教育・福祉現場で知っておきたい「愛着障害(Attachment Disorder)が見られる子どもの特徴」

発達障害

教育・福祉の現場で「この子、他の子と何か違うな」と感じる瞬間があるかもしれません。その違和感の背景に、実は〈愛着障害〉という発達・心理の課題が隠れていることがあります。本記事では、子どもの愛着障害が見られる特徴を整理するとともに、教育福祉関係者が「気付きやすいポイント」として活用できる視点を紹介します。

愛着障害とは何か:基礎知識

まずは、そもそも〈愛着障害〉という言葉が何を指すのかを整理しておきましょう。典型的には、幼少期に〈選択的な信頼できるケアギバーとの安定的な関係〉が築かれなかった結果、情緒・行動・人間関係に困難を伴う傾向が出るものを指します。([参照](https://www.attachmenttraumanetwork.org/what-are-attachment-disorders/))

例えば、〈反応性愛着障害(Reactive Attachment Disorder:RAD)〉や〈社会的関係過活動型愛着障害(Disinhibited Social Engagement Disorder:DSED)〉など、診断名が付くこともありますが、教育・福祉の現場では必ずしも医学的診断に至らない「愛着関係の不安定さ」も含めて捉えることが有用です。([参照](https://www.aacap.org/AACAP/Families_and_Youth/Facts_for_Families/FFF-Guide/Attachment-Disorders-085.aspx))

現場で「この子違うな」と感じる特徴的な行動パターン

以下は、実務者が観察で「この子、他の子と違うかもしれない」と感じやすい特徴的な傾向です。

・ケアギバー(先生・養育者)を頼らず、自らを守ろうとする行動をとる(例:困っているのに助けを求めない/独りで過ごそうとする)

・逆に、年齢・場面にそぐわないほど大人や他人に過度に近づく、馴れ馴れしい行動をとることがある(いずれも〈選択的な適応〉ではない))

・感情のコントロールが難しく、突然怒り・落ち込み・過剰な反応を示す。例えば、ちょっとした変更・距離が変わっただけで混乱することがあります。([参照](https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537155/))

実例:教育福祉現場で見られた2つのケース

ケース①:保育園で、3歳児クラスの子どもが転園後、先生が交代しただけで「もう帰る」「ママに会いたい」と号泣し、その後は動こうとせず他児との遊びにも参加せず。成熟度・年齢にそぐわない“固着”行動が続いた。

ケース②:小学校4年生の子どもが、授業中も頻繁に机を離れ先生に話しかけ続ける。「◯◯先生好き」「家でも先生を探してしまう」と言い、クラス友達との関係構築はうまくいっておらず、友達との距離感が年齢に対してアンバランスでした。

教育・福祉現場で意識すべき支援の視点

こうした子ども達に対して、「ただ困っているから叱る・距離を置く」という対応ではなく、次のような視点があるとより支援的です。

  • 一貫性と予測可能性のある関わり:担当者が安定している・日課が守られ変化が少ないことが、子どもの安心感を支えます。
  • 肯定的な関係構築機会の提供:遊び・対話・安心できる場面を通じて、「信頼できる大人との関係を感じる」経験を増やすこと。
  • 情緒調整サポート:感情が高ぶったときに落ち着くための“安全基地”(例:静かなコーナー・先生と1対1の時間)を設ける。

また、教育・福祉の観点からは、〈医療的診断を促すかどうか〉も含め、専門機関(児童精神科・児童相談所・発達支援センター)との連携を念頭におくことが重要です。

見逃さないための観察チェックリスト

日々の観察で使いやすいポイントを整理します。

観察項目 好ましい傾向 警戒すべき傾向
大人とのかかわり 安心して近づく/ちょっと離れて遊びに行く 離れたくない・または無反応・誰にでも過度に接近
友達との関係 一緒に遊ぶ・交代で話す・仲良く関わる 遊びに混ざれない・一方的に話し続ける・距離感がわからない
変化に対する反応 少し戸惑ったあと落ち着く 小さな変化で激しく動揺・行動停止・反抗

まとめ

教育・福祉現場では、「他の子とは何か違う」と感じる瞬間が、子どもの愛着関係の問題を知るきっかけになります。愛着障害がある子どもは、信頼できる大人との関係構築・感情調整・社会的関わりに課題を抱えており、外からは“ただ落ち着きがない”“友達とうまくいかない”と見えることがあります。しかし、こうした背景を理解し、一貫性・安心できる関わり・観察を意識することで、早期の支援を行いやすくなります。もし「この子、いつも何か違うな」と感じるときには、専門機関との連携も視野に入れておきましょう。

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