双極性障害の治療が始まり、激しい躁や抑うつの波が落ち着いてくると、「これでいいのか?」という新たな疑問が生まれることがあります。特に“低め安定”と呼ばれる状態にあるときに感じる、喜びや楽しさが遠のいたような感覚。それは、決してあなただけが抱くものではありません。この記事では、双極性障害とともに生きる過程でよく見られる“感情の鈍さ”や“喪失感”に向き合いながら、少しずつ自分らしさを取り戻していくためのヒントをお届けします。
“低め安定”とは何か?──落ち着いているけれど心が晴れない状態
双極性障害の治療において、「低め安定」は、大きな躁やうつの波が抑えられた状態を指します。見た目には日常生活をある程度こなせることも多く、医師から見れば“良好”とされるケースです。
しかし実際には、喜びや活力が乏しく、何をしても「嬉しい」と感じられないという“感情の平坦さ”が残ることもあります。これは薬の影響や、長期間の気分変動による脳のストレス反応の影響とも言われています。
「悲しみが抜けない」のは自然な反応でもある
診断を受けたことによるショックや、これまでの生活とのギャップから、「自分は変わってしまった」「これからの人生が不安だ」と感じることは非常に自然です。
特に朝は、脳の活動が低く、不安感や絶望感が出やすい時間帯です。この時間帯に気持ちが沈むのは、あなただけではなく、多くの患者さんが経験していることです。
「この感覚は異常ではない」と知るだけでも、少し気持ちが軽くなることがあります。
“喜びを感じられない”ことに向き合う方法
心が鈍く感じると、「このまま一生この状態なのでは」と不安になりますが、治療が進む中で少しずつ回復するケースが多くあります。
そのためにできることとして。
- 小さな刺激から“感覚”を思い出す(美味しいもの、好きな香り、音楽など)
- 無理に楽しもうとせず、「気づき」の記録をつけてみる
- 日記やアプリを使って「今日は不安が少し軽かった」などの変化に注目
「感情が戻らない自分」に対して焦らないことがとても大切です。“感情のリハビリ”も時間をかけて少しずつというスタンスでOKです。
この状態を“一生”維持するのがベストなのか?
答えはNOです。治療の目的は「躁やうつの再発を防ぐこと」ではなく、「自分らしい生活を取り戻すこと」にあります。
“低め安定”は、あくまで回復への途中経過。この状態にずっと留まる必要はありませんし、少しずつ生活の質を高めていくことは可能です。
例として、以下のような変化を経験した方もいます。
「1年経ってから、自分に合う薬に切り替わって気分が軽くなった」
「休職中にリワーク(職場復帰支援)に通い、自然と笑える瞬間が増えてきた」
つまり、今の状態が“完成形”ではなく、「ここからさらに整えていける」という希望を持つことが大切です。
実際の体験談に学ぶ──共感できる言葉の力
実際に双極性障害と診断され、同じように“感情が鈍くなった”という感覚を持った方の体験談では、以下のような声が聞かれます。
「治療が進んでも、気持ちが“無”になってしまったことが一番つらかった。だけど、ある日散歩中に見た夕焼けがきれいで涙が出て、それをきっかけに少しずつ感情が戻ってきた」
「このまま一生何も感じずに過ごすのかと思ったけど、医師と相談して薬を調整したら、ほんの少し心が軽くなった」
こうした実体験は、「今の状態も回復のプロセスの一部なんだ」と思える安心材料になることがあります。
まとめ:低め安定の今は“終わり”ではなく“通過点”
双極性障害と診断された後、「気分の波が減ったのに楽しくない」「これが一生続くのか」と感じるのは、ごく自然なことです。
しかし、“低め安定”はゴールではなく、回復に向かう道のりの途中です。時間と共に、自分に合う薬や生活の工夫が見つかり、“感情が戻る瞬間”が必ず訪れます。
焦らず、無理せず、自分の歩幅で。あなたらしい日常が少しずつ取り戻せるよう、今のあなたもまた、大切な一歩の中にいます。
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