、拡張期血圧102mmHgは高い値です。上か下のどちらか一方だけが高い場合でも、確認が必要になることがあります。
健康診断の1回だけでは高血圧と確定しない
血圧には大きな変動があります。医療機関で緊張すると普段より高くなる「白衣高血圧」がある一方、診察室では正常でも家庭や職場では高くなる「仮面高血圧」もあります。
そのため、高血圧の診断では診察室で一度測った数字だけでなく、別の日の測定や家庭血圧などを利用して継続的に評価することが重要です。
健康診断で高値が出た場合も「1回高かったから病気」と考える必要はありませんが、逆に「たまたま高かっただけ」と決めつけるのも適切ではありません。再測定によって普段の血圧を確認することが重要になります。
動いた直後や息切れしている状態では血圧が変化することがある
階段を上ったり、速く歩いたり、検査会場を移動したりした直後には、身体活動の影響で血圧や脈拍が変化します。また、焦りや緊張など精神的な刺激でも血圧は上昇することがあります。
そのため血圧を測定するときは、椅子に座って一定時間安静にしてから測ることが基本です。測定直前に動き回って息切れしていたのであれば、その状況が測定値へ影響した可能性は考えられます。
ただし、影響があったかもしれないことと、138/102mmHgという結果を無視してよいことは別です。安静にした状態で再度測定し、それでも高い状態が続くかを確認するのが合理的です。
血圧は他人の数字ではなく自分の継続的な測定値で判断する
血圧が高いと言われると「ほかの人はどのくらいなのだろう」と気になるかもしれません。しかし、他人の血圧との比較だけでは受診が必要かどうかは判断できません。
年齢や持病、服薬状況などは人によって異なります。また、高血圧でも自覚症状がほとんどない人は珍しくありません。「知人は150でも病院へ行っていないから自分も大丈夫」といった比較は避けたほうがよいでしょう。
重要なのは、正しい条件で自分の血圧を繰り返し測り、その結果を医師に評価してもらうことです。
家庭血圧を測ると普段の状態を把握しやすい
健康診断で高血圧を指摘された場合には、家庭用血圧計を使って家庭血圧を記録すると診察時の有用な情報になります。家庭では比較的リラックスした状態で繰り返し測定できるためです。
家庭用としては一般に上腕へカフを巻くタイプの血圧計が利用されます。測定するときは椅子に座り、背中を支え、脚を組まず、腕を心臓と同じくらいの高さにして測ります。測定中の会話も避けます。
測定値は都合のよい数字だけを選ばず記録しておきます。日時、上の血圧、下の血圧、脈拍などを記録し、医療機関を受診するときに持参すると判断材料になります。
家庭血圧は朝と夜に測定すると分かりやすい
家庭血圧を確認する場合、日本高血圧学会では朝と晩の測定が推奨されています。朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食や服薬の前など一定の条件で測定し、晩は就寝前に測定します。
毎日なるべく同じ条件で測定することがポイントです。1回だけ正常だった、あるいは1回だけ高かったという結果ではなく、数日間の傾向を見ることで普段の状態を把握しやすくなります。
血圧計を購入する場合は、手首式などさまざまな製品がありますが、一般には上腕式が推奨されています。カフのサイズが腕に合っていることも正確な測定には重要です。
診察室血圧と家庭血圧では基準が異なる
血圧は測定場所によって基準が異なります。日本高血圧学会の一般向け情報では、診察室血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg以上の場合が高血圧の基準として示されています。[参照]
| 測定場所 | 高血圧の基準 |
|---|---|
| 診察室 | 140/90mmHg以上 |
| 家庭 | 135/85mmHg以上 |
ここでも重要なのは「上と下の両方が超えなければ問題ない」という意味ではないことです。どちらか一方が基準以上の場合も高血圧に該当します。
なお、健診結果の判定区分や治療目標値は、高血圧の診断基準とは必ずしも同じではありません。年齢や病気の有無などによって医師の判断も変わるため、数字だけで自己診断しないことが大切です。
下の血圧が100を超えていたら再検査を軽視しない
健康診断で拡張期血圧が100mmHgを超えていた場合、測定条件の影響が疑われたとしても、再測定や受診の指示には従ったほうがよいでしょう。再検査は「病気が確定した」という意味ではなく、本当に高い状態が続いているのか確認するためでもあります。
例えば自宅で朝晩測ってみたところ正常範囲が続くのであれば、その記録を医師へ見せることで白衣高血圧などを検討する材料になります。反対に自宅でも下の血圧が90~100mmHg以上になる状態が繰り返されるなら、健診会場だけの問題ではない可能性が高まります。
「動いた後だったから高かった」という仮説は、安静時の家庭血圧を測ることで確かめることができます。
高血圧は症状がなくても確認する価値がある
高血圧では、頭痛やめまいなど分かりやすい症状が必ず現れるわけではありません。むしろ自覚症状がほとんどないまま長期間続くケースがあります。
高い血圧が長期間続くと血管や心臓などへ負担がかかり、脳卒中、心臓病、腎臓病などのリスクと関係します。そのため症状の有無ではなく、測定値をもとに評価することが重要です。
健診は症状のない段階で異常を見つけることも目的の一つです。再検査や精密検査を勧められた場合には、体調が良くても一度確認しておくことに意味があります。
血圧が高いとすぐ薬を飲むことになる?
医療機関を受診したからといって、必ずその日から降圧薬が始まるわけではありません。まず家庭血圧や再測定の結果、年齢、生活習慣、心血管疾患のリスク、糖尿病や腎臓病などの有無を総合して治療方針が決められます。
状態によっては塩分摂取量の見直し、適正体重の維持、運動、節酒、禁煙などの生活習慣改善から始めることもあります。一方、血圧が高い状態やリスクが高い状態では薬物療法が必要になる場合があります。
「病院へ行ったら一生薬を飲まされる」と考えて受診を避けるより、まず現在の血圧が本当に高いのか確認することが大切です。
非常に高い血圧と強い症状がある場合は早めの医療相談を
家庭で測った血圧が一度高かっただけなら、慌てず安静にして正しい方法でもう一度測定します。ただし、極端に高い血圧が繰り返される場合には医療機関へ相談してください。
特に非常に高い血圧に加えて、突然の激しい頭痛、胸痛、強い息苦しさ、意識の異常、片側の手足の麻痺やしびれ、言葉が出にくい、見え方がおかしいなどの症状がある場合には、脳や心臓などの緊急疾患の可能性があります。この場合は通常の健診再検査を待つのではなく、救急受診を含め速やかな対応が必要です。
逆に症状がないから安全とも限りません。高値が繰り返される場合には、症状の有無だけで判断せず医師へ相談しましょう。
まとめ|138/102のように下の血圧が高い場合は安静時に再確認しよう
血圧は運動や緊張などによって変動するため、健康診断で一度高かっただけでは高血圧が確定するわけではありません。測定前に歩き回ったり息切れしたりしていたのであれば、その影響を受けた可能性もあります。
しかし、138/102mmHgのように下の血圧が100mmHgを超えている場合は、「上が140未満だから大丈夫」と考えず、安静時の血圧を改めて確認することが重要です。健診で再検査や精密検査を指示された場合には、その指示に従いましょう。
家庭では朝と晩に正しい姿勢で血圧を測り、数日間の結果を記録して医療機関へ持参すると、普段の血圧を判断する有用な材料になります。他人の血圧と比較するより、自分の血圧が安静時にも継続して高いのかを確認することが、高血圧と適切に向き合う第一歩です。


コメント